櫻坂46、新センター的野美青が分けるグループの命運 『Make or Break』フォーメーションを分析

 中でも話題になっていたのは、前作でBACKSメンバーだった中嶋の選抜復帰だ。『BACKS LIVE!!』を通じて着実にパフォーマンスと存在感を磨いた彼女の再びの選抜は、努力が評価へとつながるという櫻坂46の現在のシステムを象徴していると思う。

 7月開催の『BACKS LIVE!!』もまた、今回のシングルにおけるフォーメーションと密接に結びついている。表題曲の選抜外メンバーが主役となるこの公演は、櫻坂46にとってただの選抜とアンダーという二項で括れるものではない。むしろ「もう一つの選抜」と言っても過言ではないほど、ある意味でグループ全体の人材育成を担う場として機能している。BACKSとは、敗者復活戦ではなく、ステージで価値を証明する場である。評価が可視化され、個人の成長が明確に表れる場として、今や櫻坂46のライブコンテンツの中でも欠かせない存在となっている。

 今回の『Make or Break』において選抜外のメンバーにとって、『BACKS LIVE!!』はチャンスの場でもある。そしてその姿を見たファンは、次の表題曲選抜に選ばれるべきメンバーを肌で感じることになる。こうした循環構造が、グループの持続的な進化を支えているのだ。

 すでに一期生は全員卒業し、四期生の本格合流を控える現在、グループは“過渡期”という言葉では言いくるめられない地点に差し掛かっている。このタイミングで、的野というまだ見ぬポテンシャルを秘めたメンバーをセンターに据えたこと。三期生を軸に据えつつも、山﨑、森田、藤吉、松田といったグループを支えてきたメンバーが各列にしっかりと配置されていること。さらには『BACKS LIVE!!』の開催を通じて、BACKSメンバーの躍進も設計されていること。これらすべてが示しているのは、グループが変わることを臆せずに自らその変化を設計し、推進していこうとする強い意思である。

 それはかつての欅坂46時代、あるいは初期櫻坂46が直面していた偶発的な変化とは異なるものだ。今の櫻坂46は、変化を意志の力で進めている。“誰がセンターに立っても勝負できる”という土壌を築きながら、的野をセンターに据えるという意味のある一手を打った今、『Make or Break』は、グループが主体的に未来を切り開こうとする姿勢が刻まれているように思う。

 2025年の櫻坂46は、J-POPシーンにおいて独自の美学と緊張感を持つアイドルグループとして再び加速を始めた。『Make or Break』とは、その変わり続ける現在地を刻む、決意の作品ともなりうるだろう。

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