ONCE、1年ぶりの新作とともに辿り着いた現在地 アルバム『Wandering』に込めたこれからの旅路を語る

ONCE、最新作とともに辿り着いた現在地 

ONCEとしての“これから”ーー今後挑戦していきたいこととは?

――「この手」はハートフルなミディアムバラード。ピアノを弾き語りするシンプルなMVも素晴らしかったです。

ONCE:ありがとうございます。広く大衆に向けたラブソングをONCEで作ってみたいな、と作り始めて「いつか」よりも先にできたのが「この手」だったんです。最初は温かい恋愛のイメージでメロディを作っていったんですが、いざ歌詞を書くとなった時に、「自分が人から愛情を受け取る瞬間には、どんなシチュエーションがあるかな?」と想像してみたんです。もちろん恋愛の場面もたくさん浮かんだんですけど、それ以上に自分の身近な人、両親やファンの方の顔が浮かぶ瞬間の方が多かったんですよね。「それを受け取るのってどんな時だろう?」とさらに考えた時、ファンの方だったらライブの後に手紙をいただいたり、母親だったら実家に帰った時に料理を作ってくれたり、いろいろな場面で人が“手で”生み出すものから自分は愛情をたくさん受け取ってるな、と感じて。 であれば、その“手”をテーマにラブソングを書いてみよう、という気持ちになっていきました。最終的に、“自分が今まで人から受け取った愛情”のラブソングになっていきましたね。

――作品を締め括るにふさわしい、特別な1曲になりましたね。

ONCE:今のONCEというか、自分の気持ちをより明確に表しているのが冒頭の「Flyby」と「この手」だなと思っているので、必然的にこういう立ち位置になった感じですね。

ONCE(撮影=はぎひさこ)

――歌詞に〈母の手〉とあり、幼い頃の杉本さんの姿が目に浮かびます。1stアルバム『ONLY LIVE ONCE』にも通底していたテーマだと思いますが、これまで過ごしてきた人生全般、その長い時間を対象にした曲だと感じます。

ONCE:ONCEの音楽って、まだアイデンティティがしっかりと確立されているわけではなくて、「ONCEらしさ」を探しながら、必然的に過去を振り返る機会がすごく多いんですよ。自分の価値観が決まっていくのは、“夢が叶った”という前向きな瞬間よりも、むしろ叶わなかったり何かを失ったり、何かと別れたりした瞬間なんじゃないかなって。そういう場面で大切なものに気付いて、「自分はこれからどうしよう。どうなっていこう。」というターニングポイントになっていく気がしています。

――何かを得た時よりも、喪失の中にこそ未来が宿っているのですね。

ONCE:「Flyby」に特にそういう気持ちを込めて歌っているんですけど、新しくONCEというプロジェクトを始める時に、いろいろな出会いや別れもあって……結局1年経って振り返ってみると、その人への大切な気持ちや想いはずっと自分の近くにいてくれているな、と。「この手」という曲も、そうやって過去を振り返って、「今の自分がいるのはなぜだろう?」と考えた時、必然的にこの長い年月の中でもらってきた愛情、というところに繋がったのかなと思いますね。

ONCE - この手(Official Music Video)

――MVの撮影をされたのは音楽ホールですか?

ONCE:神奈川県にある素敵なホールでした。おそらくピアノリサイタルなどに使われている場所だと思うんですけど、普通に「ここでライブしたい」と思いましたね。撮影はシンプルに、ほぼワンカメで。曲がすごく温かいので、いろいろな手法を使うよりもそのほうがダイレクトに想いが伝わる気はしていたんです。この曲も、7月に神戸三宮で行ったVarit.(ライブハウス)での周年イベントで一度披露していて、すごく評判が良かった曲です。

――思い出深いライブハウスですよね。Varit.で披露することを想定してつくられたのですか? 

ONCE:作り始めの時はそういう想定ではなかったんです。でも、ツアーも控えているし、目の前にいる人たちへのメッセージソングになるような曲は欲しいと思っていたので、結果的にそういう想いは落とし込みました。

ONCE(撮影=はぎひさこ)

――そして、まもなく『ONCE ONEMAN TOUR 2024「Wandering」』始まりますね。どのような編成でステージに立つのか、まずそこから楽しみです。

ONCE:1stツアーの時は、アルバムのテーマが「一人でどれだけできるか?」という作品でもあったので、全て一人で行うという実験的なライブだったんです。あれはあれで一つの表現として面白かったんですけど、ONCEという場所でも熱量、一体感をもっと感じられるライブをやりたいなと感じたので、今回のアルバムの曲作りの中にもそういう意識があり、ライブハウスをイメージして作った楽曲が今作には多く入っています。2ndツアーはバンドでやりたいという想いがあったので、今回はピアノ、ドラム、ベースのトリオ編成でやろうと思っています。

――メンバーはどなたになるのでしょうか?

ONCE:ドラムが元・黒猫チェルシーの啓ちゃん(岡本啓佑)、ベースは小栢伸五くんです。小栢くんは、僕が何度か一緒にライブしたことのあるエドガー・サリヴァンのギタリスト、坂本遥がやっているMEMEMIONというバンドのベーシストです。何度か食事に行ったことはあったんですが、演奏はまだ映像でしか観たことがなくて。すごく面白いプレイをする方なので、一緒にやってみたいなと思い、今回誘いました。

――ONCEとして始動して1年以上が経ち、さまざまなイベントにも出演されています。「ONCEとは?」の答えは見えてきましたか?

ONCE:この半年、アルバム制作に向き合っている時間は「目の前でどう伝えるか?」という思いを巡らせるのに必死でした。この作品をリリースしてツアーを終えたら、もう一度「ONCEとしてどういうことをやっていきたいか?」と改めて向き合わないといけないな、と思っています。

――今後どのような表現に挑んでいかれるのか、楽しみです。

ONCE:昔からやりたいことはいろいろあるんですよね。「この手」のMVを撮ったような場所で、ピアノ1本、歌1本で表現するのもONCEだったらいいと思いますし、オーケストラを引き連れての表現も昔からやりたいなと思っているし。表現の仕方としては、ONCEは如何様にも変化していけると思っているので、いつ誰とやるか? というのが大事だと思っています。

――オーケストレーションを手掛けられるのは、杉本さんの強みですよね。

ONCE:そうですね、それは一つの武器だと思っています。

ONCE(撮影=はぎひさこ)

――舞台作品の劇伴など、ご予定はないのでしょうか?

ONCE:具体的な予定は決まってないですけど、この1年ぐらいはミュージカル『無伴奏ソナタ』の音楽をずっと作らせてもらっていて。たとえば、自分発信のミュージカル的な音楽だったりは、今後挑戦してみたいですね。最近好きでよく聴いているAJRというアメリカのバンドの音楽が、すごくミュージカル的に感じられて。ミュージカルではないんですけど、すごくドラマティックで、でもすごくポップで、ライブも演出がすごく面白いんですよ。最初は一人でプレイしていて背景に影が映っているけど、実はそれは映像で流していて、途中からシルエットが本人たちとは全然違うプレイをし始めたりするんです。面白い演出だったり、ONCEでもそういうことをやっていきたいです。

――たとえば映画を観るなど、いろいろと情報収集をされているんですか?

ONCE:全然観ることができていないですね……どんどんインプットしていかないと。

――ちょっとカジュアルな質問ですが、最近リラックスできるのはどんな時ですか?

ONCE:息抜きは移動の車の運転ですね。今年の初めに免許をようやく取ったんですよ。一度仮免の期限が切れてしまい、結局取るまでに1年半かかりました(笑)。プライベートではまだどこにも行けていないんですけど、先日『FUJI ROCK FESTIVAL '24』に森大翔くんのサポートで出演した時は自分で運転していって、すごく楽しかったですね。

――運転のどういうところが楽しいですか?

ONCE:音楽を爆音でかけて、一人で聴いているのが楽しいですね。

――息抜きするのも、やっぱり音楽なんですね。

ONCE:そうですねぇ、もっと早く免許を取っておけばよかったです(笑)。

ONCE(撮影=はぎひさこ)

■リリース情報
ONCE 2nd アルバム
『Wandering』
2024年8月29日(木)デジタルリリース
ST/DL:https://a-sketch-inc.lnk.to/ONCE_Wandering

<収録曲>
Overture〜Wandering〜
Flyby
Right Now
Nocturne
夢でもし逢えたら
いつか
この手

M-1:作曲・編曲:ONCE
M-2〜5,7:作詞・作曲・編曲:ONCE
M6:作詞・作曲:ONCE / 編曲:Eiichi Saeki

・「夢でもし逢えたら」MV

ONCE - 夢でもし逢えたら(Official Music Video)

■ライブ情報
『ONCE ONEMAN TOUR 2024「Wandering」』
日程:2024年8月31日(土)
会場:愛知 / SPADE BOX
開場/開演:16:15/17:00

日程:2024年9月1日(日)
会場:大阪 / Music Club JANUS
開場/開演:16:15/17:00

日程:2024年9月7日(土)
会場:東京 / Shibuya WWW X 
開場/開演:16:00/17:00

チケット:5,500円(税込)
席:スタンディング(整理番号付)
枚数制限:1人各公演4枚まで
年齢制限:未就学児童入場不可

■関連リンク
Official Site:https://ysonce.net/
X(旧Twitter):https://twitter.com/sugi_weaver?s=20
Instagram:https://www.instagram.com/sugi_weaver/
公式ファンクラブ「YS PARLOR」:https://fanicon.net/fancommunities/5062

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