『ブレイクマイケース』1周年記念楽曲が彩った各部署の“らしさ” コンテンツが誇る音楽表現の魅力に迫る

2024年5月9日にcolyからリリースされたスマートフォンアプリ『ブレイクマイケース』(以下、『ブレマイ』)が、1周年を迎えた。1周年を記念してゲーム内に新たな楽曲が実装され、プレイヤーにとっての“Aporiaと過ごした1年”を音楽を通して感じられる内容となっている。そんな『ブレマイ』が誇る音楽表現の魅力について、プロデューサーに話を聞いた。(えびさわなち)
『ブレマイ』サウンドは“現実世界の都会”をリアルに演出する存在
街中にあるカフェ・Aporiaにはもうひとつの顔がある--実はカフェ営業を終えた後、限られた顧客だけに提供される特別なサービスがあるのだ。それは、“マルチ代行サービス”。自分の代わり、他人の代わり、それ以外の代わり。生きた人間に代わりが務まることはどんなことでも請け負うAporiaの従業員たちは、あらゆるものが飽和した街の“足りないもの”に応えている。偶然の出会いによって、そのAporiaオーナー代理をすることになった主人公(ユーザー)は、個性豊かなメンバーの中でさまざまな事象に巻き込まれていく。
『ブレマイ』は“グルーヴマッチパズル”と銘打ったゲームであるだけに、これまでに数多くの楽曲が実装されてきた。“音楽面での一番の変化”や“振り返って特に印象的だった音楽トピック”について、プロデューサーはこう語る。
「1年を通して印象的だったのは、音楽を主軸にしたリアルイベント『BMC Groovin' Night』(2025年3月2日開催/SEL OCTAGON TOKYO)を開催できたことですね。“六本木のクラブでDJイベント”というユニーク且つインパクトのある企画で、多くの方に『ブレマイ』の音楽を実際に体感していただけた貴重な一夜でした。もともと『インスト音楽にここまで力を入れている女性向けゲームはほかにない!』と言っていただける状況を目指して制作を続けてきたので、こうした“『ブレマイ』にしかできない音楽体験”をリアルの場で形にできたことは、大きな自信になりました」
そんな『ブレマイ』に、1周年記念として6曲の新規BGMが実装された。これまで本部、交際部、管理部、強行部、交渉部、特務部に所属する21人のメンバーたちと過ごしてきたユーザーは、それぞれの部署の空気感やパーソナリティを、シナリオと同時に“音楽”からも感じてきたはず。それぞれの部門のために書き下ろされた新規楽曲は、「1周年記念キャラクタービジュアルをご覧いただいてもわかるとおり、Aporiaスタッフ“個人”ではなく“部署単位”での集結感を重視した全体設計になっています。音楽面でも“部署単位”での集結感という狙いを反映し、1周年限定プレイリストには、本部はディスコ、交際部はヒップホップ、管理部はジャズ……といった、お馴染みの部署別サウンドデザインを全力で反映したBGMを揃えました。めちゃめちゃドープなプレイリストになっているかと思います」と話すように、それぞれの部署の特色が色濃く表れているのだ。
ここからは、それぞれの新規BGMのこだわりついて。まずは皇坂逢、城瀬由鶴、須王芦佳が属する本部。経営全般を担う本部を表現する1曲は、軽やかなピアノの音と跳ねるダンスビートが軽快に響く「New Phase」だ。この楽曲はどのように作られていったのだろうか。

「本部のディスコハウス風サウンドを意識した「New Phase」は”夜・都会”のイメージをストレートに表現したもので、まさに『ブレマイ』という作品の世界観を象徴する雰囲気になっています。今回Dirty Androidsさんには、「Friday Holic」や「Flash of Night」といった『ブレマイ』の“名刺代わり”とも言える既存曲の雰囲気をさらに発展/展開させるようなサウンドを再構築していただきました。実は「Flash of Night」のフレーズがさりげなく織り込まれたりも……。まさに“『ブレマイ』ど真ん中”を貫いた1曲に仕上がりました」
【イベントミュージック紹介】
💿New Phase
この街に馴染んだ音が、次の景色を連れてくる。🖊コンポーザーコメント
ブレマイ1周年おめでとうございます!今までの楽曲のDNAを受け継ぎ、新たな段階へ進んでいくような曲をイメージしました!(Dirty Androids 氏)#ブレマイ1周年 pic.twitter.com/NXt63P3M8J— ブレイクマイケース公式【ブレマイ】 (@breakmycase) May 4, 2025
続いては綾戸恋、宇京真央、樋宮明星、環野揺を擁する交際部。恋人、友人、家族などの設定に合わせたキャラクター代行サービスを担う彼らの新たなBGMは、しっとりとしたシンセサイザーの旋律と柔らかなコーラスが印象的な「sim 4 u」。この新たなサウンドメイクで意識したものとは。

「「sim 4 u」は、“あなたのために誰かを演じる”交際部のインストヒップホップ総集編です。この曲はCaggaさんとの共作で、僕は全体的な編集とキーボード演奏を担当しました。ボーカル系サンプルのエディットが光る、まさに交際部らしいリフとビートが特徴です。中間パートでは、交際部の4人それぞれの個人BGMをリミックスしたメドレーも展開されます。「多数の人物像を取り揃えております。今日はどんな人物を演じますか?」 ──そんな謳い文句が聞こえてくるような1曲に仕上がったと思います」
【イベントミュージック紹介】
💿sim 4 u
どんなSimulationをお求めですか?🖊コンポーザーコメント
4人の個性が交わる交際部インストヒップホップ総集編、お楽しみください!(プロデューサー)#ブレマイ1周年 pic.twitter.com/Odeqpwi3uv— ブレイクマイケース公式【ブレマイ】 (@breakmycase) May 5, 2025
管理部に所属しているメンバーは槻本大河、壱川春日、隠岐谷誓の3人。顧客情報や依頼関連のデータやサイト管理、SNSアカウントの運営や経理などの“管理”を担う彼らの新規楽曲は、歌うように跳ねるウッドベースの音と軽やかに響くピアノ、軽妙にスイングするドラムのビートで綴る「Modal Drift」。この曲が見せる管理部の姿とは。

「管理部のトラックは、本格的なジャズシーンの空気を感じられるようなサウンドを一貫して目指してきました。ジャズという存在は音楽ジャンルというより、もはや“音楽界の一大言語”だと思っていて、個人的に「どれだけジャズのアイデアを取り入れることができているか」が、ゲームが音楽とどれだけ真剣に向き合っているかを示す1つの指標になるとすら思っています。管理部の楽曲も、あくまで“ジャズ風”ではなく、しっかりとジャズとして成立するものを目指しました。「Modal Drift」は、3人の絆を思わせるトリオ編成で、本格的なモードジャズに挑戦した楽曲です(『ブレマイ』最速の260BPM)。こうした“普通のモダンジャズ”のような楽曲をゲーム音楽として実現できたことを、個人的にも嬉しく思っています」
【イベントミュージック紹介】※再投稿
💿Modal Drift
三位一体のモダンジャズ・セッション。🖊コンポーザーコメント
個性の融合と絆。管理部の1周年へ向け、Jazzを掘り下げました。縦横無尽に拡がる、Pianoトリオによるインタープレイをお楽しみください!(大平勇 氏)#ブレマイ1周年 pic.twitter.com/X2UHVRj8R9— ブレイクマイケース公式【ブレマイ】 (@breakmycase) May 6, 2025
節見静をトップに、御門尊、新開戦、相沢篠信の4人で構成される強行部。その新たなBGMは「Ignite」だ。ここまでの他部署の軽やかなBGM感を一気に吹き飛ばすような、ラウドに轟くアッパーチューン。応戦や奪還、捕獲、護衛といった荒事を担う強行部らしい緊迫感と疾走感が、彼らとともに臨んだミッションを思い出させる。

「まるで戦車のようにドドドドと突き進む構成、緊迫感と疾走感あふれるエレクトロサウンドが強行部の真骨頂です。「Ignite」はおおむね8小節ごとのブロックで進行する構成となっていて、時折挟まれる転調が次々と場面を切り替える様子は、まさに機動的な判断力と行動力に長けている強行部の“強か”なイメージを映し出せたかと思います」
【イベントミュージック紹介】
💿Ignite
火花弾けるエレクトロサウンドの強行突破!🖊コンポーザーコメント
1周年おめでとうございます!強行部が併せ持つ強かな熱さとクレバーさをイメージしました。炎のように変化していく展開をお楽しみください!(ensy 氏)#ブレマイ1周年 pic.twitter.com/JvwJC8itmu— ブレイクマイケース公式【ブレマイ】 (@breakmycase) May 7, 2025
在間樹帆、祠堂恭耶、立科吏来の3人による交渉部は、落ち着きのある大人の男性たちで構成される部ながら、どこかスリリングなエレクトロサウンドが鼓動を逸らせる「Lisq」を新規に実装。彼らの理知的な性格や、一筋縄ではいかない事象に対処する様子やそのイメージを感じることのできる1曲だ。

「同じエレクトロ系ジャンルでも、角張った印象の強行部サウンドに対して、柔軟な知性で人の心を操舵するかのような“流線形”を感じるのが交渉部サウンドです。「Lisq」は後半パートの矩形波のメロディがすごくユニークで、予測不能なメロディラインとリズムのアクセントは聴き手の“脳内”に直接干渉する感覚すら受けます。Feryquitousさんのエディット力はさすがの一言です」
【イベントミュージック紹介】
💿Lisq
瞬間を読み解き、深層に触れるアート・コア。🖊コンポーザーコメント
トリッキーなフレーズと翻弄されるような拍子でリズムを手元を狂わされるような楽曲に仕上げました。お楽しみください(Feryquitous 氏)#ブレマイ1周年 pic.twitter.com/qenNvxJ7Xy— ブレイクマイケース公式【ブレマイ】 (@breakmycase) May 8, 2025
最後は特務部。恩田灯世、新名有、神家、麻波麗の4人で構成される部署だ。荒事を請け負う強行部よりもさらに危険度、難易度の増した依頼に対応すべく動く彼らのための新たなBGMのタイトルは「REDLINE」。その冠から危険度の高さの伝わる1曲は、重厚なギターサウンドでエモーショナルに響くロックナンバー。

「“ロック”とひと口に言っても色々ある中で、YiUさんのサウンドがなければ特務部らしいロックサウンドは成立しません。ポストロックやプログレッシブロックといったジャンルを基調に、ひとさじの退廃感とエモーショナルなメロディラインを加えたのが特務部ロックの真骨頂です。今回の「REDLINE」は特にプログレ色が強く、後半の複合拍子ゾーンはパズルステージのシークバー設計にも工夫を施しました。ぜひこの楽曲で遊んでみてください」
【イベントミュージック紹介】
💿REDLINE
見えない線を越え、崩れる拍のスパイラルへ!🖊コンポーザーコメント
1周年おめでとうございます!!🎉 一つの節目として、新たなステージに踏み込んでいくチャレンジングな楽曲に仕上げました。(YiU 氏)#ブレマイ1周年 pic.twitter.com/fAIWGtnGQo— ブレイクマイケース公式【ブレマイ】 (@breakmycase) May 9, 2025
今回の6曲に携わった作曲家陣は、これまでも『ブレマイ』サウンドを支えてきた気鋭のクリエイターたち。新規楽曲はそれぞれの部署の“核心”に触れるようなサウンドを目指して制作したとのことで、部署イメージを最も的確に表現できる作家の方々にお願いしたそうだ。改めて、それぞれの作家にオファーした理由や彼らの得意領域についても迫っていく。
「本部の楽曲を担当いただいたDirty Androidsさんは、都会的で洗練されたディスコやエレクトロ系のサウンドでブレマイ音楽の中核を担ってきた存在ですし、Caggaさんは、かわいさとおしゃれさのバランスが絶妙なインストヒップホップを得意とされていて、交際部という存在を軽やかかつスタイリッシュに落とし込んでくださる唯一の作曲家です。管理部のトラックを手掛けたIsamu Ohiraさんは、ジャズやフュージョンの分野に強みがあり、今回も“なんちゃってジャズ”ではない、本格的なジャズとして成立する1曲を作り上げてくださいました。
強行部のensyさんは、緻密かつパワフルなエレクトロサウンドで定評のある方で、びりびりと高電圧のような緊張感と、突き抜けるような疾走感を強行部らしく表現していただいています。Feryquitousさんは、“アートコア”と呼ばれる幻想的な電子音楽に秀でた作曲家で、今回も繊細な音づかいの中に、どこかミステリアスな空気を漂わせた“交渉部コンピューターミュージック”に仕上げてくださいました。特務部のYiUさんは、ポストロックやプログレッシブロックを基調に、わずかに退廃感のあるエモーショナルな音づかいが特徴的で、特務部の“無言の熱”のような雰囲気を的確に表現してくださいました」


















