KREVA、『Project K』に凝縮された時代の必然性 AI技術を駆使した制作、環境の変化を経た今の心境に迫る

KREVA、『Project K』の必然性

母との死別、KREVAが残しておきたかった想い

――「次会う時」についても聞かせてください。これは今の話にもありましたけれど、ずっと闘病生活を続けてきたお母さまについての曲だと思います。これはどういうふうに書いていったんでしょうか。

KREVA:このトラックができてからすぐに歌詞を書きたいと思ったんだけど、病院に行かなきゃいけなかったり、そうしたらやっぱり具合が悪くなっていたりを繰り返していて。母を見てたら「頑張って」じゃなくて「もう頑張らなくていいよ」と思う瞬間があったんです。今まではそう思うことはなかったし、基本的にこのアルバムのほかの曲でも「Expert」とか「頑張って上に行こうよ、前に行こうよ」ってことを散々言ってるんだけど、でもそうじゃなくていい瞬間もあるな、と。そう考えたら、ライブに来る人も一人ひとりいろんなことを抱えて来ているだろうし、そこにいてくれるっていうこと自体がすごくありがたいなと思えたから。ライブで歌う時は、みんながまた次に来てくれるだけでもいいよという、その思いと母への思いを重ねて。あとは、どれだけもがき苦しんでいても自分はやるから、それがみんなのパワーになればいいなっていう思いを込めて書きました。

――昨年末にInstagramでお母さまが他界されたことを公表されていましたよね。プライベートなことでもあるし、言わないという選択肢もあり得たと思います。でもそのことをちゃんと開示した。そこにはどういう思いがありましたか?

KREVA:黙ってる、ということはまったく思わなかったですね。亡くなってすぐに仕事があった時には黙ってたりしましたけど。いろいろやろうと思っていたことも、母の状況と重なってお断りすることもあったし、そこへのけじめはちゃんとつけたいという思いもあったから。それで伝えたってところはあります。

――これについては、僕自身もまったく同じような境遇にあって。僕自身も昨年末に母が亡くなり、そのすぐ後に仕事があったりしたんです。この取材をしているのが1月7日なんですが、8日がお通夜なんですよ。これに関しては、KREVAさんとは同い年っていうこともあるので、いろいろと思うことはあるんですけれど、なかなか上手い質問が思い浮かばない。

KREVA:いや、いいよ。

――ありがとうございます。

KREVA:たぶん、塞がる穴じゃないと思うから。みんなに伝わっていくんだったら、ちゃんと自分で言った方がいいなと思って。それが言った理由かもしれない。みんな、何かあったのかなってわかるんじゃないかと思うんだよね。だったら自分の口から言いたかったっていう感じですね。

KREVA(撮影=林直幸)

――これはちょっと踏み込んだ話ですけど、僕自身の話をすると、母親が亡くなった翌日に自分はブログを書いたんです。その時に自分はこういうことを思ったっていうことを書いた。書きながら「これは自分が10年後に読み返すだろうな」と思っていたんですね。どういうことを思ったか、どういう思いが生まれて、何を大事にするかということを、単に悲しいとか寂しいだけじゃなくて、ある種の自分の指針みたいなものをちゃんと言葉にできるタイミングだということを、翌日くらいに思ったんです。そういうこともあってすごくこの曲には共感することがあって。この曲も、ある種の指針になる曲だと思ったんです。そういうところに感じ入るところがありました。

KREVA:なんというか、世の中、普通に進んでいくからね。人が一人いなくなっても普通に進んでいくし、自分も不思議と普通にできる部分もある。

――ありますね。

KREVA:その切なさ、それが残しとかなきゃいけないと思ったことなのかもしれない。塞ぎ込んでいるままみんなの前に行って、それを伝播させたいわけでもないけど、今はつらいんだよっていうのをわかってほしいって気持ちもあって。ただ、それより苦しんでる本人の方がつらいだろうなって見てて思ったし。昔ミート&グリートでライブの後にファンクラブの人と会って話をする時があったんだけど。5人の当選者のうち3人ぐらいが今めちゃくちゃ辛い思いしてるけど、ライブ見に来て元気もらってるって言ってくれたこともあったなと思って。その感じも重なりましたね。その人たちの感じていた辛さが今俺のところに来たか、と。だったら、改めて力になれるような歌ができたらいいなと思いました。

「毎回本当にこれで最後かもしれないと思ってやらないと」

――改めて、20周年というタイミングについてのお話も聞かせてください。ちょうど10年前、10周年の時にもインタビューさせていただいているんですが、その時は「常にフラストレーションを抱えている」と言っていました。まだ足りない、まだ納得がいかないというフラストレーションが常にあって、それが自分を突き動かすエネルギーになっているという話をしていた。この感覚って変わらずにある感じですか? それとも時を経て、変わってきましたか?

KREVA:諦めじゃないけど、時代がもう半周ぐらい進んで、これはしょうがねえなって思える部分も増えてきたような気がしますね。なんて言えばいいのかな、シーンというか、現場のど真ん中に自分が立ってるような感覚でイライラしてたと思うんだけど、そうじゃなくて、少し抜けたところに入ってきてるのかなっていう感覚ですかね。達観しているというか、そういう視点も少し入ってきてるような気がします。でも、「じゃあもういいや、バイバイ」じゃなくて「じゃあ何ができる? どうしたら面白い?」って探している感じかもしれない。昔はただ怒ってただけかもしれないけど、今は少しでも楽しめるように頑張ってるっていう感じです。

――ソロを始めての最初の10年とその次の10年って、違う意味合い、違う位置づけの10年だったと思うんです。どういう違いを感じていますか?

