“異次元の逃亡者”サイレンススズカ生誕の日に 「Silent Star」「七色の景色」……『ウマ娘』楽曲で感じる物語

 5月1日は競争馬・サイレンススズカの誕生日である。ハイペース大逃げの独自のスタイルで1998年の中山記念、小倉大賞典、金鯱賞、宝塚記念、毎日王冠などを制したサイレンススズカは、“異次元の逃亡者”、“最速の機能美”、“稀代の快速馬”といった数々の異名を持つ、現在でも多くの人の記憶に残る名馬だ。

「どこまで行っても逃げてやる」サイレンススズカ【毎日王冠1998】

 アプリゲームやアニメなど様々なメディアミックス展開がなされている作品『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)では、作品の初期からサイレンススズカをモチーフとしたウマ娘が登場しており、『ウマ娘』の世界でも史実と同じく“先頭の景色は譲らない”大逃げスタイルを貫いている一方で、ストイックな性格で物静かな透明感のあるキャラクターとして描写されている。一見清楚ながら走りに対してはトップを誰にも譲らない姿勢とそのギャップ、そしてそのキャラクター性に虜になったトレーナーたち(『ウマ娘』のプレイヤーの総称)も数多くいることだろう。

 今回は数ある『ウマ娘』シリーズの楽曲の中から、サイレンススズカが参加している楽曲をピックアップ。楽曲を通じてそのキャラクターの魅力に迫っていこう。

 『ウマ娘』シリーズで最初にサイレンススズカの楽曲として産声を上げたのが、『ウマ娘』プロジェクトが始動した2016年発売のゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』1st CDシリーズ第1弾『STARTING GATE 01』に収録されているソロ曲「Silent Star」だ。静謐な夜空に輝く星のような澄んだ空気感が伝わる美しいバラードナンバーであり、ウィスパー気味に紡がれる彼女の繊細で儚い歌声は、一聴しただけで多くの人の耳を惹き付けることだろう。

【ウマ娘】2nd EVENT「Sound Fanfare!」「Silent Star」

 リリース当時は作品の初期段階ということもあって、歌詞にはサイレンススズカの史実の要素が多く反映されている。中でも、1998年の『第118回天皇賞(秋)』のレース中に起きた骨折事故、そこからの予後不良と診断されて安楽死の処置がとられた悲劇は、サイレンススズカという名馬を語るうえでは避けては通れないエピソードである。Bメロに登場する〈優しい人が泣いています〉、〈その優しさ どうか/あなたの心のために とっておいて〉というフレーズが悲しみに暮れた多くのファンや関係者、そして騎手へと向けたものと考えると、その心配りも含めて感動的な歌詞と言えるのではないだろうか。

 そして彼女のもう1つのソロ曲は、2018年に放送されたTVアニメ第1期より、第1話のウィニングライブ(『ウマ娘』のレース勝者が披露するライブ)で披露された「七色の景色」。第1期の主人公のスペシャルウィークがサイレンススズカに憧れを抱くきっかけになった楽曲ということもあって、「Silent Star」と比べるとブラスサウンドも交えたポジティブでキラキラな要素が目立つ楽曲となっている。一方で、ストリングスのたおやかな音色で彼女の清廉でイノセントな雰囲気を表現していることも見逃せない。

 ここからはユニット曲や全体曲についても言及していこう。サイレンススズカが主人公として描かれた、ゲームのメインストーリー第1部の第5章『scenery』。ここで披露されたアグネスタキオンとのデュエット曲「transforming」は、サイレンススズカの静謐で心地よい雰囲気とアグネスタキオンのEDM要素が融合した、浮遊感のある4つ打ちダンスナンバーである。抑圧から解放されたかのようなリラックスした2人の歌声と、終盤にかけて一気に盛り上がっていくエモーショナルな展開は、何度聴いても飽きない魅力が詰まっている。

ゲーム【ウマ娘 プリティーダービー】メインストーリー第5章『scenery』PV
ゲーム【ウマ娘 プリティーダービー】ライブ動画「transforming」ショートVer.

 『ウマ娘』の魅力の1つとして、史実では見ることができなかった“ifの世界線”を見せてくれるという点が挙げられるが、この曲の歌詞はそれを想起させるワードが多く並んでいるのが特徴的。足の怪我、そしてその先の未来を見ることができなかったという共通点がある2人が、ウマ娘として想いの力を信じて“別のリアルへ”加速していく様は感慨深いものがある。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる