material clubでトライし続ける小出祐介を観る楽しさ 5人の素晴らしい演奏に触れた初ツアー東京公演
アンコールでは小出が「やれる曲は本編ですべてやり終わりました。なので、新人らしく、同じ曲をもう一回演奏させていただきます」と、1曲目の「水のロック」をもう一度プレイ。曲の間中コールや歓声がシンガロングが飛び交う、熱狂的なエンディングになった。その曲をやる前に、小出は「今日で終わりなのは寂しい」「誰かイベントとか呼んでほしい」「だから皆さん、何かに書いてください」と呼びかけた。
「今日『VIVA LA ROCK』の出演者発表があったでしょ? みんな、有泉さんや鹿野さんのところに、メンションを飛ばしてください」と、フェスのプロデューサーと社長の名前まで出す。「アカウントが凍結されるぐらいまでお願いします」。
でも、どこかからオファーがあったところで、メンバーのスケジュールを揃えるの、相当大変でしょうに。簡単にパッと全員集まれるバンドではないでしょうに。と思ったが、自分も、もっとこのバンドのライブを観られる機会がほしいし、今ここにいない人たちにも観てほしい、という気持ちは、確かにある。この5人が生で鳴らす音が、期待以上に素晴らしいものだったからだ。1stアルバムにも参加した小出、福岡、成田以外の人選に関しては――これもインタビューで小出から訊いたのだが――ギターのキダ モティフォは、小出が赤い公園のラストライブのサポートをした時、彼女と横並びでギターを弾いて、「こんなに上手い人いるのか!」と衝撃を受け、何かのきっかけでまた一緒にやれないかな、と思っていたから、オファーをしたとのこと。
YUNAに関しては、ドラムの知り合いが全然いないということでそれを堀之内大介に相談したところ、即答で推薦されたという。CHAIでのプレイだけではないいろんなドラムを叩けるから、material clubには合ってると思う、と言われたそうだ。僕も、彼女が羊文学のサポートを始めた時に「えっ、こんなドラムも叩ける人だったのか!」と驚いたので、それは頷ける。
実際にYUNAは、CHAIの時とも羊文学の時とも異なる、material clubのグルーヴのドラムを楽しそうに叩いていた。キダ モティフォの演奏も、確かにすごい。エレキギターど真ん中なプレイから「えっ、それギターが担う音域?」というあたりまで、演奏の範囲がとにかく広いし、リズムのキレが気持ちいい。福岡が1ステージ通してベースを弾きまくる様を目の当たりにできたのも、久しぶりで嬉しかった。
成田の安定感は言うまでもないし、Base Ball Bearではやらないことや、やらなくていいことに、各楽曲でトライし続ける小出を観るのが楽しいのも、言うまでもない。なので、またいつかライブを観られることを、楽しみにしています。
余談。Base Ball Bearの次のアルバムは10作目なので、大傑作を目指したい。だからその前に、何かワンクッション置きたい――バンドのミーティングで、そんな話になった時に「だったらmaterial clubやれば?」と提案したのは堀之内で、「いいじゃんいいじゃん」と後押ししたのは関根史織だったそうだ。で、それをまったく考えていなかった小出も「言われてみれば確かに今かも、今やらないとさらに先になっちゃうし」と、その気になったという。
その功労者のお二人、ちゃんと観に来ておられました。しかも関根さんは、開演前にグッズのトートバッグを入手していた。自分のバンドのメンバーがやっている別バンドのグッズ、欲しいもんなんですね。微笑ましいものがありました、とても。
※1:https://www.diskgarage.com/digaonline/interview/208464
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■『material club Tour「物質的」』
2024年11月29日(金)東京・渋谷CLUB QUATTRO
<セットリスト>
1. 水のロック
2. 00文法
3. Amber Lies
4. まだ全然好き
5. Twilight Dance
6. New Blues
7. 告白の夜
8. Curtain pt.2
9. 閉めた男
10. beautiful lemonade
11. WATER
12. Fear
13. Naigorithm
14. 恋の綾
15. Altitude
16. Nicogoly
EC. 水のロック