大塚 愛、油絵との出会いが変えた人生観 「失敗があって成功が塗り重なった方が深みが出る」

開催に至るまでは不安しかなかった

大塚 愛 / un

ーー今回はアート作品だけでなく、個展に向けてピアノのインスト曲も作られましたね。楽曲はどのようなプロセスを経て、どんな思いで作られたのでしょうか?

大塚:「碧」や「星」など古い曲は当時の状況を細かく覚えていないですが、「un」「deux」あたりはコロナ禍で決まっていた仕事が全部ストップして、家から出てはいけない状況下で作ったんです。コロナで外の世間はすごく大変なことになっていたけど、私の家は何事もなかったかのように普通の時間が流れていて。我が家はテラスがよく見えるところに、ピアノが置いてあるんですね。自然の光とか空を見ながら、ピアノを弾けるんです。あのときは「すごく世間は大変なことになってるけど、何もなかったかのようにとても平和だな」と思った。外に出たら大変だけど、家の中は平和。そんな対極な日々の中で「un」や「deux」などのピアノ曲をたくさん作りましたね。

ーー「河」がすごい泣けるんですよ。

大塚:いやぁ、泣けますよね! 実は歌詞がありまして、元々は歌にしようかなと置いていた曲なんです。でもピアノのメロも素晴らしいから、個展用にピアノのインスト曲にしましたけど、もしタイアップの機会があったら歌にしたいなと思っています。

ーー会場では大塚さんのインスト曲も聴けて、アート作品を見れるだけでなく、気になった展示品を買うこともできるのは素敵な試みだと思いました。

大塚:責任というんですかね? それはとても重くのしかかってはいて。こんな金額つけてしまっていいんだろうか、みたいな。「調子乗ってんじゃないか」と思われてしまわないかって懸念もありますけど、それよりも自分がどれだけこの絵に対して愛を詰め込めたのか、「もう2度と描きたくないなっていうぐらい大変だったな」ということも考慮して、値段をつけさせてもらいました。

ーー2日目の夜、僕は個展に伺ったんですけど、様々な年齢や雰囲気の方々が観に来られていて。

大塚:私は女性が多いときに行ったんですけど、お綺麗なおばさまが「あらすごいわねー」と言ってくれて。

ーー表参道のマダムが(笑)。

大塚:ふふ、そうですね。いろんな方に来ていただけて嬉しいです。そもそも、開催に至るまでは不安しかなかったんですよね。書道に関しても深い世界なので「芸能人がちょちょっと字を書いて遊んでるんじゃない」みたいに思われてしまうかも、という不安もあった中、字を褒めてくださる方がたくさんいて。「あ、今後も書いていいんだ」と自信になりました。作品に対する感想もそうですし、点数が多くて会場も広いから「時間が足りなかったので、もう一回観に行きます」と言ってくださる方も多くて、ありがたいですね。

ーーどの作品も仕切りがなくて、本当に間近で見られるのが良いですよね。

大塚:特に、油絵の細かいディティールは写真には映りきらないところがあるので、やっぱり生で見ていただくことが1番ですね。

ーー個展を開催されたことで、新たな目標は生まれましたか?

大塚:「地方でもやってほしい」というご要望をたくさんいただいていて。やっぱり都内まで来られない方も多いので、いつかは地方でも個展をやって、のちに海外にも出たいなと思います。

ーー今後の音楽活動については、どのように考えていますか?

大塚:自分の作品として発表するのは、9枚目で終わっていて。今後はプロデュースも含め、自分の作品を提示するよりかは何かタイアップだったりとか、楽曲提供だったりとか、幅広くできたら。あと、ピアノのインストも続けていって、ゆくゆくは映画音楽もやりたいですね。

ーー前にお話を伺ったら「メジャーデビューしたときは『息の長いアーティストになりたいです』と言っていたものの、まだ考えが浅かったので『じゃあ息の長いアーティストってなに?』ってところまではイメージができていなかった」と仰っていましたが、デビュー20周年が経った今、息の長いアーティストってなんだと思いますか?

大塚:息の長い曲を作ることかもしれません。自分にはいずれ体力の限界が来るけど、曲には限界が来ないし、生き残っていくのは最終的には曲になるので。そういった息の長い曲を今後も目指していきたいです。

ーー長い間、多くのリスナーに愛され続けている楽曲といえば、7月12日にTHE FIRST TAKEで公開された「プラネタリウム」も素晴らしかったですね。たくさんの反響が届いたんじゃないですか?

