Vaundy、小袋成彬、優里、INI、幾田りら、[Alexandros]……注目新譜6作をレビュー

New Releases In Focus

 毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はVaundy「走れSAKAMOTO」、小袋成彬「Zatto」、優里「DiNA」、INI「Make It Count」、幾田りら「百花繚乱」、[Alexandros]「金字塔」の6作品をピックアップした。(編集部)

Vaundy「走れSAKAMOTO」

TVアニメ『SAKAMOTO DAYS』ノンクレジットオープニング│Vaundy「走れSAKAMOTO」│SAKAMOTO DAYS Opening

 Vaundyの新曲「走れSAKAMOTO」は、TVアニメ『SAKAMOTO DAYS』(テレビ東京系)オープニングテーマ。オルタナ直系のストレンジで鋭利なギターフレーズから、心地よい疾走感に貫かれたバンドサウンドへと移行。ポップに広がっていくサビのメロディや意外性に溢れた展開を含め、Vaundy特有の構築的なセンスが存分に発揮されたこの曲は、日常と非日常を独特のバランス感覚で描いた『SAKAMOTO DAYS』の世界と完璧にリンクしている。抑制と解放を巧みに使い分けるボーカルも、この楽曲の説得力の大きな理由だろう。歌詞のメインイメージも主人公の坂本太郎なのだが、特に〈殺伐を溌溂で刺す店長に勝つ策略を/否デブに説法〉というラインは、坂本のキャラと本作のストーリーを端的に射抜いていて、上手いなあ! と思わず笑ってしまった。(森)

小袋成彬「Zatto」

小袋成彬「Zatto」

 前作『Strides』(2021年10月)以来、約3年3カ月ぶりのニューアルバム『Zatto』。ロンドンのジャズミュージシャンたちとセッションを重ねて制作されたという本作を象徴している楽曲の一つが、タイトルトラック「Zatto」だろう。冒頭は生ドラムのビートだけでたっぷり20秒。そこに〈五月雨燻む街/人生が咲き乱れ〉からはじまるボーカルが乗り、鍵盤やコーラス、ワウギターなどが絡み合う。その後もホーンのリフーー『カインド・オブ・ブルー』を想起させるーーピアノ、弦なども加わり、約6分の間にジャズ、ソウル、ファンク、現代音楽などの要素が美しいタペストリーを作り上げる。構築感とインタープレイの見事な融合。時間と手間を惜しまず、丁寧に作られたことがはっきりと感じ取れる。(森)

優里「DiNA」

優里 - DiNA / THE FIRST TAKE

 1月3日にYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』の2025年第一弾として初披露された新曲。〈靴下を脱ぎっぱなしにする癖も〉と、かなり所帯じみた歌い出しでありながら、あ、優里の世界だ、と一発でわかる。この人の声が持つ、耳を澄まさずにはいられない切実さのようなものが溢れ出しているのだ。この新曲は名曲「ドライフラワー」の系譜にある終わった恋の歌。残る記憶をDNAになぞらえ、今も埋まらない喪失感を綴っていく。ただ、いない誰かが今もどこかで元気でいるとすれば、それは〈私と暮らした遺伝子の/おかげなんですね〉などと語るところは、成長した子供を送り出す母の歌、もしくは配偶者を亡くした人の歌とも解釈できる。若者たちの恋愛だけではない、深い愛の歌である。(石井)

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