2024年アニソンTikTokバズ解説 BBBBダンス、にごリリダンス、扇風機ダンス......偶然と戦略が生んだヒット
反対に予想外のバズという点での今年の代表格は「Study Equal Magic!」だ。『アイドルマスター SideM』の元教師3人のアイドルユニット・S.E.Mというユニットの2015年発表の楽曲が、2023年12月頃からTikTok内で徐々に流行り始め、今年4月には人気楽曲ランキングで上位にランクイン。5月頃にはTikTok外の多くのプロデューサー(『アイドルマスター』シリーズのファンの総称)たちにもその流行情報が知れ渡り、『SideM』を知らない人たちにも楽曲が届いていることに、界隈が騒然となった。
@usss_tiktok 楽しく踊りました! #studyequalmagic #浦島坂田船 #うらたぬき #志麻 #となりの坂田 #センラ ♬ Study Equal Magic! - S.E.M
しかし最も驚かされたのは、その流行したダンスの内容である。プロデューサーたちが当初予想していたダンスは、サビで両手の指先を頭上で合わせた状態で左右に揺れながら腕を伸び縮みさせる、通称“タケノコダンス”だったが、実際にTikTok内でバズったダンスは「Study Equal Magic!」のイントロ部分、顔を伏せながら両手をグルグル回す、通称“扇風機ダンス”の方だったのだ。元々楽曲を知っていた筆者も「えっ! そっち!?」と驚いたのを覚えているが、インパクトのあるサビ以外の部分が強すぎて、他のダンスパートのキャッチーさに気付いていなかったのだと、このバズで思い知ることになった。
「Study Equal Magic!」は「勉強って面白いんだぜ!」という彼らのメッセージをキャッチーな歌詞と振付で示した1曲であるが、そもそもS.E.Mは「どうやったら勉強の楽しさを伝えられるか」を真剣に考えた末に生まれたアイドルユニットである。今回のバズによって、振付だけでなく実際に楽曲をフルサイズで聴いた人も多いことだろう。これまで彼らを知らなかった人たちに勉強の面白さが伝わったのであれば、それは彼らの目指した夢が現実になったということに他ならず、プロデューサーをはじめ多くの人の胸が熱くなったに違いない。
そして今年一番のダークホース――いや、ダークディアーはアニメ『しかのこのこのここしたんたん』(TOKYO MXほか)OPテーマ「シカ色デイズ」だ。この曲の驚異的なところは、アニメ本放送の放映開始時期である7月以降ではなく、それより前の5月28日に投稿されたOPテーマの公式イントロ耐久動画がバズった点である。〈しかのこのこのここしたんたん〉という単語を連呼しながら主人公・虎視虎子がスカのリズムを刻み踊るシュールな映像が国内だけでなく海外でも流行。同日にYouTubeでも公式のOPテーマイントロ1時間耐久動画が投稿され、こちらも公開1カ月で500万回以上再生されるという前例のない快挙を成し遂げた。
@shikanoko_pr テレビアニメ「#しかのこのこのここしたんたん」 OPテーマイントロ耐久 #しかのこ #mydeerfriendnokotan #anime#animeopening#animesong#animegirls #animedance #animetiktok #animeedit ♬ シカ色デイズ (イントロ耐久60秒バージョン) - 鹿乃子のこ (CV.潘めぐみ) & 虎視虎子 (CV.藤田 咲) & 虎視餡子 (CV.田辺留依) & 馬車芽めめ (CV.和泉風花)
バズったダンスがアニメOP映像ではまったく使われていないというのは多くあるケースだが、通常宣伝的視点で考えると、OP映像にダンスするシーンが含まれているのであれば、その部分を先行公開という形で投稿してもおかしくないだろう。しかし、3話の挿入歌の本編映像から切り取るという形で耐久動画として公開したセンスも非常に巧み。もちろん偶然の要素も大きいとは思うが、アニメ公式サイドのユーモアさとフットワークの軽いSNS戦略によってここまでのバズに引き上げられたのは間違いない。ちなみに、TikTokでの公式耐久動画は6月21日時点で1000万回再生を突破したが、たった15秒の動画にもかかわらず視聴完了率は0%だった模様。こういった部分を笑いに昇華できるのも1つの強みである(なお、7月18日には16.2%まで増加)。
TikTokの再生回数がキセキの1000万回突破!!
視聴完了率は衝撃の0%!!!アニメ #しかのこのこのここしたんたん の
視聴率は100%をめざして…🦌🦌📺7月7日(日)より放送開始📺https://t.co/vDRfBTt1v1 pic.twitter.com/nLUeCXKOHZ
— 『しかのこのこのここしたんたん』公式 (@shikanoko_PR) June 21, 2024
2023年のヒットソングと比較すると、振付師の動画から端を発し、K-POPアイドルなどのインフルエンサーまで巻き込んだYOASOBIの「アイドル」、アニメ『【推しの子】』(TOKYO MXほか)自体の流行の影響が根強いB小町の「サインはB」、替え歌がきっかけでバズった『マクロスF』(MBS/TBS系)のランカ・リー=中島 愛「ニンジーン Loves you yeah!」といった過去のバズ経緯は、ここに挙げた楽曲にはどれも当てはまらない。そういう意味ではアニソン的には新たなバズの形とも言える。バズについての知見もそれなりに増えてきたのか、兆しが見えたタイミングでの側タイプは昨年以前と比べると比較的早くなっているように感じられる。
@oshinoko_anime_official TVアニメ【#推しの子】公式tiktok開設✨アイ役 #高橋李依 さんによる #サインはB ♬ サインはB - TVアニメ【推しの子】公式
2024年は他にもアニメ『【推しの子】』第2期挿入歌「POP IN 2」や、ゲーム『ゼンレスゾーンゼロ』の同人キャラクターソング「モエチャッカファイア」など、アニメ/ゲーム関連でのTikTokバズが豊作な1年だった。2025年もTikTokでのヒットを積極的に仕掛ける作品、そして海外から逆流入するものなど、様々な方面から流行が押し寄せてくるに違いない。全世界コンテンツとなったアニソンのバズり力は2025年も要チェックだ。
@oshinoko_anime_official 【推しの子】B小町が POP IN 2踊ってみた🌟 #推しの子 #oshinoko ♬ POP IN 2_推しの子公式 - TVアニメ【推しの子】公式
※1:https://febri.jp/topics/mashle_2_op_making_3/
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