KREVA:2004年にソロデビューして、2006年にアルバムがオリコン1位になって。でも10年やってると人気も落ち着いてくる。そこからは人生に似てるけど、体力にしてもパワーにしても、人間としては下降線になっていくわけで。その中で、いかにその傾斜をなだらかにしていくかの戦いという感じがしますね。で、ここ10年はどんどん落ちていく角度が早くなってきていて、そこにいい具合に抗ってる10年という感じですかね。でもおかげさまで、たとえば「Players' Player」みたいに、時折ボンと上がるみたいなこともある。さらにどんどん頑張らなきゃいけないっていう気持ち、プラス責任感が増していった。そんな違いがありますね。

KREVA(撮影=林直幸)

――10年前のインタビューの時に「この先の目標は?」ということを聞いたんですけれど。

KREVA:面白いですね。なんて言ってました?

――「大金持ちになりたい」って言ってました。ちゃんとKREVAの音楽をわかってもらって、音楽で大金持ちになりたいと。これは変わらないですか?

KREVA:なりたいですね。うん、なりたいなあ。ただ、最近はあえて目標とか夢とかを持たないようにしてる部分はありますね。一個一個、目の前のことを確実にやっていくのみと思ってる。ただ、ひとつあるとしたら自分のデカいスタジオが欲しいですね。今はめちゃくちゃ小さいブースの中で全部やってるから。結局大金持ちにならないと無理なんだけど。

――この先、数十年のイメージはありますか? 自分がどういうふうにキャリアを終えていくか、おじいちゃんになった時にどうありたいかみたいなことって考えることは増えてくるんじゃないかと思うんですが。

KREVA:それはもう、次のツアーが終わったら辞めるくらいのつもりでやろうと思ってます。毎回本当にこれで最後かもしれないと思ってやらないと厳しいなと思う。本当に最後になることってあるんだなっていうのを身をもって体感したから。本当にやりきるつもりでやんなきゃダメだなって思ってますね。

KREVA(撮影=林直幸)

※1:https://realsound.jp/tech/2020/01/post-476987.html

■リリース情報
『Project K』
2025年2月19日(水)リリース

初回限定盤:https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VIZL-2409.html
通常盤:https://www.jvcmusic.co.jp/-/Linkall/VICL-66037.html

初回限定盤(CD+DVD)
価格:5,398円(税込)
通常盤(CD)
価格:3,198円(税込)

<CD>
01.No Limit
02.口から今、心。
03.TradeMark
04.IWAOU
05.ラッセーラ
06.Project K Interlude
07.Knock
08.Forever Student
09.Expert
10.次会う時
11.New Phase

<初回限定盤DVD・収録内容>
・KREVA in Billboard Live Tour 2024 6/18 (Tue) 2nd Stage
Expert/TradeMark (Jazz Ver.)
・Music Video & Making
Expert (Music Video)/Forever Student (Music Video)/No Limit (Music Video)/Expert (Making)
Forever Student (Making)/No Limit (Making)

■ツアー情報
『20th Anniversary
KREVA LIVE 2025「Project K Tour」』
ツアー特設サイト:https://kreva.club/tour2025/

<日程>
2025年3月12日(水)千葉県 柏PALOOZA
2025年3月14日(金)鳥取県 米子AZTEC Laughs
2025年3月16日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
2025年3月22日(土)鹿児島県 鹿児島CAPARVOホール
2025年3月23日(日)熊本県 熊本B.9 V1
2025年3月29日(土)和歌山県 和歌山SHELTER
2025年3月30日(日)奈良県 奈良EVANS CASTLE HALL
2025年4月5日(土)石川県 金沢RED SUN
2025年4月12日(土)東京都 江戸川区総合文化センター 大ホール(※)
2025年4月13日(日)東京都 江戸川区総合文化センター 大ホール(※)
2025年4月18日(金)愛知県 Niterra名古屋日本特殊陶業市民会館ビレッジホール(※)
2025年4月24日(木)北海道 札幌PENNY LANE 24
2025年5月9日(金)岡山県 倉敷市芸文館(※)
2025年5月11日(日)愛媛県 松山WStudioRED
2025年5月17日(土)静岡県 清水SOUNDSHOWER ark
2025年5月18日(日)岐阜県 岐阜club-G
2025年5月23日(金)東京都 LINE CUBE SHIBUYA(※)
2025年5月25日(日)大阪府 NHK大阪ホール(※)
2025年6月7日(土)青森県 リンクモア平安閣市民ホール(青森市民ホール)(※)
2025年6月15日(日)宮城県 SENDAI GIGS(※)
2025年6月17日(火)福岡県 福岡市民会館 中ホール(※)
ール(※)

<チケット料金>
・ライブハウス DJ STYLE
スタンディング:¥7,908(税込)
2F指定席:¥8,908(税込)
・ホール BAND STYLE
全席指定:¥8,908(税込)
※4歳以上チケット必要
(※)はバンドスタイルでの公演。

■衣装
RequaL≡(ESTEEM PRESS)
Oliver Peoples(Luxottica Japan Customer Service)

■関連リンク
KREVA OFFICIAL HP:https://kreva.club/
KREVA 20th anniversary site:https://www.jvcmusic.co.jp/kreva2024/
KREVA OFFICIAL FAN CLUB:https://kreva.club/
KREVA Instagram:https://www.instagram.com/kreva_drk_dj908/
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