go!go!vanillas、武道館のキャパを超えた求心力 “バニラズ8”でロックの快楽へと導いた最新アリーナツアー

 「超たのしー!」と、牧が他の言葉はいらないとばかりに喜びを溢れさせる。2年半前にここに立ったとき、次は2日開催という約束を果たしたことを2日目のステージで実感しているのだ。だからこそ、コロナ禍でアルバムツアーが叶わなかった『PANDORA』からのナンバーを武道館のオーディエンスに“会わせてあげたかった”のだろう。男女それぞれの目線から歌う「手紙」と「馬の骨」の素直な言葉たちが、より切実なニュアンスで届いた気がした。

 メンバーそれぞれ謝意を述べた中でも、セイヤの「まだ行けてない約束の地もあるんだけど、いち早くこの約束の地に来てくれてありがとう。来たかったけど来れなかった人のために次は5DAYS!」という威勢の良い発言にオーディエンスは大歓喜。実現の可否はともかく、この日のバニラズはまるで武道館がホームグラウンドに見えるほど、バンドの肉体性でアリーナライブを満たしていた。

go!go!vanillas ライブ写真(撮影=renzo)
(撮影=西槇太一)

 終盤のスパートは火柱が上がるステージを牧がスリリングに駆け抜け、実質室温も上がる「平安」から始まり、サイレンが鳴り響くガレージパンク「one shot kill」へ。ホーンもリフを吹く“バニラズ8”ならではのライブアレンジがカオティックな様相を示し、さらに畳み掛けるように「来来来」でハードなリフものの醍醐味が炸裂。反骨心をみなぎらせるナンバーの幅が広がったことも実感できた。

 一転、ハッピーなソウルショーのムードが2管のホーンによって生み出された「エマ」、2ビートでダッシュする「平成ペイン」では鍵盤ふたりの連弾や、曽我部に教えを請うた柳沢のサックスも披露。タフな楽団でもあり、屈指の音楽オタク集団っぷりを存分に発揮してくれた。やりたいことを全部詰め込んで清々しい表情で駆け抜けてきた本編ラストを前に、牧はそのモチベーションめいたことを淡々を語る。曰く、バンドでも人でも永遠はないのだから、会いたい人には会いに行ってほしいという。特にそんなことを考えていた去年、書いた曲である「Leyline」を最後に据え、The Beatlesから綿々と続くメロディやリズムのニュアンス、上から降り注ぐ白い光とリンクしたトランペットの祈るようなロングトーン、そしてホーリーなユニゾンコーラス。〈あきらめかけていたコトをしようよ〉という、何度目かの意思確認の歌詞と、客席に何本も放たれていた照明が太い一本に束ねられる演出も見事だった。

go!go!vanillas ライブ写真(撮影=renzo)
(撮影=西槇太一)
go!go!vanillas ライブ写真(撮影=西槇太一)
(撮影=renzo)

 圧倒と歓喜が入り混じった客席から起こる「おはようカルチャー」のシンガロングがアンコール代わりとなった情景も何もかもが愛しかったが、3曲のアンコールに『Lab.』の中でもバニラズのポップなロマンチシズムが溢れる「Moonshine」はとびきり温かかった。武道館ライブがホームグラウンドに感じられるほど大きなバンドになったgo!go!vanillas。この楽しさは全世代に届くと信じている。

■セットリスト
『go!go!vanillas Arena Tour 2025』
3月9日(日)日本武道館
1.HIBITANTAN
2.青いの。
3.デッドマンズチェイス
4.Super Star Child
5.LIFE IS BEAUTIFUL
6.クライベイビー
7.クロスロオオオード
8.マジック
9.SHAKE
10.Persona
11.Penetration
12.バイバイカラー
13.手紙
14.馬の骨
15.平安
16.one shot kill
17.来来来
18.エマ
19.平成ペイン
20.Leyline

En1.ロールプレイ
En2.Moonshine
En3.FUZZ LOVE

セトリプレイリスト:https://lnk.to/ggvLab.TOUR_Budokan2PL

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる