フィロソフィーのダンス、型にとらわれない面白さ 伝統と革新を織り交ぜた『ライアーガール』での挑戦
5人体制での初アルバムとなった『NEW BERRY』から約4カ月、フィロソフィーのダンス7枚目のシングル『ライアーガール』が7月31日にリリースされた。ボカロP ニト。提供の表題曲では、矢継ぎ早な展開の上でスピーディなボーカルが歌い繋がれ、歌唱力に定評のあるフィロソフィーのダンスのさらに新しい表情が堪能できる。また、シングルには得意なディスコファンク調のカップリング曲からシャイトープ「ランデヴー」のカバーまで収録されており、ますます幅の広がった1枚と言えそうだ。そんなフィロソフィーのダンスにインタビューを行い、『ライアーガール』を通して実感したグループの強みを語ってもらった。(編集部)
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「まだフィロソフィーのダンスって新しい魅力を隠し持っている」(佐藤)
——メジャー通算2枚目のアルバム『NEW BERRY』から約4カ月ぶりのリリースになります。
佐藤まりあ(以下、佐藤):アルバムリリース後に静岡や京都で定期公演をやったんですけど、(木葭)ののと(香山)ななこがプロデュースしてくれて。セトリを組んだり、コーナーを提案してくれたり、2人が中心となって進めるライブを初めてやったんですね。いつもは私たちがどうしてもズカズカしちゃうところを、2人の知恵を使って楽しいライブを作ってくれて。もう新メンバーとは呼べない、本当に横一線のチームになったんだなって感じたし、アルバムも含めて、フィロソフィーのダンスの新しい切り口がいろいろ発見できて、すごく楽しみになって。他にも、2人から出てくる新しい何かをもっと形にできたらいいなと思ったし、フィロソフィーのダンスっていう型にとらわれない活動をしていきたいなと思った所存です。
——型というのは?
佐藤:フィロソフィーのダンスといえばこれだっていう楽曲が皆さんの中にあるし、私たちメンバーの中にもあると思うんですね。でも、それ以外にも「まだフィロソフィーのダンスって新しい魅力を隠し持っているかも」と、このシングルを通して感じました。新しいことに挑戦する面白みも知ることができて、これだけ長くやってきたので、柔軟にほどよく崩していくのもいいかなと思って。もっと自由な活動もしていきたいなと思います。
日向ハル(以下、日向):あんさん(佐藤)が言ったことと逆になってはしまうのですが、実はこの間、個人面談があって、スタッフさんと現状について話し合う機会があったんですけど、私は「いろんな曲に挑戦していくのはもちろん、今までやってきたジャンルももっと深掘りしていきたい」って伝えて。前回アルバムをリリースして、フィロソフィーのダンスとは何だろうっていうのを考えたんですね。新しいことに挑戦し始めてできることも増えてきたので、1個のことにとらわれる必要はもちろんないのですが、私たちが大切にしてきたことも、改めて広げていきたいなっていう気持ちになっています。根っこを太くして、大きい花も咲かせたいと考えてますね。
——ニューシングルでは今、お二人が言った伝統と革新が混ざってますよね。表題曲「ライアーガール」は新世代ボカロPのニト。さんによる提供曲になってます。
日向:事前に何曲かプリプロ(仮録音)したんですけど、その中でこの曲が表題曲として残ったことに驚きましたし、自分たちも予想していなかったので。まさに“革新”でした。
奥津マリリ(以下、奥津):デモが人の声じゃなくて、ボカロの声が入った状態で送られてきたんですよ。ボカロの曲をどうやって自分の声で、人間の声でよさを出すかに苦労して。ニュアンスの部分でも、人が歌うからこそのよさみたいなところがあるかなと思ったんですけど、キーは高いし、テンポも速いので、その中でどうやって味つけしようかすごく悩んだ曲でしたね。
木葭のの(以下、木葭):私がこのグループ入ってから歌ってきた中で、私的には一番難しいなと思った曲でした。でも、私は元々ボカロ曲が好きで、最近、フィロソフィーのダンスがアニメフェスにもちょっとずつ出させていただけるようになったので、アニメ好きの方とか、ボカロ系が好きな方に刺さるのかなっていう、いい意味でのソワソワ感、ウキウキしてる気持ちの曲です。
佐藤:ののが言った通り、プリプロした曲の中で一番難しかったんですよね。プリプロで歌いこなせなくて。これを歌うことになったら、今まで以上に一生懸命やんなきゃなって思っていた中、これが来たので驚いたんですけれど、私的にはラブコメアニメのオープニングテーマみたいに聴こえて。私はアニメが好きなので「いいかも」と思ったし、歌い方的に自分のちょっとかわいい部分を出して貢献できたらなって。歌えるかは不安だったけど、これに決まってからは「自分のいいとこ出したるぞ」っていう気持ちで練習したのを覚えてます。
——まさに学校を舞台にしたラブコメのアニメが思い浮かぶ曲ですよね。最後の〈出来るだけギュッとロッカーに詰めた〉で暗転する絵まで想像できますが、歌詞はどう捉えました?
