Number_i、ONE OK ROCK、BE:FIRST、HANA……耳を惹き込む楽曲はなぜ生まれるのか? 徹底レビューで紐解く

HANA「Drop」

HANA / Drop -Music Video-

 ちゃんみなプロデュースのもと、BMSGから新たに誕生したガールズグループによるプレデビュー曲。彼女たちを生んだオーディション番組『No No Girls』を追っていた人ならわかるだろうが、最終的にHANAのメンバーとなった7人を含め、オーディション参加者は皆それぞれの人生を生きてくるなかで、さまざまな苦悩や挫折を味わってきた。そんな彼女たちに最終審査の課題曲としてちゃんみなが書き下ろしたのが、この「Drop」だ。最初から最後までピアノのループが印象的に響く、しかしどちらかといえばストイックなトラックに乗せたリリックが、ここから人生の新たなステージに挑むメンバーを奮い立たせるように鳴り響く。ストレートに7人の個性を伝える歌割りと、それぞれのパートに散りばめられた、まるでこれは序章とでも言うようにあっさりと訪れるエンディングに、思わず何度もリピートしてしまう。いわゆる“ガールズグループ”のステレオタイプなイメージをもって聴くと、いきなり横っ面を張り倒されるような衝撃を覚えるだろう。(小川)

BE:FIRST「Spacecraft」

BE:FIRST / Spacecraft -Music Video-

 不明瞭なエフェクトボイスがやけに耳を引く不穏なイントロ、重々しくグラインドするベースライン、アブスラクトなトラック上を自在に行き交う三者三様ならぬ七者七様のラップ&ボーカル――仮に街中やクラブでふと耳にしたなら確実にShazamするであろう、予測不能な刺激に満ちたポップソングがBE:FIRST「Spacecraft」だ。個人的にサウンド面で思い浮かんだのは、グラミー賞にも輝いたスクリレックス、フレッド・アゲイン、フロウダンによる2023年のヒット曲「Rumble」。つまりは2000年代UKダブステップのアンダーグラウンドな意匠やポストダブステップ以降の自由な感性が息づいた最新鋭のダンスチューンなのだが、そこに注ぎ込まれたメンバー7人のシーンを自分たちで塗り替えんとする気概と気迫、サビの〈ひっくり返す常識ごと全部〉という象徴的な言葉が、聴く者の心をも突き動かす一曲に仕上がっている。(北野)

羊文学「声」

文学 - 声 (Official Music Video) [月9ドラマ『119エマージェンシーコール』主題歌]

 これまでもテレビアニメ『【推しの子】』第2期エンディングテーマ「Burning」などのタイアップを手がけてきた羊文学だが、今回の「声」は月9ドラマ『119エマージェンシーコール』主題歌ということで、いよいよお茶の間が「これは誰の曲!?」と気になっている。イントロのアコギの音色から一貫して軽やかな曲調のなかで、塩塚モエカ(Vo/Gt)の〈あなたが呼んでる 声が聞こえてる/私は迷いなど放り投げ、祈っていた ただ強く〉という、まさに祈りのような力強い歌声が響き渡る。さらに、キャッチーなコーラスや叫びのようなギターソロで、豊かな彩りを表現。ドラマの物語やお茶の間という日常にそっと寄り添う絵を描きながらも、“羊文学”というシグネチャーは焼き付ける、絶妙なバランス。最後は、〈どんなに長い夜の先にも/必ず明日を繋ぐから信じてほしい〉という、不安を抱える老若男女、誰もが歌ってほしい頼もしいフレーズで締め括られる。この楽曲で多くの人が、“信じられる歌と音のバンド”羊文学を認識するはずだ。(高橋)

ONE OK ROCK「Puppets Can’t Control You」

 TBS系日曜劇場『御上先生』の主題歌として、ニューアルバム『DETOX』から先行配信されたのがこの曲。英語詞がメインの楽曲となっているが、冒頭4行のみが日本語になっていて、ここでTakaが綴っている言葉がとにかく強烈で耳を奪われる。〈先行か後攻で決まるような/馬鹿げたペテン師のゲームに/実際踊らされて狂わされ/騙されたあげく〉――ここで楽曲のテーマ、そして今のONE OK ROCKが提示する問題意識がはっきりと明示されているからこそ、この曲は多くの人の心を掴んだのだろう。神秘的なイントロから波が寄せては返すように激情的なヘヴィネスと不安と諦めが入り混じったような静けさがたびたび入れ替わっていく楽曲の展開も見事で、聴くたびに違った表情があらわになっていく。もちろん単曲でもすばらしいのだが、アルバムのなかで聴くと前後のつながりも含めてますます心を動かされるものになっているので、この曲を聴いて気になった人はぜひアルバムを通して聴き込んでほしい。(小川)

※1:https://www.youtube.com/watch?v=olNC5_B1WIw

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