青山テルマの“唯一無二性”を考える UVERworld&ちゃんみな、INI 西洸人ら参加の『EASY MODE』レビュー

青山テルマほど、J-POPのフィールドにいながらトレンドのR&B~ヒップホップ~エレクトロニックミュージックを自己流に取り入れてきたアーティストはいない。特に、メインストリームのポップミュージックとアンダーグラウンドな音楽が乖離しがちな国内シーンにおいて、両者の橋渡し的なポジションに立ち長年に渡って良質な楽曲をリリースしてきた。
そういった役を担ってきたポップスターといえば他に加藤ミリヤくらいしか浮かばないわけだが、ミリヤが渋谷ギャルというものを自覚的に背負ってきた一方で、テルマはもう少しグローバルなギャル文化の影響を取り入れつつ、ストリート色が強い。言い換えるなら、ローカライズされた湿り気を多く含む内向きな自己表現を追求してきたミリヤと、内省を歌いつつもカラフルでエッジの効いたイメージを幅広く示してきたテルマ、という違いがあると思う。あの手この手で演歌のような哀愁を描いてきたミリヤと比べて、テルマは明るさ/朗らかさと内省/哀しみを対比的に描写してきた。
唐突に比較論から入ってしまったが、そういったテルマの唯一無二の魅力というのはアルバム『HIGHSCHOOL GAL』(2018年)あたりからますます研ぎすまされてきており、前作『Scorpion Moon』(2021年)では多彩なテクスチャでその両面が表現されていた。Aisho Nakajimaとの「Yours Forever」は象徴的な曲だったが、それから4年が経ち今回届けられたのが、新たに立ち上げた自主レーベル NDY RECORDSからのリリースとなったアルバム『EASY MODE』である。人気曲「ONIGIRI」のリミックスバージョンではUVERworldとちゃんみなが加わりロック調にアレンジしてみせたり、NISHI HIROTO (INI)やTiji Jojoとのコラボ曲もあったりと、計10曲というタイトな作りながらも曲調はバラエティに富んでいる。
前作からの間に起きた大きなトピックとして、テルマ自身の入籍発表のニュースがあった。アナウンスと同時にリリースされた「Where u r」もアルバムには収録されているが、その流れで、今作はハッピーモードに包まれたあたたかい作品になるのだろうと想像していた。しかし、どうやらそれだけでは片づけられない複雑なアルバムである。「Where u r」では〈愛なんて幻/そう思ってた/愛なんて傷つくものだってさ〉〈君の愛に包まれて/君と居る世界なら/もっと生きていたいかな〉と歌っているが、どちらかというと、その「愛なんて幻」と思っていた過去のネガティブな気持ちも具体的に描かれている。単なるハッピーエンドの作品にはなっていないのがポイントだ。