西野カナのストイックさに心震えたエンターテインメントショー 最新ツアー東京公演を観て

西野カナ、最新ツアー東京公演レポート

 4月5日の大阪・大阪城ホール公演を皮切りに、計6カ所12公演を巡る全国アリーナツアー『Fall in Love With You Again Tour 2025』を行なっている西野カナ。活動再開後の初ライブとなった昨年11月の横浜アリーナ公演から、わずか約半年というタイミングでスタートしたこのツアーのチケットは、一般発売が開始されるや否や即完売。今回は東京公演の2日目となる5月11日、国立代々木競技場 第一体育館の模様の一部をレポートする。

 「EYES ON YOU」は昨年9月にリリースされたEP『Love Again』のオープニングを飾る、まさに復帰後の新たな西野カナを象徴するような曲でもある。このツアーでは2019年の活動休止から久しぶりに訪れる都市も多く、長い間、彼女のライブを求めてきたファンたちにとって新鮮な感動をもたらした。

 昨年の横浜アリーナ公演の幕が開けた瞬間は独特な緊張感に包まれていたが、この日はツアーも真ん中あたりとあってか、序盤から会場一体となって温かなムードを作り上げていた。それは西野カナとファンによる相思相愛のパワーを感じさせるものだった。最初の挨拶では「代々木2日目のみんな元気ですかー!今日はお天気にも恵まれてライブ日和。いろんな曲をみんなに楽しんでもらえたらと思います」とフレンドリーに呼びかけた。

 西野カナのライブはショー的な要素やエンタメ性が高く、まるでイリュージョンのような早着替えなどでも楽しませてくれるが、今回のツアーでは背景の大きなビジョンを効果的に使ったシンプルでわかりやすい演出が目立った。それによって1曲1曲の多彩な魅力を引き出しながら、ライブの臨場感や観客との距離の近さをより感じさせるものになっていたと思う。

 例えば、会場からの軽やかな手拍子に合わせて切ない心情を丁寧に歌い上げる「Darling」では、舞台演出によるノスタルジックなムードとパーカッシブでカントリー調のバンドサウンドの全てが一体となって楽曲世界を色濃く伝えていた。さらに「イントゥ・ミー」でのキュートなワンシーンは、すごく新鮮だった。他にも、演出なども見どころで圧巻のエンターテイナーぶりを発揮。しかし、いつも通りMCになると一転、「みんなよう見えるわ、ありがとー!」と親しみやすい笑顔を見せ、「“うさみみ”して!」といった要求にも愛らしい姿で応えていた。

西野カナ『Fall in Love With You Again Tour 2025』ライブ写真

 エモーショナルなライブ感が光ったのは「会いたくて 会いたくて」だった。曲が始まると、会場からは嬉しい驚きが漏れたような、どよめきが起こった。黒いネクタイで引き締めたモノトーンの衣装に、クラシカルなムードの舞台演出で披露されたこの曲は、西野カナの歌声の高揚感はそのままに、どこか上品で大人びた印象も纏いながら披露された。曲の終盤、心情の盛り上がりを示すようにオレンジ色のライトでステージとフリフラが染まったのも忘れられない光景に。

 先述した通り復帰後のライブからわずか約半年での開幕となったツアーだが、西野カナは歌もパフォーマンスもさらなるブラッシュアップを経て臨んでいることがステージから伝わってきた。周りの期待や、自分が想い描く理想に、自分自身が追いついていくことは生半可なことではない。キャリアを重ねてきた者ならばなおさらだ。でもそれをやってのけるストイックさの賜物が、今の西野カナのアーティストとしてのパワーそのものなんだと思う。だからこそ彼女の歌は今も、今の輝きを持って届けられている。

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