『アニポケ』新シリーズ主題歌、“令和感”の正体とは? トレンドを取り入れたアプローチを徹底分析
すでに楽曲紹介時に少し触れてはいるが、まずは「流行音楽ジャンルを積極的に採用している」ことが挙げられる。子供向けの作品の主題歌は流行の音楽ジャンルをそれほど意識しないものも多いが、新シリーズの『アニポケ』はK-POPアーティストの起用、邦楽の最前線でヒット作を飛ばすGigaとTeddyLoidの起用、ネットシーンでヒットを生んだクリエイターとのコラボなど、これまでとは異なる複数のアプローチで主題歌を構成している。そういった新鮮さが、“令和感”の土台となっているのは間違いないだろう。
そしてこれらの音楽的アプローチの土壌として、『ポケットモンスター』自体がここ数年で我々の日常に根付くほど様々な展開が行われているのも大きい。原作であるゲームはもちろん、『Pokémon Sleep』などのスマホアプリ、カードゲーム、Webアニメシリーズ『POKÉTOON』といったメディアミックスはもちろんのこと、企業や自治体とのコラボなど、日常生活において『ポケモン』に関する情報を目にしない日の方が珍しくなった。その中でも特に音楽的に大きい施策が、初音ミクとコラボした『ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE』(以下、『ポケミク』)である。Eve、じん、ピノキオピー、八王子P、syudou、Kanariaといった著名なボカロPたちが、歴代の『ポケットモンスター』のゲームサウンドをサンプリングしたオリジナル曲を制作。「ピッカーン!」を手掛けたGigaとDECO*27もこの企画に参加している。これにより作品との繋がりができたことで、『アニポケ』で起用された際にも彼らの音楽が違和感なく視聴者に受け入れられた可能性が高い。また、初音ミクとコラボしたことで、それまでの『アニポケ』の可能性の限界、枠のようなものが取り払われ、「こんなこともできるんだ!」と思わせるような広がりができたことも“令和感”を支えた1つの要因だと言えよう。
最後に、これは“令和感”の正体としては身も蓋もない話になるが、主題歌を「サトシが歌っていない」というのもあるだろう。上述したように様々なアーティストが『アニポケ』の楽曲を歌っているとはいえ、『アニポケ』の音楽として、「めざせポケモンマスター」「ライバル!」「タイプ:ワイルド」といったサトシ(CV:松本梨香)が歌唱する楽曲を多くの人は思い浮かべるに違いない。そのため、『アニポケ』主題歌=サトシ(松本梨香)のイメージが先行していた節もあるのではないだろうか。それが新シリーズになり、主人公が変わったことで従来のイメージが強制的に外れたことで新たな試みに挑戦できる環境が整ったと言えると思う。
つまり、流行音楽の積極的な採用、『ポケミク』をはじめとした『ポケットモンスター』自体の広がり、新シリーズという舞台を有効活用したドラスティックな変化。これらが掛け合わさったことで、“令和感”のある主題歌が次々と生まれたのである。
テラスタルのように様々なタイプになれる可能性を秘めた『アニポケ』主題歌。リコとロイの旅が進むにつれて、これからも次々と名曲が生まれていくのだろう。今後も『アニポケ』から目が離せない。
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