琴音、歩んできた集大成と未来へ踏み出す決意 初の試みでも驚かせた『Live 2025 -成長記-』

琴音『Live 2025 -成長記-』レポート

 昨年3月にメジャーデビュー5周年を迎え、9月にはその歩みの集大成とも言える2枚組のアルバム『成長記 〜Now&Best(2018-2024)〜』をリリースした琴音が、アルバムと同タイトルを掲げたライブ『琴音 Live 2025 -成長記-』を神奈川と新潟の2カ所で開催した。ここでは1月19日に神奈川・SUPERNOVA KAWASAKIで昼夜2公演行われたライブの第1部の模様をレポートする。

 暗転したステージにゆっくりと1人現れた琴音。大きな拍手に迎えられる中、アコギをそっと抱え、爪弾き始める。ライブはインディーズ時代にリリースした1stミニアルバムの表題曲であり、これまでの軌跡の第一歩とも言える「願い」の弾き語りで幕を開けた。息遣いを感じさせるほどに近い距離で優しく柔らかく、そして凛とした存在感を放ちながら響いていく歌声に会場は心地よく包み込まれていく。

「みなさん、こんにちは。琴音です。最後までぜひ楽しんでいってください」

 バンドメンバーであるモチヅキヤスノリを迎え入れ、ピアノと歌のみのスタイルで披露されたのは感動的なバラード「狭いソラ」。ぽつりぽつりと言葉をメロディに乗せながら、サビで突き抜けるようなハイトーンを鳴らす展開がエモーショナルな光景を描き出す。間奏での感情たっぷりのフェイクも痺れるポイントだった。続く「夜明け前」も同じ編成で届けられた。ノスタルジックな切なさをはらみながらも、全編に温かさを感じさせる歌声。ハンドアクションを交えながら感情をしっかりと声に乗せていく姿に、5年分の成長を手に入れた今の琴音が鮮やかに浮かび上がる。

 続くMCではもう1人のバンドメンバーである花井諒を呼び込み、3人編成となったステージ。そこから「冒頭、結構ヒリつく感じの曲が多くて。すごい緊張しちゃって足が震えたんですけど。みなさんも緊張してますかね? ちょっと伸びますか」と告げ、両手をグーッと上げ、体を伸ばす琴音&観客たち。張り詰めていた緊張がほどけ、会場にリラックスしたムードが満ちる。「もうどうなっちゃうかと思いました。ここからは元気に楽しくやりますので……いや元気でない曲もあるかな」と観客を微笑ませつつ、ライブは続いていく。

 「君は生きてますか」では、アコギとピアノによるアンサンブルの中、琴音の歌が持つ力を存分に発揮しながら、生きる意志を強くメッセージとして届ける。一転、「Wrong」ではトラップビートを盛り込んだR&B的なアレンジの中、ハンドマイクでグルーヴィに歌を響かせた。さらに、エレクトロなシーケンスと軽快なピアノバッキングが印象的な「image」では、琴音がエレキギターを持ち、彼女の中にあるロックなニュアンスを曲に投影していく。その新しい表情に大きな拍手が巻き起こる中、「Brand New World」ではピアノ、アコギ、歌というシンプルな編成の中、再び圧倒的な歌で会場を魅了する。3人というミニマムな編成だからこそできる柔軟なアレンジの足し引きにより、琴音の様々な魅力を強く感じることができたパートだった。

「今までもワンマンごとに何かしら挑戦をしようと思ってやってきたんですけど、今回はそのひとつがエレキギターを弾こうという試みでして。名づけて“ギターアハ体験”って勝手に私が言っていて、(ギターが変わったことに)みなさん気づくかなと思いながらやっていたんですけど、出てきた瞬間に『お!』ってなる方がいらっしゃいましたね。バンドマンになった気持ちでかき鳴らしていたんですけど、みなさん楽しんでいただけましたでしょうか?」

 エレキギターをライブで演奏するという初の挑戦を嬉しそうに報告した琴音。だがこの日のライブにはもうひとつ初の試みがあった。それが次に披露されたメドレーだ。「10代メドレー」と名づけられていたように、ここでは「夢物語」「ここにいること」「白く塗りつぶせ」「今」「音色」という、彼女が10代の頃に書いたナンバーが並べられていた。かつての自分が心を込めて作ってきた楽曲たちを慈しむように、1曲1曲が大切に歌われていく。クラップが鳴り響いて会場が楽しいムードに包まれたかと思えば、琴音は笑顔を浮かべながらタンバリンを叩いてみたりと、曲が持つ雰囲気で景色が次々と変化していくのはまさにメドレーの醍醐味だろう。初期の琴音の世界をギュッと凝縮した楽しい時間だった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる