SymaG(島爺)×ナナホシ管弦楽団「カロンズベカラズの音楽は“罠”」 ユニットだからこそ挑戦できる音楽表現

「カロンズベカラズではかえって自由に挑戦できている」(ナナホシ管弦楽団)

ーーライブのMCでも、「失敗も成功も相対的なもので、大事にしたいのは挑戦すること」という趣旨の言葉がありましたが、「もう帰りましょう」はまさに、挑戦したこと自体を讃えて、優しく迎えてくれる曲ですね。そして、ツアータイトルにもなった「パンドラ」。「パンドラの箱」の逸話にはさまざまな解釈がありますが、リリックビデオにも表れているように、日常の愛おしさも感じられる、希望のある楽曲になっています。
ナナホシ管弦楽団:「パンドラ」という字面だけ見たら、重苦しい楽曲を想像すると思うんですよね。僕もタイトルが決まったときはそういう路線で考えていたんですが、逆の方が楽しいんじゃないかと。収録曲を考えたときに、前半が非日常的なセクションで、「もう帰りましょう」をブリッジに「パンドラ」で日常に戻ってくるというイメージにしました。
ーー「パンドラ」というタイトルでこの曲が来るのか、という感じで、まんまとやられました。
SymaG:僕も激しい曲が来ると思ってましたからね。
ナナホシ管弦楽団:「パンドラの箱」とよく並べて語られる「玉手箱」というモチーフが浮かんだのが大きかったですね。開けて年をとるのだから、その瞬間にこれまで起こったことを走馬灯のように振り返るだろうと。それなら重たいイメージより、軽快なものにしようと。
SymaG:シンプルにいい曲やなと思ったし、ライブでも終盤にやる曲になるというイメージがすぐに湧いたので、それに見合った歌い方をしたいなと。光が差すような、それでいてきちんとピリオドを打つようなイメージで歌っています。
ナナホシ管弦楽団:「いたみわけ」と同じように、強すぎてもダメだし、弱すぎてもダメな、歌うのが難しい曲だと思います。強すぎると〈希望と呼べ〉という言葉が暴力になってしまうというか。
ーー意味を押し付けるようになっても、サラッと流すような形になっても違いますね。
SymaG:そうそう、芯のある優しさが必要やなって。
ナナホシ管弦楽団:人生って、いろんな箱があるじゃないですか。へその緒を箱に納めるところから始まって、結婚するときにはリングの箱を開けるし、最後には棺桶という箱を開けることになる。そういう道のりを最期に振り返ったときに笑えたらいいな、という意味で、残ったものを希望と呼びたかったんです。「希望と呼べ(願望)」という感じで(笑)、歌も無理やり前を向かせるようなニュアンスになっていないのがいいなと思います。
ーーそう考えると、あらためてリリックビデオを手がけたキュピ山さんのアートワークもピッタリですね。
ナナホシ管弦楽団:本当にそうで、「箱」というモチーフから「洗濯機」→「洗濯物」を発想するのは天才やなって。
ーーこれから『UNVOXED』を初めて聴くリスナーには、どんなことを伝えたいですか。
SymaG:とりあえず最後まで聴いてみてください、ということはお伝えしたいですね。1曲目だけ聴いて、「あ、趣味じゃないからええわ」とはならないでいただきたい、というか(笑)。
ナナホシ管弦楽団:やっぱり単曲で聴くことが多い時代にあった今っぽい作り方をしていないので。前段の曲があって、なぜ「パンドラ」という曲に帰結しているのか、という全体像を楽しんでいただけたらうれしいです。
ーーそれにしても、尖りに尖ったボーカロイド楽曲を途方もない数、歌いこなしてきたSymaGさんと、複数人説が出るほどバリエーションのある楽曲を送り出してきたナナホシさんによるカロンズベカラズは、できることの振り幅が極めて大きいユニットだと思います。だからこそファンとしては、「何でもできる二人が選んだ表現」に注目せざるを得ないというか。
SymaG:僕はそもそも、ナナホシ先生に好きなように曲を書いてほしいと思ってユニットを組んだところがあるので。僕が歌う時点で、かなり制限はあると思いますが(笑)。
ーーただ、ナナホシさんのヒット曲でいうと、「島爺」として「シル・ヴ・プレジデント」まで歌いこなしていますし、カロンズベカラズの方向性とは全く違う女児向けアニメのOP曲だって違和感なくできるんじゃないかと思うくらいで。
SymaG:いやいや、ボーカロイドに比べたら何でも歌えるなんて。ただ、そういう曲もできなくはない……か(笑)。
ナナホシ管弦楽団:僕はソロだと再現性など含めてこだわりすぎてしまうので、カロンズベカラズではかえって自由に挑戦できていると思いますね。
ーーお互いに一部の責任を分け合っているからこそ、自由な表現ができる。
SymaG:なすりつけあってますね(笑)。
ーーそのなかで、いま二人が考える「カロンズベカラズの音楽」を言語化すると、どんなものになりますか。
ナナホシ管弦楽団:僕は地下の方に潜っていく、という感覚がありますね。もちろん、タイアップ曲はオープンな方向に持っていこう、キャッチーにしようと考えますけどーー。
SymaG:外に向かうというより、自分の中を掘っていくというか。
ナナホシ管弦楽団:ニッチというと語弊があるけれど、「この感覚を持っているのは自分だけじゃないはず」と思っている人に向けて、曲を届けていくという。