大塚:いやぁ、私はコメントとか見ないんですよ、怖すぎて(苦笑)。

大塚 愛 - プラネタリウム / THE FIRST TAKE
大塚 愛 - さくらんぼーカクテルー / THE FIRST TAKE

ーーいやいやいや! 絶賛の声しかないですよ!

大塚:感想は一切読まないようにしていて。なんかね、本当に歌が向いてないなって思っちゃいますね。こんなに吐きそうな思いがあるんだって。

ーーほかと緊張感が違いました?

大塚:ライブやテレビもいつもそれぐらい吐きそうなんですよ。別にTHE FIRST TAKEだけじゃなくて、毎回歌うときは吐きそうになっているので、それが私の通常運転ですね(笑)。ずっと向いてないなと思いながら、20年経っちゃいました。

ーー数々のステージや歌番組で歌われても、その緊張は消えないんですか。

大塚:消えないですね。aiko先輩が「消えないよ」と言っていたから、じゃあ絶対に消えないなって。先輩が消えないのに私が消えるわけないじゃん、と諦めました(笑)。

ーーハハハ。

大塚:あそこまでの方が消えないと言っているので、これは消えないんですよ(笑)。

ーー前にインタビューをした中で、「プラネタリウム」の話をお聞きしたら「当時『プラネタリウム』は、私の好きな方向性ではなかったんですよ。だけど、そこは割り切って『世の中に好まれるだろうな』と思って作ったんです。自分が好きな音楽かと聞かれたら全然関係ない」「この曲は何がいいんだろう、みたいな壁にしばらくぶち当たっていましたね。ここ数年かもしれないです。『あ、いい曲だな』とようやく思えるようになったのは」と言っていましたね。

大塚:正直、タイアップのおかげですよね。どう発表されるかだったりタイミングだったりとか、時代の流れだったりもそう。全てが合わさり、相乗効果となってヒット曲は生まれると思うので、それは強く感じますね。

ーーそれで言えば、「さくらんぼ」のタイアップは『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)で行きたいと自ら会社に交渉されたんですよね。

大塚:あれもタイアップのおかげです。『めちゃイケ』のタイアップがつけば売れる、という考えがあったんですよね。

ーーアートの活動に関しては、そういった商業的な野心はお持ちですか?

大塚:まだ自分に1ミリも自信が持てていないので、そんなに大きいことは言いたくないんですけど、いずれは「LOVE」(大塚さんがデザインされたウサギのキャラクター)が世界に出たりとか、ハイブランドとコラボしたりとか、そういったところまでいけたらなって。「目指せ、草間彌生さん!」と勝手に言いたい放題言ってます(笑)。何より、読者の方にはぜひ個展に足を運んでいただきたいですね。自分の中に眠ってる“創造の世界”を楽しめるひとときになるんじゃないかな、と思うので。日頃のやらなきゃいけないタスクに追われてる中で、心ゆくまで自分を解放してあげる時間に使ってもらえたらと思います。

■個展概要
『AI OTSUKA 20th ANNIVERSARY ART EXHIBITION AIO ART supporting radio J-WAVE』
日程:2024年7月29日まで開催中
会場:スパイラルガーデン(東京都港区南青山5-6-23 スパイラル1F)
展示内容:油絵・書道・フラワーアレンジメント
料金:観覧無料
主催:エイベックスマネジメント株式会社
協力:ヤマハ株式会社
後援:J-WAVE
※一部を除く作品販売予定
https://www.spiral.co.jp/topics/spiral-garden/ai-otsuk

「AIO ART」AI OTSUKA
個展パンフレット(24ページ) + CDミニ・アルバム
¥7,590 (税込)
個展会場及び、mumo shopにて限定販売中

mumo shop商品ページ
https://shop.mu-mo.net/avx/sv/item1?jsiteid=mumo&seq_exhibit_id=352926&categ_id=

ピアノ・インストゥルメンタル・ミニ・アルバム
『graine』 
01. un
02. deux
03. trois
04. 河
05. 星
06. 碧
produced, composed, arranged and performed by AIO
配信中
https://avex.lnk.to/graine

■関連リンク
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