Ado「自分を好きになるために一歩を踏み出せた」 覚悟を歌い続けた2024年最後の新曲「Episode X」を語る
Adoの声と大門未知子のあり方が重なり合う〈そう 私に失敗はない〉
――そういう「初夏」みたいな曲があった次に、この豪華タッグを持ってくるというのもAdoさんらしいなと思うんですよね。新曲「Episode X」がリリースされました。連続ドラマの主題歌となった「阿修羅ちゃん」以来の『ドクターX』とのコラボ、そして今回はAyaseさんの提供曲ということで、トピックが非常に多い曲になっていますが、ご自身ではどんな曲になったと感じていますか?
Ado:まずは純粋に、『劇場版ドクターX』という作品にとてもふさわしい楽曲になったかなと思っています。Ayaseさんとのコラボというところにも注目いただいていますが、それ以上にそのAyaseさんに書き下ろしていただいたこの曲が、この一つひとつの言葉が、本当に(『ドクターX』の)大門未知子という主人公をものすごく鮮明に描いていて。私自身、お気に入りの歌詞のひとつでもあるのですが、〈そう 私に失敗はない〉というフレーズ。私の声ではありますが、大門未知子が残している言葉にも聞こえて。
――ドラマ版で「阿修羅ちゃん」が主題歌になったのが3年前ですよね。すごく昔のようにも感じるんですけど、今再び『ドクターX』の世界のなかとリンクして歌うということについては、何を思いましたか?
Ado:それこそ、当初お話をいただいた時は「私!?」と思いましたし、本当に驚きでした。でも、当時ドラマの主題歌として「阿修羅ちゃん」をNeruさんに書き下ろしていただいたのも本当に自分の人生の転機になりましたし、私自身、大門未知子という主人公に背中を押されたり、「こういう気持ちで行ってもいいんだ」と考えさせられる部分もすごくありましたので、今回引き続き劇場版も担当させていただけるということは純粋に嬉しいですし、3年前からまた時が経って大人になった私の歌が作品を通して『ドクターX』の魅力のひとつになれていたら嬉しいなと思います。
〈うっせぇわ〉を巡るAyaseとsyudou、そしてAdoの物語
――大門未知子というのは強烈なキャラクターですけど、Adoさんご自身と重なると感じるところもあったりするんですか?
Ado:私自身、普段は弱気と言いますか、遠慮しがちで。自分のなかでことを収めてしまうというか、あまり立ち向かえるような人間ではありません。だからこそ、彼女の大きく出るところやものすごく強い意志を持った姿には憧れがあって。でも、自分で言うのもアレなんですけど……私自身の内に秘めている部分としてはすごく紐付けられる部分もあるんじゃないのかなって。特にステージ上での自分とかは、大門未知子に似ている部分もあったりすると思うんです。振り返ってみると、「絶対にこのライブを成功させるぞ」「見てろよ」みたいな強さは、たしかに重なるかもなと思います。
――この「Episode X」という曲のすごいところはまさにそこで。Ayaseさんの書いた歌詞にはもちろん大門未知子もいるけど、同時にAdoもすごくいるというか、Adoを感じるものになったなって思うんです。
Ado:本当にどっちにも重なるなと思います。私自身にもものすごく重なりますし、大門未知子という主人公にもとても重なる感じがします。
――Ayaseさんもコメントで「大門未知子のバックグラウンドとAdoさんに重なる部分があるんじゃないか」というふうにおっしゃっていましたし、実際〈うっせぇわ〉っていうワードが出てきたりもしますしね。
Ado:初めて聴いた時は「うわあ、持ってきたか!」と思って、すごく面白かったです(笑)。それこそ「うっせぇわ」を書き下ろしていただいたsyudouさんとAyaseさんのおふたりは、実際にすごく仲良しだそうで。だからこそ、syudouさんはAyaseさんの作られた楽曲のタイトルをご自身の曲に入れたりされているのをいちリスナーとして見ていたので。今回、Ayaseさんが私の曲で〈うっせぇわ〉という言葉を書く、その強烈な部分にも「うわ!」と驚きましたね。それを私が歌うことで、聴いている方もドキッとなったらいいな!と思います。
――歌っていくうえではどういうイメージをもって臨みました?
Ado:大門未知子という主人公を私の歌に投影しましたし、でも同時に私のなかの泥臭い部分と言いますか、這い上がっていく感じもありますし。〈誰にも采配の権利など無い〉という言葉も、私が実際に思っているようなことをそのまま言葉にしてくださった感じがしました。「こういう曲にしたい」みたいなご相談はしていなくて、お任せしたのですが、私自身のこともちゃんと汲み取ってくれたのかなと思いました。私自身としても大門未知子としても駆け抜けていくような姿、もがきながらも自分なりに駆け抜けていく姿を、聴いている皆さんには想像してもらえたら嬉しいです。
――冒頭の部分は、暗い気持ちから始まっていくじゃないですか。でも、そこからだんだん曲が進むごとに気持ちが変わっていって、テンションも上がっていって、それに伴ってAdoさんの歌もどんどん強くなっていく。その展開がすごく歌詞にも合ってるし、曲にも合ってるし、見事だな、というふうに思いましたね。
Ado:そうですね。おっしゃられたように、イントロ部分がちょっと暗めと言いますか、ダウナーな入り方で。でも〈このままじゃ〉のあとにバッと雰囲気が変わって、ちょっとドロッとした淀んだ空気が漂うような感じになって。そこで自分の葛藤だったり、大門未知子のなかの人間臭さだったり、いろんなものがぐちゃぐちゃになっている様子を歌で体現したいなと思いました。そこから音が静かになって、一気にサビでバーって広がるような感じとかも、心情の変化っていう部分ではものすごく面白いなと思いました。こんなにも心情の変化の感じがわかりやすいというか、光のほうへ走っていく感じが、私自身も聴いていて素敵だなと感じています。