Viral Chart Focus

　Spotifyの「Daily Viral Songs（Japan）」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top Songs」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの8月28日付のTOP10は以下の通り（※1）。

1位：焼塩檸檬（CV：若山詩音）「CRAZY FOR YOU」
2位：HITOGOTO「ヒトゴト feat. Kento Nakajima」
3位：天乃リリサ（CV：前田佳織里）, 橘美花莉（CV：鬼頭明里）「Watch Me」
4位：SICK HACK「ワタシダケユウレイ」
5位：Hanumankind, Kalmi「Big Dawgs」
6位：Mega Shinnosuke「愛とU」
7位：Kvi Baba「Friends, Family & God feat. G-k.i.d & KEIJU」
8位：KATSEYE「Touch」
9位：issey「モエチャッカファイア」
10位：BE:FIRST「Blissful」

　今回はSICK HACK「ワタシダケユウレイ」をピックアップする。本曲は8月26日付デイリーバイラルチャートで初登場3位にランクインして以降、5位圏内をキープしている。8月26日からの週のデイリーランキングは不動の首位だった中島健人のソロプロジェクト・HITOGOTOの「ヒトゴト」を除いては順位の入れ替わりが激しい。そんな中で、5位以内をキープできた理由を考察していきたい。

　SICK HACKは、はまじあき原作によるライブハウスを中心にしたバンドシーンを描いた漫画『ぼっち・ざ・ろっく！』（芳文社）に登場するバンドである。ストーリーのなかで、コミュ障の女子高生で天才的なギタリストでもある主人公が在籍している“結束バンド”のメンバーがライブを観に行ったのがSICK HACKだ。

　Blu-ray&DVD『ぼっち・ざ・ろっく！ Vol.5』の特典CDとしての音源しかなかった「ワタシダケユウレイ」が、劇場総集編『ぼっち・ざ・ろっく！Re:Re:』の公開に合わせ、8月11日に配信がスタートしたことで、バイラルチャートにランクインしてきた。

　これまで幾多のバンド漫画がヒットし、アニメ化や映画化された作品も多々あるが、『ぼっち・ざ・ろっく！』がこれだけ支持された最大の理由は、ライブハウスシーンをリアルに描いたことに加え、主題歌や劇中歌などのクオリティの高さにあると思う。2022年12月にリリースされた結束バンドの1stアルバム『結束バンド』には、主題歌や劇中歌だけでなく、複数の新曲も収録されていた。曲を手掛けたのは、樋口愛（ヒグチアイ）、音羽-otoha-、中嶋イッキュウ（tricot／ジェニーハイ）、谷口鮪（KANA-BOON）らで、演奏テクニックや歌のスキルが必要とされる曲ばかりだ。同アルバム曲がバイラルチャートに複数曲ランクインしたのも記憶に新しく、結束バンドがアニメファンだけでなく、音楽ファンにも支持されている証となった。同作は2023年、オリコンチャートのデジタルアルバムランキングやBillboard Japan Download Albumsランキングで1位を獲得した他、Spotifyのグローバルトップデビューアルバムで4位を記録している。その後、結束バンドはアニメを飛び出し、同年5月に初のワンマンライブを開催。2024年には『JAPAN JAM 2024』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』などのフェスに出演し、多くの音楽リスナーにリアル・結束バンドの実力を見せた。この夏には、劇場総集編の後編『ぼっち・ざ・ろっく！Re:Re:』として映画が公開され、現在も上映中で大ヒットを記録している。