ときのそら、アイドルらしさを貫く決意と新章への挑戦 初アニメ主題歌で発揮した優しい表現力

ときのそら、貫く決意と新章への挑戦

 シーンの黎明期から活動し、VTuberのアイドル/音楽活動の歴史を切り開いてきたホロライブ0期生 ときのそら。彼女が最新シングル『おかえりなさい』を9月11日にリリースした。今回の楽曲は、主人公の小杉タクマと家事ロボット・ミーナとの夫婦生活を描くTVアニメ『僕の妻は感情がない』(TOKYO MXほか)のオープニング主題歌。彼女にとって記念すべき初めてのアニメタイアップとなる。アニソンとして作品の魅力に寄り添った「おかえりなさい」の制作エピソードや、7周年をテーマにしたカップリング曲「ラッキーセブンスホイッスル」に込めた思いを聞いた。(杉山仁)

新しい歌い方を模索したチャレンジ

――最新シングル曲「おかえりなさい」はTVアニメ『僕の妻は感情がない』のオープニング主題歌になっています。タイアップが最初に決まったときの感想を教えてもらえますか?

ときのそら:アニメの主題歌を歌うのはずっと夢だったので、まずは選んでいただけてすごく嬉しかったです。でも同時に、VTuberやアイドルとして活動してきた私が原作好きの方にも認めてもらえるのかな、という不安もありつつという感じでした。

――そらさんは以前からずっと「VTuberがいろんな人の日常に溶け込んでほしい」という話をしていたと思うのですが、アニメの主題歌はまさにそのひとつですね。

ときのそら:そうですね。バーチャルな存在の私たちでもそういう曲を歌えるんだよと認めてもらえる時代になってきたことがすごく嬉しいです。

――ちなみに、そらさんが好きなアニメの主題歌はどんなものですか?

ときのそら:いっぱいありますけど……例えば『シャーマンキング』(テレビ東京系)のオープニングテーマだった林原めぐみさんの 「Over Soul」とかですね。疾走感が作品の雰囲気と合っていましたし、歌い出しの〈よみがえれ〉も含めてすごくキャッチーでワクワクするような感覚でした。最近の曲だと『転生したらスライムだった件』(日本テレビ系)も好きで、私もオープニング主題歌をカバーしたりしています(SorAZでの「Storyteller」)。歌詞を読んでも作品をイメージしやすいところがすごく好きですね。あとは『マッシュル-MASHLE-』(第2期「神覚者候補選抜試験編」/TOKOYO MXほか)オープニングテーマになっていたCreepy Nutsさんの「Bling‐Bang‐Bang‐Born」。頭に残りやすくて、映像もすごくインパクトがあるような曲が好きです。どの曲も作品とリンクしている感じがいいなと思います。

――『僕の妻は感情がない』にはどんな魅力を感じましたか?

ときのそら:最初に原作を読み始めたときは単純にSF的なラブコメなのかなと思っていたんですけど、全巻読ませていただくとそれだけではなくて、登場人物たちの葛藤がすごく丁寧に描かれた作品だと思いました。それぞれの話数に深いテーマが込められているし、私たちが生きている間に訪れるのかどうかはまだわからないですけど、いずれ訪れそうなロボットとの共存についてのお話になっていて。本来感情がないはずのロボットの葛藤も描かれているので、作られた存在にも感情のようなものがあるという部分も含めて、すごく面白かったです。

ときのそら「おかえりなさい」【Official Music Video】

――今回の「おかえりなさい」はどんなふうにでき上がっていったんでしょう?

