トゲナシトゲアリ、アニメから誕生したバンドのその先へ ライブで示した『ガールズバンドクライ』の続き

トゲナシトゲアリ、アニメのその先へ

 「今日はアニメのストーリー演出はありません!」

 11月2日にTOKYO DOME CITY HALLにて行われた、テレビアニメ『ガールズバンドクライ』の劇中バンド・トゲナシトゲアリの『3rd ONE-MAN LIVE “咆哮の奏”』。本公演を語るうえで、まず、アニメの最終回の舞台でもある川崎・CLUB CITTA’で行われた『2nd ONE-MAN LIVE “凛音の理”』について触れておきたい。前回はアニメ放送終了後初のワンマンライブということもあり、作品を振り返るような構成になっていた。アニメ第1話の冒頭が映し出された後にオープニング主題歌「雑踏、僕らの街」が演奏され、映像を挟みながらストーリーに沿ってライブが展開されていき、最終回のライブシーンを思わせる「運命の華」がアンコールで披露されるーーという、アニメと現実がリンクする内容だったのだ。

 そして、今回のオープニングを飾ったのは、まさにその「運命の華」だった。まるで、ここから最終回のその先が描かれていくような始まり方に期待が募っていく。理名(Vo/井芹仁菜役)のパワフルなボーカルと、夕莉(Gt/河原木桃香役)、朱李(Ba/ルパ役)、活動休止中の美怜(Dr/安和すばる役)と凪都(Key/海老塚智役)に代わるサポートドラマー&キーボーディストが一丸となって奏でる分厚いサウンド。一気にテンションの高まったオーディエンスが〈1、2、3、4!〉と一緒になって叫び、理名、夕莉、朱李がステージ中央に集まって呼吸を合わせてフィニッシュさせると、モニターに“咆哮の奏”の文字が浮かび上がった。「“咆哮の奏”ということで、皆さんの大きな声が聴けるかと思うと楽しみです!」と話す理名が、続けて告げたのが冒頭の言葉である。

 アニメの演出無しとは、音楽とパフォーマンスで勝負するということ。「現在の私たちを感じてもらえたら嬉しいです!」と宣言し、熱を込めて「闇に溶けてく」「碧いif」をプレイする彼女たちからは、現実世界を生きるバンドとして目の前の一人ひとりに向き合い、しっかりと音を届けていくのだという意志が感じられた。アッパーチューンの後は、ミディアムナンバーの「蝶に結いた赤い糸」でクールダウン。盛り上げるところは盛り上げ、聴かせるところは聴かせる。曲調やパフォーマンスに緩急をつけて観る者を飽きさせない点からも、ワンマンライブや野外ロックフェス『ATF 25th presents BAYCAMP 2024』出演など、短期間でライブ経験を重ねてきたからこその彼女たちの成長ぶりが窺えた。

 「偽りの理」「黎明を穿つ」とアニメ放映前に発表された楽曲も披露した後、MCでは『2nd ONE-MAN LIVE “凛音の理”』の話題へ。前回のライブでは夕莉による「空の箱」の弾き語りが披露されたのだが、「あれ、またやってもらいましょうかね?」と理名が促すと、たちまちフロアから喜びの声が上がった。「めちゃくちゃ緊張したんですよ……」と振り返りながらギターを爪弾く夕莉にピンスポットが当たり、そこから彼女の凛とした歌声が響きわたる。一節を歌い上げた後にボーカルが理名へと移り、そのままバンド編成での「空の箱」へと繋がっていった。

 もうひとつ、前回はステージ前面にパネルが置かれていた。新川崎(仮)の楽曲では朱李がパネルの後ろでプレイすることで、「新川崎(仮)にはベースがいない」ことを視覚的に表現していたのだという。しかし、「空の箱」にしても、続いて披露された「声なき魚」にしても、今日は3人とも姿が見える状態で届けられていった。「声なき魚」では夕莉と朱李が互いの場所へと行き来し、向かい合って楽しそうに演奏する一幕も。そして、楽曲は「視界の隅 朽ちる音」へ。アニメの演出無しとは言ったものの、この曲順に胸を熱くさせられた人は少なくないだろう。

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