Apes、インナージャーニー、Kanna、メとメ、板歯目……『次世代pre. NEXT GENERATION LIVE 2025』出演8組を徹底解剖
Black Leech
Red Hot Chili Peppers直系のファンキーなグルーヴを有し、Hi-STANDARDやELLEGARDENのようなカラッとした疾走感でサビを駆け抜け、懐かしくも新鮮な気分で満たしてくれる横浜発の3人組 Black Leech。『AIR JAM 2018』が結成のきっかけになったというのも納得だが、その“新鮮さ”は単なるジャンルの掛け合わせによってではなく、ユース特有の甘酸っぱい青春性から溢れ出ているものだろう。Beastie Boysよろしく、気の置けない仲間同士で戯れ合っているようなやんちゃさが音に表れているのもいい。まさにパンクやヒップホップがストリートで築き上げてきた孤高にして無垢な遊び場。歌詞では弱さや情けなさを衒いなく吐き出しているが、そうした内省をポップパンクやラップでキャッチーにドライブさせているのが面白く、いわゆるポップパンクリバイバル以降の感性をリアルに体現する新星が現れたとも言えそうだ。変幻自在なサウンドを乗りこなす玲音(Vo)の歌もBlack Leechの武器であり、ライブでどんな驚きをもたらしてくれるのか、期待がかかる。
カラコルムの山々
グラミー賞にベスト・ストレンジポップ賞があるなら、迷わず彼らに贈りたい。2020年代の東京に突如出没した摩訶不思議な4人組 カラコルムの山々。その手にかかればテクノもロックもヒップホップも歌も語りも、あらゆる境界線は消失する。最初に『からり』(2021年)を聴いた時はZAZEN BOYSやゆらゆら帝国といった歴代の鬼才の知恵を借りながらサウンドのオリジナリティを模索している印象だったが、石田想太朗(Vo/Gt)の尋常じゃないシニカルさと本気度に満ちたリリックに鳥肌が立った。あり得ない話のはずなのに、どこか現実と紙一重じゃないかと思わせる言葉選び、鬼気迫るストーリーテリングに背筋がゾッとする。そして気づけば、それが中毒性抜群の快楽に変わっている。“中毒”というのは無意識に与えられるのではなく能動的に見つけ出していくものーー冷めた諦念が蔓延する現代に、石田は「超現実」というオルタナティブな可能性を提示してみせた。現実を模写するのではなく、“現実を超えた奇妙な世界”を描くことで、自ずと現実の輪郭が浮き出てくるということ。知的でコンセプチュアルだが、どこまでも感覚的で本能的。早耳の音楽ファンを虜にするカラコルムの山々がステージで何を訴えるのか、必見である。
Chim Chap
驚いた。1st EP『ORANGE』(2024年)を聴いて、たった5曲20分にしてこれほどカラフルな世界を楽しませてくれることに。王道ギターロックかと思いきや、噛めば噛むほどソウルやR&Bやジャズのフレーバーがじゅわりと口(というか耳)の奥に広がる。まず惹かれたのは日米にルーツを持つというJesse(Vo/Gt)の歌声。ちょっとした一言にも色気があり、お洒落な洋楽を聴いているようなキラキラした気分に(「マジック」で低音の歌唱を披露するパートはThe xxのオリヴァー・シムみたいでドキッとした)。日本語を大切にした作詞になっているのも好印象で、〈落ちる〉でリフレインする「スパンコール」なんてドンピシャでツボを突く気持ちよさだ。古今東西ジャンル問わず、幅広い音楽を聴いているだろうことは想像に難くないが、素朴でほろ苦い恋愛が歌われていることにChim Chapらしさがあるのではないかと思う。『十代白書2024』でグランプリを獲得し、実力は折り紙つき。巧みな演奏で楽しませることを忘れないChim Chapを心ゆくまで堪能したい。
Apes
時代やトレンドが移り変わってもオルタナティブロックは人間の呼吸に合わせて鳴り続ける。それを2020年代に確かな息吹で体現しているバンドこそ、東京で結成された3人組 Apesだ。最新作『GATEWAY』(2024年)を聴くだけでも、ポストロックやグランジを基調にダンスパンクやヒップホップからの影響も垣間見せ、曲ごとに様々な表情を見せるが、不穏な空気感と低体温から生まれる爆発力、人懐っこいポップなメロディは通底している。歌詞においても、避けられない別れややり場のない孤独、後悔や居心地の悪さを淡々と綴りつつ、坂井玲音(Vo/Gt)なりの“それでも”という小さな希望がじんわり滲む。大人になって理不尽さを知っても、決して消えることのない“今を生きる”という青春性に誠実に向き合うバンド。オルタナティブな存在がいつの時代も担ってきた心の片隅に光を灯す役目を、Apesはしっかり引き継いでいる。ジャンルを超えた表現を可能にする高い演奏力も魅力であり、今回のイベントをどのように締め括ってくれるのか、大いに期待したい。
◾️イベント概要
『次世代pre. NEXT GENERATION LIVE 2025』
新宿LOFT & LOFT Bar(2ステージ制)
OPEN 18:00/START 18:30
<チケット料金>
学生:1500円+1D ※学生証提示
一般:2000円+1D / 当日券:2500円+1D
チケット販売ページ:https://eplus.jp/sf/detail/4240230001-P0030001
※1ドリンク別/オールスタンディング
※小学生以上のお客様はチケットが必要となります。
※未就学児入場不可
<全出演アーティスト/タイムテーブル>
・Apes
・インナージャーニー
・Kanna
・メとメ
・カラコルムの山々
・板歯目
・Chim Chap
・Black Leech