ときのそら:今回、アニメ主題歌として「この曲で行きましょう!」となったときは、「私にできるのかな?」と思いました。というのも、自分では元気で明るい楽曲が得意なタイプだと思っていたので、自分だけではなかなか選ばない曲調というか、「私が歌ってちゃんといいものになるのかな?」と思っていたんです。

――でもアニメの主題歌ということで、背中を押してもらえた部分もあるんですね。

ときのそら:はい、新しいチャレンジだったと思います。今回ディレクターさんからは「いつも以上に優しく歌ってほしい」と言われました。「もっと力を抜いていい」って。

――作品で描かれているのは、主人公のタクマとミーナの日常ですもんね。

ときのそら:そうですね。私はどんな曲でも強く歌ってしまう部分があるので、きっと柔らかい雰囲気の曲にしたかったんだと思います。あと、「おかえりなさい」は1番と2番でメロディの感じが少し違っていて、私は2番がすごく気に入っています。ただ、リズムが独特なところは歌うときに難しい部分もあるので、弾むけれどもなるべく柔らかく歌うことを意識した気がします。

「経験を積んだことで“今ならできるかも!”に変わった曲が増えている」

――歌詞で好きなところはありますか?

ときのそら:〈ココロのセンサーがほら/アップデートしちゃうな〉というところですね。この曲って、私が好きで聴いてきたアニメ主題歌と同じで、作品の内容とリンクした「アニメのための曲」になっていると思うので、登場人物のミーナちゃんのイメージが伝わるような歌詞はすごく大切に歌いました。

――実際、「おかえりなさい」ではミーナの気持ちが表現されているように思います。

ときのそら:私も歌詞を見たときに、「これはミーナちゃん視点の歌なんだな」「ミーナちゃんらしさを表現できたらいいな」と思っていました。例えば、〈デジタルなゼロとイチ/その中間地点は/(情報がありすぎちゃって)/シャットダウン!〉というところは、何かの中間地点でパニックになったりすることって人でも同じだと思ったので、両方に共通する感覚として大切に歌おうと思い、何パターンも録りました。今回はそんなふうに、ミーナちゃんの気持ちを歌で表現するという意味でも、歌い方はいつもの自分じゃない方がいいだろうなと思っていたんです。

――なるほど。他に歌の面で工夫したことはありますか?

ときのそら:〈なんで なんで 一緒なんだろう〉という部分は急に表情を切り替えて優しく歌うのが大変で、一番時間がかかった気がします。全体的に、1番より2番の方が時間がかかった気がしますね。あと、この曲って私の中ではキーがちょっと低くて。いつもの自分の得意なキーで歌ってしまうと、どうしてもパワーが出て優しくならないと思ったので、もともとのキーよりだいぶ上げていたものを、レコーディング当日に「もうちょっとキーを下げたいです」とお願いして歌っていきました。

――作品に寄り添うことが大切なオープニング主題歌だからこそですね。以前も話していただきましたが、そらさんの音楽性や表現方法はどんどん広がっている印象があります。

ときのそら:私の中では同じテイストの曲を歌ってきているような感覚もあるんですけど、デビューしてから活動してきた年数も長いので、何かしら変化していきたいとはずっと思っていて。そういう意味で、「自分の中では大きく変わってはいないけれども、聴いてくれる人にとっては変化も感じてもらえる」というふうになっていたらいいなと思います。今回のようなチルっぽい曲もこれまでなくはなかったとは思うんですけど、オープニング主題歌としてアニメに寄り添えるような曲を目指していきました。そんなふうに、いろいろな曲を歌えるようになってきているのは、新しい曲に挑戦してもみんなが応援してくれることに加えて、自分の中で昔より自信がついたことも大きい気がします。初期の頃だったら「これは自分にはまだできないだろう」と避けていた曲でも、経験を積んだことで「今ならできるかも!」に変わった曲が増えていて。それが最近の曲調の幅の広さに繋がってきているんじゃないかな。

――「おかえりなさい」がオープニングで流れた映像を観ての感想はどうでしたか?

ときのそら:まずは「わぁー、アニメだぁー!」という感想で(笑)、自分の曲に合わせてキャラクターが動いていて、「すごーい!」って感動しました。あと、「ウッウー」というコーラスがオープニング映像と上手くはまっていて、「映像がつくとこんなに変わるんだ!」と思いました。一方で、自分のMVはリリックビデオに近いものになっていて、今までで一番言葉に注目できるものになっています。

『僕の妻は感情がない』ノンクレジットオープニング映像:ときのそら「おかえりなさい」 | My Wife Has No Emotion | Noncredit Opening Movie

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