パリス・ヒルトンは“お騒がせセレブ”から真のポップスターに 紆余曲折の人生、シーアも評価する歌手としての輝き
パリス・ヒルトンが18年ぶりにニューアルバム『Infinity Icon』をリリースした。今となってはパリス・ヒルトンがシンガーとしてアルバムを出していたと知る人がどれほどいるのかも不明だが、一世を風靡した“ヒルトンホテルのお騒がせ令嬢”が2006年に発表したデビューアルバム『Paris』は全米アルバムチャートで最高6位を記録。アルバムからは彼女のテーマソングとも言える「Stars Are Blind」というヒット曲も誕生し、このアルバムが今でも最高のポップレコードの一つであるのは間違いない。そのアルバムのリリース時には、来日して記者会見を行ったほど本気でシンガーへの転身を考えていた彼女。その後のDJとしての活動や単発でのシングル、フィーチャリング参加を通じひっそりと音楽活動を続けていくこととなる。
そして2022年の大晦日にマイリー・サイラスのTV特番『Miley’s New Year’s Eve Party』(NBC)で一緒にステージ共演した際にシーアから言われるまでは、本人も2ndアルバムを制作するとは、まったく思いも寄らなかったそうだ。同イベントの帰り道、マイアミからロサンゼルスへと向かう飛行機の中で、本人曰く「ポップミュージックを救うため」に本格的に音楽シーンに戻ることを決意する。その数時間後にシーアとの契約を締結。制作はパリスの自宅スタジオで行われている。結婚して今や母となった彼女にとっても、子育てしながら、そしてこれまで築いてきたビジネス帝国をうまく両立しながらも自宅で進められたアルバム制作は、とてもスムーズで快適だったという。
シーアといえば、自身の「Chandelier」やデヴィッド・ゲッタとの「Titanium」、ケンドリック・ラマーとの「The Greatest」をはじめ、多数のヒットを放ってきたシンガーソングライター。2024年5月に発表された彼女の最新アルバム『Reasonable Woman』にも、本作に収録されたパリスとの共演シングル「Fame Won’t Love You」が収録。アデルやケリー・クラークソンを手掛けるグレッグ・カースティンが共作・プロデュースを手掛けた同曲は、如何にもシーアといったドラマチックな歌とメロディが特長だ。
サウンドからは80年代ポップスの面影も。思わずライオネル・リッチーの当時のヒット曲を思い出してしまったのだが、ご存じのようにライオネルは、パリスと一緒にリアリティ番組『シンプル・ライフ』に出演していた幼馴染みの親友ニコール・リッチーの父親……というので筆者の考えすぎだろうか。とはいえ、このノスタルジックなポップス調というのが、このアルバムの大きな特長であるのは間違いない。アルバム全体に漂うノスタルジックなリバイバル感は、正しくY2Kの顔とも言えるパリスにうってつけ。ベストなタイミングと方向性の復帰作という気がする。