ーー確かにカロンズベカラズの作品には、全ての人の痒いところに手が届くものというより、「私はそこが痒かった!」というピンポイントな欲求に応えてくれるような感覚がありますね。
ナナホシ管弦楽団:そのなかで、今回はアンケートに応えるという開かれた意識があったので、ちょっと地上に出て息を吸った感じもあるかもしれないですね。どの曲も誰かには刺さると思いますし、そういう意味では“リスナーを我々の感覚に引きずり込むための罠”が散りばめられたEPです(笑)。
SymaG:うん、カロンズベカラズの音楽は「罠」です(笑)。
ーーさて、9月14日、15日には初のレーベルイベント『ハレブタイ2025』開催も決定しました。お二人は「島爺」「ナナホシ管弦楽団」、そして「カロンズベカラズ」としてフル回転ですが、意気込みはいかがですか。
ナナホシ管弦楽団:初日にそれぞれソロで出て、その上で2日目にカロンズベカラズとして出るので、その流れを踏まえた新曲を発表……みたいなことができたらいいなと思ったり。あ、まだ何も決まっていないので、期待はしないでください(笑)。いずれにしても、ソロとユニットの違いは明確に出さないといけないですし、ちょっとハードルは上がるけれど、そこはしっかりやりたいですね。
SymaG:第1回目なので、今後毎年開催することも見越しながら、でっかいライブにできるように頑張りたいですね。ゆくゆくは音楽ライブだけに限らず、いろんなクリエイターさんがかかわる面白いイベントになっていったらいいなと。ソロも久しぶりですし、あれもやりたい、これもやりたいでセットリストに悩んでいますが、ぜひ楽しみにしていてください。
■イベント情報
『Butai Entertainment Presents ハレブタイ2025』
会場:吉祥寺CLUB SEATA
https://seata.jp/
2025年9月14日(日)
OPEN 17:15 / START 18:00
出演者:ナナホシ管弦楽団/島爺(Guest:不眠症(Gt.),他)
2025年9月15日(月・祝)
OPEN 16:45 / START 17:30
出演者:カロンズベカラズ
[TICKET]
オールスタンディング
前売¥5,000(税込 ドリンク代別)
※購入枚数制限:4枚
※整理番号順の入場。
※撮影機器、録音・録画機器の持込みは禁止
※4歳以上チケット必要
チケットURL:https://l-tike.com/harebutai2025/
■関連リンク
Butai Entertainment
公式HP:https://butaient.com/
公式X(旧Twitter):https://x.com/butai_ent

■リリース情報
デジタルEP『UNVOXED』
3月14日(金)リリース
<収録曲>
1.エスオーエス
2.悪魔の取り分
3.ドウドウ
4.いたみわけ
5.もう帰りましょう
6.パンドラ
<配信リンク>
https://linkco.re/3pdGqGpF
■関連リンク
オフィシャルサイト:https://butaient.com/caronzbekaluz/
YouTube:https://www.youtube.com/@caronzbekaluz
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