櫻坂46、稲葉浩志、Ado、幾田りら、山下智久、水曜日のカンパネラ……注目新譜6作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回は櫻坂46「自業自得」、稲葉浩志「NOW」、Ado「MIRROR」、幾田りら「ハミング」、山下智久「Perfect Storm (feat. TAEHYUN of TOMORROW X TOGETHER)」、水曜日のカンパネラ「赤猫」の6作品をピックアップした。(編集部)
櫻坂46「自業自得」
ダイナミックなシンセから始まるイントロ。これはK-POPにも近いダンスミュージックである。坂道系グループを司る秋元康には「低音域は“仮想敵”」の持論がある、というのはよく知られるエピソードだが、その意味で櫻坂46楽曲のはっきりした低音アピールはとても興味深い。もちろん歌が始まれば、ヨリを戻そうとしてくる元カレと強気で突っぱねる主人公のストーリーが明確に浮かび上がってくるが、言葉とメロディだけが主役を張るわけでもない。サビ前の〈君の腕を/掴んだまま/どこまでも歩いただろう〉の部分はラップ風からメロディへとシームレスに切り替わる展開であり、ユニゾンのサビでもシンコペーションを多用。歌そのものにリズムの妙味を含ませた曲だ。(石井)
稲葉浩志「NOW」
約10年ぶりとなるソロアルバム『只者』から先行配信された「NOW」のサウンドプロデュースは蔦谷好位置、編曲は蔦谷、釣俊輔が担当。アタックの強めシンセベースを軸にしたトラック、エレキギター、ホーンの音色を活かしたサウンド、サビに入った瞬間にダイナミズムが増強される展開を含め、稲葉浩志の個性を活かしつつ、斬新にして最先端のポップミュージックへと昇華している。真ん中にあるのはもちろん、稲葉のソングライティングと歌。たとえば〈目の前に光るのがNOW〉というサビ頭もそうだが、つい口ずさみたくなるキャッチーなフロウ、そして、日本語の響きを損なうことなく大スケールのアンセムへと導くセンスは誰にも真似できない。(森)
Ado「MIRROR」
レッチリのフリーを思わせるスラップベースから始まるファンキーなナンバーは、なとりの手によるもの。跳ね回るベース、四つ打ちベースのリズム(いわゆる“ドッチードッチー”のパターンを巧みに回避するハイハット使いに注目)、オルガンに似た鍵盤が軽やかにループ。一度転調するだけで最後までほぼパターンを変えないトラックは、ダンスミュージックとしては一般的だが、なとりやAdoが育ってきたボカロカルチャーの常識で言えば挑戦的な引き算なのだろう。情報を詰め込む術をいくらでも知っている同世代の二人が、あえて大人っぽい世界を提示した新境地。本気の声量の半分、もしくは1/3くらい、囁くように歌うAdoの唱法も新鮮だ。(石井)