木葭:今って、狂愛的な曲もいっぱいあるので、ちょっと強めの歌詞が若者に刺さるのかなって。私的にはこういう強い歌詞が好きだし、特に〈口を塞ぎ合って/呼吸が辛くたって/閉じ込めて二人だけで居よう〉というフレーズがお気に入りです。
日向:普段、私たちがあんまり歌ってこなかった曲調なのも相まって、歌詞の主人公もこれまでにない、小悪魔的なかわいらしい女の子像になってて。でも、私はかわいい部分ではなくて、その子の中にある芯の部分、かっこいい強い部分を表現できたらいいなと思って歌ってました。カバー曲「ランデヴー」を除いた3曲の中で主人公の年齢設定を考えたときに「ライアーガール」が一番若いイメージがあったので、子どもっぽさもちょっと出したいなと考えてて。強いところと幼さ、あえて声を太く出さないところも作ってみたりしたんですけど、自分とは別人格の気持ちなので、「ライアーガール」になりきって歌いました。
「歌の力でぶん殴ってやるぜみたいな気迫が出た」(奥津)
——“ライアーガール”はどんな子ですか。
日向:小悪魔なんだけど、結局は誰かに転がされちゃってる側なんだろうなって私は勝手に解釈してて。強がってるかわいらしさみたいなのがある、まだ幼さが残っている女の子かなと思ってます。
佐藤:私はニト。さんがフィーチャリングで参加したMAISONdesの『うる星やつら』(フジテレビ “ノイタミナ”)のエンディングテーマ「アイタリナイ feat. yama, ニト。」が好きだったので、完全にラムちゃんを想像してました。(諸星)あたるを振り回すラムちゃんみたいな気持ち。翻弄されてるけど、結局、勝つのはライアーガールだと思って歌いました。
——そこは逆ですね。
佐藤:うん。てんやわんやいざこざあったけど、ライアーガールのかわいさと小悪魔さに、きっとこの世はノックアウトされていくものだって思いながら。
日向:確かに。そういう世界線の話なのか!
佐藤:いろんなライアーガールがいていいと思う。私は〈この予定調和も私の恋よ〉〈この予定調和も私の故意よ〉というパートを歌ってるんですけど、〈恋〉〈故意〉の部分は自分的に違いを出して歌ったつもりなので、歌詞の意味を解釈しながら、その1フレーズを聴いていただきたいです。
——〈故意〉の部分、どんな気持ちで歌ったか教えてください。
佐藤:「引っかかったわね。ふふん」っていう気持ちで歌いました(笑)。「この弱さも全部、嘘だよ〜ん」みたいな。あなたを手に入れるための嘘でしたという、強くもあり、ちょっとニヤリとした感じの「ふふんっ」です。
奥津:(笑)。マリちゃんは、喜怒哀楽、全部に全力みたいな印象を受けてました。全て、初めて感じる感情というか。酸いも甘いもぜ〜んぶ過剰に感じていて、本当に全力で生きてるんだろうなと思って。「そうだね」じゃなく、「そうだね!!」みたいな。「好きだよ」じゃなく、「好きだよ!!」みたいな伝え方をしてる、自分の中ではすごい忙しく感情が動いている子なんだろうなと思ったので、“セクシー”の幅の中でも、こなすセクシーじゃなくて、「私はセクシーです!!」っていう表現をしようと思ってる感じが出たらいいなと思って。ちょっとわかりやすくやってみたり、〈口を塞ぎ合って〉のところはもう必死に生きてる感じというか。それでも好きが抑えられない感情の高ぶり。歯止めの効かない気持ちみたいなものも出たらいいなと思って、結構、セクシーの幅の中で大げさに歌うようにしました。
——今お話にあった、レコーディングについてもう少し詳しく聞かせてください。愛や生き方を歌ってきたこれまでの曲とは違うアプローチですよね。
日向:難しかったです。プリプロのときも歌えないと思いました。「人間が歌う曲じゃないから、選ばれないだろうな〜」って思ったら選ばれちゃったから、「ヤバい! もっと練習しなきゃ」と思って、超練習していって。あと、今回から全パートを歌ったんですね。
——これまではプリプロで歌割りを決めて、本レコーディングでは、自分のパートだけを歌うという形でしたね。
日向:そうなんです。この難しい曲を全部、歌わなければならなかったので、これは乗り越えなきゃいけない壁だと思って。終わったときに達成感があったし、他のメンバーがどんなライアーガールで来るんだろうなっていうのも楽しみでしたね。ライアーガール対決、みたいな(笑)。いろんなかわいい、あざとい、小悪魔さが混じり合った中で、自分はさっき言った、強い芯がある部分を残して置いていって。あと、今回レコーディング方法も違ったけど、パート割りもユニゾンが多くて。全員というよりは、2人や3人が多いので、いろんなライアーガールが混ざり合ってるし、ワンフレーズだけ人が変わるパートもあるから、すごく味わい深い曲になったなと思ってます。聴いてて飽きない、予想がつかない歌割りだなって思いました。
奥津:私はレコーディングで「もっとぶん殴るみたいに歌ってください」って言われて。最初はセクシーに“キュルリン”ってやるつもりでいたんだけど、どんどん暴力的になってて、出来上がったものを聴いたら、しっかりと殴ってて。そこはフィロソフィーらしいというか、自分の歌の力でぶん殴ってやるぜみたいな気迫が出たのかなと思います。この曲を他の方が歌ったら、もっとかわいくなってたのかもしれないけど、ちゃんとぶん殴るところはぶん殴る強さとか、いろんな面を見せられるのがフィロソフィーのダンスのよさかなと思うので、初めてのニト。さんとの楽曲はおもしろいものに仕上がったんじゃないかなと思ってます。