「PPPP」などボカロヒット連発中の韓国出身アーティスト TAK ニューノーマルな“可愛いダンスポップ”でJ-POPフィールドへ

韓国出身ボカロP・TAK、J-POPフィールドへ

 韓国の2人組音楽ユニット・ダレハルのデビュー曲「염라 (Karma)」が、後に歌い手の夏代孝明によって日本語訳カバーされ、ネットミュージックシーンで火がついたのは、今から約5年前のことだ。さらに、タイムリーなトピックが舞い込んできたのが2025年。日韓合同アイドルグループ・IZ*ONEの元メンバーで、現在はソロで活動するYENAが、オリジナル曲「STAR! (feat. Hatsune Miku)」にて初音ミクをフィーチャー。K-POPとボカロのポップアイコンによるコラボレーションは、非常に大きな話題を呼んだ。日韓の境界を越えたムーブメントが広く加速する中で、2024年8月23日に「mochimochi」でボカロPデビューした韓国出身のTAKによるミラクルの連打に触れないわけにはいかないだろう。

[MV] TAK - ‘mochimochi‘ feat. 初音ミク

 大前提として、J-POPとK-POPはハイブリッドな志向性の点で近しい音楽性を持っている。ニコニコ動画発のボカロ曲を印象付けているのは、メインストリームでは一般的ではない前衛的なメロディと歌詞だ。特に1曲の中でも複数のリズムパターンを用いるダイナミックな構成や、世界各国の楽器を取り込むアプローチは、多彩なジャンルを広く受容するK-POPの感覚と、両者の洗練が進んだ結果、自然に歩み寄ったようにも思える。

 J-POPをはじめ、ゲームやアニメーションの楽曲から影響を受け、音楽活動を始めたTAK。ボカロPとしてはルーキーでありながら、その実力は折り紙付きだ。2009年にDJMAX Trilogyリミックスイベントで優勝を飾り、ゲーム音楽プロデューサーとしてBMS、DJMAX、CHUNITHM、オンゲキシリーズなどへ数々の楽曲を提供。兵役を終えた2015年以降は、K-POPのメインストリームにも参入し、TWICE、SEVENTEEN、Stray Kids、NCT DREAM、NCT 127などのグループの楽曲制作にも携わっている。DJMAX RESPECT Vへの提供曲「Tic! Tac! Toe!」で再び音楽ゲームシーンに復帰し、現在は、作曲活動のフィールドをVTuberや歌い手にも広げ、フィーチャリングを軸とした柔軟なプロジェクト「DORIDORI」を通じて、さまざまなアーティストとのコラボレーションを続けている。

[MV] TAK - ‘LEMON MELON COOKIE’ feat. 初音ミク

 ここ数年で、初音ミクをはじめとする音声合成ソフトのキャラクターを描いたボカロ曲がランキング上位を占め、英語圏のボカロPによる英詞のボカロ曲も注目されるようになった。そんななかで、TAKはどちらの流れにも当てはまりつつ、日本語を99%扱うアジア圏のボカロPとして頭角を現してきた。1月15日に投稿された「LEMON MELON COOKIE」がスマッシュヒットし、最新曲「PPPP」は、日本、韓国、香港でもバイラルヒット。約2カ月でYouTubeの再生回数は2,000万を超えた。

 とりわけ、TAKがボカロシーンでも頭一つ抜けているのは、とびきり可愛い“音声合成ソフトのアイドル”を誕生させてしまうことにある。メインストリームで韓国のアイドル/ダンスボーカルグループの声に向き合ってきたプロデューサーとしての現場経験が、音声合成ソフトの調声に活きているのだろうか。彼のボカロ曲に息づく日本人には再現が難しいK-POP特有の語尾のイントネーションの響きが、逆に“心地よいズレ”となり、絶妙に機能していると感じる。例えば、「PPPP」の語尾の抜け感や〈サボる〉のユニークな抑揚。そこに、MVで描かれた可愛いモチーフが絡み合い、キャラクターとしてのキュートさが異常なまでに開花する好循環が生まれている。ボカロの魅力を想定外の角度から掘り起こすTAKのカルチャーミックスは、次々とトッピングが積み重なり、どこから眺めても魅力がこぼれ落ちる360度のスイーツタワーのようだ。

[MV] TAK - ‘PPPP’ feat. 初音ミク、重音テト

 12月17日には、音楽プロジェクト・MAISONdesでブレイクしたシンガーソングライター・asmiをフィーチャリングした「逆さ月(Reverse Moon)」がリリースされた。韓国最大規模のJ-POPフェスティバル『WONDERLIVET 2025』でasmiが、TAKのプロデュースした未発表曲「チョコっと好きよ」を初披露し、二人のコラボへの期待感が高まった矢先だった。「逆さ月(Reverse Moon)」は、ポエティックな1曲である。〈赤い月〉〈白夜〉〈逆さ月〉。つまりは、終わらない夜と救いを求める夜を思わせるメタファーが星のごとく散りばめられ、どちらとも付かない曖昧さを、asmiの歌声がふわりと奏でる。泳ぐシンセ、深く沈むビート、効果音にドライブ感のある急展開がたまらない。K-POP特有の抜けの良いボーカルが際立つヴァースと、J-POP特有の情緒を響かせるアレンジが効いた和テイストのコーラスのブレンドは、両者の良さが最大値で交錯する、まさに、未体験の質感だ。J-POPとK-POPの甘みやスパイスをシームレスに掻き混ぜるスタイルで、ニューノーマルな“可愛いダンスポップ”の夜明けがすぐそこまで来ている。

[MV] TAK - ‘逆さ月 (Reverse Moon)’ feat. asmi

■リリース情報
配信日:2025年12月17日(水) 0:00
アーティスト:TAK
タイトル:逆さ月(Reverse Moon)
視聴リンク:https://orcd.co/tak_reversemoon

■関連リンク
YouTube:https://www.youtube.com/c/TAKTAKMUSIC
X(旧Twitter):https://x.com/TAK_DRDR
Instagram:https://www.instagram.com/tak_drdr
TikTok:https://www.tiktok.com/@tak_drdr

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