“アーティスト×お笑い芸人”対バンは新しいライブ形式として定着? 相乗効果で生まれる特別な熱量

 従来、音楽アーティストの公演では対バン相手も同じ音楽アーティストであることがほとんどで、お笑い芸人の場合も同様だが、上記のようなアーティストとお笑い芸人の“対バン”が開催されることは、どのような意義をもたらすのだろうか。

 “音楽”のライブも“お笑い”のライブも、ステージの目の前にオーディエンスが集まり、楽曲やネタをダイレクトに届けることができるという点で、演者の創作活動の受け取り方、感じ方が似ているように思う。精魂込めて制作された楽曲の生演奏を、稽古を重ねた珠玉のネタの生披露を、スマートフォンの液晶画面や映画館のスクリーンのようなフィルターなしに“ナマ”でキャッチできるのは、エンターテインメントを最大限に楽しめるライブの醍醐味であり、観客はその喜びや感動の体験を受け取った熱量そのままに、歓声や拍手という手段で演者に返すことができる。ダイレクトにリアクションを受け取れることは、演者にとってもまた日々の努力が報われる幸せな瞬間であろう。

 そしてもうひとつ。“音楽”にも“お笑い”にも基本的にはルールがなく、作り手側にも受け取り手側にも自由であることも共通する要素だ。楽曲、歌詞、演奏。言葉、表情、小道具。生身の演者から放たれる楽曲やネタは無限の可能性を秘めており、それらを肩ひじ張らずにありのままに感じ取ることができるという点で、“音楽”と“お笑い”という別のカルチャーを横断する敷居が低くなっているように思う。

 このような親和性から“音楽”と“お笑い”のかけ合わせは相性が良く、結果的に上記のような対バン公演において互いのカルチャーを愛する新規ファン獲得に向けたアプローチへとつながっていくのだ。

 “音楽”も“お笑い”も、YouTubeやライブ配信アプリ、SNSなど多様なツールを駆使した自由な創作活動が許容されている令和の今。いずれも万国共通のエンターテインメントであり、日本においてインバウンド需要が高まる昨今、海外からの観光客と思しき者たちが通りすがりのライブハウスに足を運んでいく様子をよく見かけるようになった。日本語の歌詞やボケのワードの意味が十分に伝わらずとも、ダイレクトに届けられる演者のパフォーマンスとライブハウスの熱気は国境を越えていくだろう。『YATSUI FESTIVAL!』や『KOYABU SONIC』などアーティストとお笑い芸人がクロスオーバーするフェスは市民権を得ており、『エガフェス』『LOVE IT! ROCK』『DAIENKAI』など新時代の大型イベントも増えてきている。“音楽”と“お笑い”の垣根を越えた公演がより一層定着していくと、日本のカルチャーの未来がおもしろくなりそうだ。

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