宇多田ヒカル、Mrs. GREEN APPLE、iri、STUTS、GENERATIONS、超特急……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は宇多田ヒカル「Mine or Yours」、Mrs. GREEN APPLE「天国」、iri「harunone」、STUTS「99 Steps feat. Kohjiya, Hana Hope」、GENERATIONS「MY GENERATION」、超特急「キャラメルハート」の6作品をピックアップした。(編集部)

宇多田ヒカル「Mine or Yours」

宇多田ヒカル「Mine or Yours」

 「綾鷹」CMソングとなる2025年最初の新曲。近年の宇多田ヒカル楽曲には、普遍的な日本語ポップスと進化するロンドンのエレクトロニカやジャズシーンをいかにスムーズに繋いでいくか、というテーマ性を感じていたが、この曲は久々にオーソドックスなR&B。ゆったりしたテンポの中で横揺れのグルーヴが続く、穏やかな休日の午後によく似合う仕上がりだ。また、歌詞は一応ラブソングの範疇ではあるが、パートナーとどう生きていくかを自省する内容になっていて、自分のありよう、そしてこの国の夫婦別姓のありようにも言及していく。タイアップのキーワード、自分の話、令和における時代性。すべてをさらっとまとめ上げる筆致はさすが。(石井)

Mrs. GREEN APPLE「天国」

Mrs. GREEN APPLE「天国」

 曲が進むにつれて緊張感が高まり、ダークかつシリアスな音像へと結びついていく構成。そして、死生観、虚無や諦念といったテーマを滲ませる歌詞。大森元貴(Vo/Gt)が菊池風磨(timelesz)とのW主演を務めた映画『#真相をお話しします』の主題歌として書き下ろされた「天国」は間違いなく、彼らのパブリックイメージを広げる楽曲と言えるだろう。楽曲の軸になっているのは深くて重い手触りのメロディと、美しくも危ういストリングスの音色。その根底にあるのはかつて愛した〈君〉に対する思いなのだが、そこに込められた愛憎はあまりにも激しく、強い。いきなりプツンと終わってしまうエンディングを含め、聴き返すたびに心にズシンとしたものが残る楽曲だ。(森)

iri「harunone」

iri「harunone」

 新作EP『Seek』からの先行配信曲「haruone」は、プロデュース、作曲に君島大空、KID FRESINOなどのライブや制作に関わるギタリストの西田修大が参加したミディアムチューン。ドラムに石若駿をフィーチャーし、現代的なジャズ〜R&Bにアプローチしたナンバーに仕上がっている。丸みと浮遊感のある音像、緻密なリズムのアレンジが一つになったサウンドの中で広がるのは、生楽器の音と溶け合うような心地よい響きをたたえたボーカル。また〈きみは何も悪くない/ただただに誠実で/優しすぎる〉から始まる後半のリリックは、叙情性と凛とした姿勢が同時に感じられて、iriの新たな作風へと結びついている。幅広いクリエイターとタッグを組んだEPにもぜひ期待してほしい。(森)

関連記事