パクユナ、路上ライブを経てシンガーとしての新章へ ありのままの孤独を曝け出した歌に至るまで

パクユナ、孤独を曝け出した歌に至るまで

新鮮なメロディで歌った“自己表現の原点”

――今年の5月に配信リリースされた「招待状」は、ポップだけどちょっと憂いのあるメロディラインがユナさんに似合っていて素敵です。作編曲は青木慶則さんで、歌詞は青木さんとのコライトということですが、どんな制作でしたか。

パクユナ:青木さんから「この中から作りたい曲を選んでください」ってメロディだけのデータが5パターンくらい送られてきて、私が選んだのが「招待状」のメロディでした。今までの私の曲にはなかったタイプのメロディラインで、すごく新鮮な気持ちで歌わせていただきました。青木さんのご自宅のスタジオで一緒に作りましたね。

【 Music Video 】招待状 / パクユナ

――曲のモチーフになっている“スケッチ旅行”というのは?

パクユナ:小中学校の美術の先生が授業の延長で放課後に美術教室を開いていて、そこに私は小学1年生から中学3年生までずっと通っていました。その先生が毎年2泊3日でスケッチ旅行を企画してくれて、三重県の大王崎という街に行くんです。そこは絵描きの街と言われているくらいスケッチをしている人がたくさんいて、私にとっては第二の故郷というくらい想い入れのある場所なんです。この「招待状」のメロディを聴いたときに直感で、いつか曲にしたかった大王崎のことを書きたいって思ったんです。

――メロディに乗せて、キラキラとした思い出を〈今の私からの招待状〉として歌っているのは、絵を描く行為が自己表現の原点として今歌うことに繋がっているということですか。

パクユナ:すごく繋がっていると思います。小学生の時から私は本当に独特な絵を描くことが多くて。例えば、魚の絵を描くときに1匹の魚の中に小さな魚をびっしり敷き詰めたような絵を描いたり、雲を緑色で描いてみたり。そういう自分にしかない自己表現は音楽にも繋がっていると思います。スケッチ旅行では先生が引率してくれますが、基本的にはすごく自由でどこに行っても何をしてもよかったので、魚を捕まえたり、猫に触ったり、発泡スチロールに乗って海に浮かんだり、岩場をつたって洞窟に入ったり……今考えると危ないこともして先生に「お前ら何しに来たんや!」って怒られたりしてたんですけど(笑)。そんな一つひとつの全てが全部楽しかったんです。なので「招待状」は歌っていてもすごく幸せな気持ちになる曲になりました。

「強がって歌うよりも、本当に弱い部分まで表現した方が人に届く」

――10月1日に配信リリースされた「薄明」も、作編曲は青木さん、歌詞は青木さんとのコライトですが、また雰囲気の全然違う重厚感のある仕上がりで、生きていく上での孤独に向き合う1曲になりました。

パクユナ:はい。この曲はメロディを聴いてすぐ、青木さんに「孤独をテーマにした曲が書きたい」とお伝えしました。

――〈居場所がなくて 耐えきれなくて〉というフレーズもありますが、そういう想いがあるからこそユナさんは歌っているのかなとも思いました。

パクユナ:そうですね。この曲自体、学生時代の私の闇の部分を歌っていて、人と馴染めないとか、居場所がないような気持ちを経験したからこそ歌える曲だと思いますし、同じような経験をしている人に届いてほしいです。1人でどうしようもない孤独を抱えた人を包み込んであげるように歌っていきたいなと思います。

【 Music Video 】薄明 / パクユナ

――そういう意味では、最初に作った「花道」にも通じる“孤独”をテーマにしながらも、路上で歌って、聴いてくださったたくさんの方たちとの経験も踏まえて、ご自身の想いやメッセージ性が加わった曲になったんじゃないですか。

パクユナ:本当にそうですね。「花道」は孤独を歌いながらも、「負けたくない」とか「前向きに生きていたら明日は見えるから」というような希望を与える曲だったんですけど、今回の「薄明」に関しては自分の弱さを隠さずに「この弱ささえも自分なんだ」という想いを込めています。そういう自分との新しい向き合い方、違う視点から生まれた曲です。今までの私だったら、「今は暗いところにいるけど、光が見えるなら手を伸ばせば届くから頑張ろう」みたいな曲が多かった。でも今は、もちろん孤独は寂しいんだけど、人と接することで疲れてしまった弱さを無理せず曝け出せるようになってきたんだと思います。アレンジャーさんや鹿野さんからも私の曲に対するアドバイスをいただく中で、自分との向き合い方も変わってきました。なりたい理想の自分を強がって歌うよりも、自分の本当に弱くて汚い部分まで全部表現しちゃった方が人に届く歌になるのかなって。最近はそういう気持ちが強くなりました。

――だからこそ「薄明」は聴き手とまた新たな関係性が始まるかもしれない、そんな1曲になりましたね。

パクユナ:そうですね。自分自身がいつの間にか音楽の中で取り繕った表現をしていたのかもしれなくて、それが自分でも苦しかった。けど、こうして曝け出すことで聴いてくださる方にもより響くものになっていたら嬉しいですし、楽しみです。

――11月10日には東京キネマ倶楽部にてワンマンライブ『ma maison』が開催されますが、どんな意気込みですか。

パクユナ:この日はとにかく今までにない自分を表現したいと思っています。今年1月のワンマンライブ(3rd Oneman live『ADVENTURE』)は全部自分で考えて作っていたステージだったんですけど、今回はいろんなスタッフさんやプロデューサーの方に関わっていただいて、新体制でお届けする初めてのライブです。なので、タイトルも「新しい我が家」という意味で『ma maison』とつけました。生バンドでお届けするのも初めてですし、新曲も披露したいし、新しく生まれ変わったパクユナを観てもらうというのが今回の一番の醍醐味だと思いますので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。

――最後にパクユナさんの音楽活動において大切にしていることを教えてください。

パクユナ:歌うときに一番大切にしていることは、とにかく歌詞を伝えること。言葉の一つひとつ、全てに命を吹き込むくらいの感情で歌うようにしています。活動においては、感謝を忘れず、「こうして応援してくれている人たちがいるから今の自分がいるんだ」ということを常々考えるようにしています。人との出会いは当たり前じゃないし、いつ別れがくるかもわからない。だからライブで会える人にも、いつも悔いのないように歌で気持ちを伝えることを大切にしています。

パクユナ「薄明」
パクユナ「薄明」

◾️リリース情報
パクユナ「薄明」
2024年10月1日(火)Digital Release

◾️ライブ情報
ワンマンライブ『ma maison』
日程:2024年11月10日(日)
会場:東京キネマ倶楽部

パクユナ オフィシャル HP

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる