米津玄師が世界各国で巻き起こした熱狂 言語の壁を越え、“日本の音楽”を届けた最大規模ワールドツアー

ワールドツアー『KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK』ソウル/LA公演オフィシャルレポート
米津玄師は、今、世界各国で支持を集め、各地のファンから待ち望まれている。その確かな熱量を、この目で見届けてきた体験をレポートする。

3月から4月にかけて米津玄師はワールドツアー『KENSHI YONEZU 2025 WORLD TOUR / JUNK』を開催した。これは、1月から2月に行われ国内で35万人を動員した国内ツアー『米津玄師 2025 TOUR / JUNK』に続くものだ。ワールドツアーでは上海、台北、ソウル、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルスの7都市で計10公演が行われた。
上海公演 ライブ写真(Photo by Yusuke Yamatani)
台北公演 ライブ写真(Photo by Yusuke Yamatani)
それぞれの都市で、米津玄師のライブへの期待は非常に高まっていた。上海と台北では2019年の初海外公演『米津玄師 2019 TOUR / 脊椎がオパールになる頃』以来、実に6年ぶりの公演。ソウルでは初のライブだ。ここ数年韓国での人気は顕著に高まっている。Billboard JAPANが発表した「Japan Songs」によれば、韓国の2024年の年間チャートでは「Lemon」が2位、「Lady」が8位と、2曲がTOP10入りを果たした。
ロンドン公演 ライブ写真(photo by Jiro Konami)
パリ公演 ライブ写真(photo by Jiro Konami)
ヨーロッパへは今回が初上陸となる。ロンドンにも多くのリスナーがいるが、特にフランスでは日本の漫画やアニメ文化が深く浸透し、パリ公演には近隣欧州諸国からファンも集まる。スタジオジブリの宮﨑駿監督作『君たちはどう生きるか』の主題歌「地球儀」をはじめ、グローバルな人気を持つ日本のアニメやゲームをきっかけに米津玄師のことを知ったファンも少なくない。
アメリカでも注目度は急上昇している。アニメ『チェンソーマン』のオープニングテーマ「KICK BACK」は2023年、アメリカレコード協会(RIAA)から日本語曲として初めてゴールド認定を受け、「RIAA Class of 2023」にも選出された。さらに2025年初頭、グラミー賞を主催する米レコーディングアカデミーは「J-POPの世界的なブーム」を今年の音楽トレンドとして予測し、米津のワールドツアーを「エポックメイキングな出来事」と評価。ニューヨークとロサンゼルスでの初ライブには、現地ファンから熱い期待が寄せられていた。
ニューヨーク公演 ライブ写真(photo by Jiro Konami)
このワールドツアーは全公演がソールドアウトという快挙を達成。海外だけで計9万人を動員し、国内公演と合わせると総勢44万人が参加する大規模なツアーとなった。
筆者は3月23日のソウル公演と、ツアーファイナルとなった4月6日のロサンゼルス公演の両方に足を運んだ。どちらの公演でも、米津玄師の音楽が国境と言語の壁を軽々と超え、現地リスナーの心を鷲掴みにしている様子が手に取るように伝わってきた。

ソウル公演が行われたINSPIRE ARENAは、仁川国際空港近くに2024年にオープンしたばかりの最新の多目的アリーナだ。豪華なエントランスのLEDビジョンにはツアーのビジュアルが映し出され、開場前から多くのファンがグッズ購入や記念撮影に興じていた。
会場全体には開演前から高揚感が満ちあふれていた。2日間のチケットは発売後すぐにソールドアウト。この日は1万1千人のファンが集結した。観客層は男女比がほぼ同等で、10代から20代の若者が中心だった。ロビーでは日本語の会話はほとんど聞こえず、現地の若い世代が大半を占めているようだった。
開演時刻、バンドメンバーの中島宏士(Gt)、須藤優(Ba)、堀正輝(Dr)、宮川純(Key)と共に米津が姿を現すと、会場を揺るがすほどの大歓声が沸き起こった。オープニングの「RED OUT」では、米津の歌声に合わせて〈消えろ 消えろ〉のフレーズを1万1千人の観客が一斉に叫び、一体感が生まれる。続く「感電」では、特徴的なホーンセクションのイントロを観客が歌い、「マルゲリータ」では〈XOXO〉の部分で大合唱が広がった。

筆者はこれまでほぼすべての米津のライブツアーを見てきたが、ソウルの観客が見せた反応は過去のどの公演でも目にしたことがないほどの熱気に満ちていた。特に「LADY」や「Lemon」では、イントロや歌い出しで曲を認識した瞬間、溢れ出すような歓喜の渦が会場全体に生まれ、大きな合いの手の声援が響く。
最も驚かされたのは、韓国のオーディエンスがほとんどすべての曲で日本語の歌詞を完璧に歌い上げていたことだ。「メランコリーキッチン」といった初期の楽曲でも熱のこもったシンガロングが生まれる。前半のハイライトとなった「さよーならまたいつか!」では、会場全体が一体となった歌声が響き渡った。

「人生で一番熱い歓迎を受けた気がします。今までの音楽人生もひっくるめて祝福されたような思いです」と、米津は感慨深げに告げる。MCでは韓国語で挨拶し、「自分の国以外の場所にこんなに沢山の人が集まってくれて、1人でやっていた頃から考えると嘘みたいな光景です」と語った。
後半では「LOSER」で観客全員が一斉にジャンプし、アリーナの床が揺れるほどの盛り上がりを見せた。「KICK BACK」では、イントロの第一音から〈努力 未来 A BEAUTIFUL STAR〉のフレーズを観客が一斉に叫び、力強いコールと振りで客席が一体となり会場の興奮は最高潮に達した。続く「ピースサイン」「ドーナツホール」とアップテンポな曲で熱気は上昇を続け、本編ラストは情感豊かな「がらくた」で締めくくられた。

アンコールでは「BOW AND ARROW」を披露し、中島宏士がバンドメンバーを紹介。「こんなに熱いライブ、人生で初めてでした」と米津は感極まった表情で語り、「また来ます!」と約束した。




















































