日食なつこ×千鳥ノブ対談 音楽とお笑い、表現への対極な姿勢と通ずる信念

日食なつこと千鳥ノブ、通ずる信念

二人の現在地とこれから

――でも確かに、お笑いも何年かに1回、尖ったものが出てきますもんね。

ノブ:結局そうなんですよ。結局、ウケ線の、このテンポの、このポップな漫才がM-1を3回獲ったら、絶対にスリムクラブみたいな超絶鋭利な角度の、ゆったりした漫才がめっちゃウケたりするんです。だから、日食さんみたいな方も絶対いらっしゃらないとダメだし。

――大衆性みたいなところとの向き合い方って。日食さんの中ではどういうスタンスなんですか?

日食:一貫してまったく見てない。もちろんチラチラ気になったりはしますけど。

ノブ:要は僕らの言葉でいう「売れる」ってやつですよね。あとテレビ出たいとか、ゴールデンで何かやりたいとか、そういうこと。

日食:そうです。本当に私に関しては、ずっと自分のためにしか音楽をやってないので、誰かを笑かしたいとか、誰かに何か与えたいとかじゃなくて、いつまで経っても究極の暇つぶしでしかないなという。

ノブ:大尖りまくりじゃないですか! ナイフ中のナイフ。まだこんな尖ってる人いたんだ(笑)。すばらしいっすね。

日食:でも、日常生活では本当に使えないです、このナイフは。どこにも出せない。こういう場では貴重がってもらえるから「どうですか」って出せますけど。だからそのナイフの出しどころはやっぱり難しいなと思いつつ、でも私にはこれしかないなという気持ちでの15年目、みたいな。大衆性には向いてないけどおもしろがってくれる人が全国単位、世界単位で一定数いてくれるおかげで私はやれてるんです。だからその人たちの娯楽で今後もいようかな、みたいなところではありますね。

ノブ:僕は、 15年目の頃はもう売れたあて売れたあて。もうおもしろいって思われたくて思われたくて、ダウンタウンになりたくてなりたくてって感じでやってて。で、いろいろ仕事もやってきて。で、何となくわかるじゃないですか。東京出てきてこんな感じか、ゴールデンの司会もしてこんなんか、会う人はこんなんで、って。そうなったときに一瞬「あれ?」ってなったんですよ。「あ、こんな感じなんや」って1回醒めたんですよね。数年前に。醒めたというか、ふっと落ち着いたというか。ダメじゃないですか、こんな世界で落ち着いたら。

日食:落ち着いても許されるぐらいのところに来たっていうことですよね。

ノブ:いやいや、でも自分の描いてた感じにふっとなった時に「ヤバい」と思った時期がちょっとあったんです。でも最近は……もうこれしか今はないんですけど、僕は「人に会いたい」だけで仕事してるんです。いい人に会い続けていたい。それは仕事仲間のあのおもしろい人とか、あんな考え方を持ってる先輩とか、あんなに優しいスタッフさんとか、芸人ばっかりで遊んだり、ミュージシャンの方とか俳優さんともたまに遊ぶんですけど、みんな変で尖ってて、才能があって。こんな素敵な人たちに会えなくなるのが嫌でやってるって感じ。本当、ミーハーの星が怖いくらい強いんですよ。だからスパッと芸人辞めて別の仕事をやるってなっても楽しそうだなって思うんです。だから、別にお笑いがなくなっても「もう死ぬ」って感じにはならなくて。でもこのお笑い界で知り合った人たちに会えなくなるのは嫌。本当にそれだけですね。番組とかも、別にやりたい内容じゃなくても「あの人に会える」と思ってオファー受けたりするんですよ。

日食:本当に人ありきの人生なんですね。

ノブ:本当そうです。前にひとり旅をしてみたんですよ。ひとりで新幹線のチケット買って、駅弁食って、ゴルフの、そこにしかない工場を回ったりして、神社行ってロープウェイ乗って景色見て、好きなラーメン食って東京駅に帰ってきて――そのときに思ったのが、「おもんな!」って。俺はひとりは絶対ダメなんだなって確認できました。

日食:私、さっき話してくださった天照大神の話って宮崎の話なんですけど――。

ノブ:ああ、高千穂。

日食:そう。27、28歳くらいのときにひとり旅でそのあたりに行ったんです。2泊3日、レンタカーだけ借りて、宿も決めずに。ノブさんと同じように、とにかくいろいろな道の駅に行ってうどん食って、砂浜で寝転がって……それ全部ひとりでやって、めちゃめちゃ楽しかったです(笑)。

ノブ:ひとりいいなって思いました? でも孤独すぎたらダメですよ。ひとりで喋ったりするようになりますよ。

日食:そろそろ始まるんじゃないかなと思ってます。

ノブ:そう、もうひとり自分ができて「何してるんだ」みたいな。ま、それも歌にされるからいいのかもしれないですけど。

日食:だから、やっぱり対極だなあと思って、おもしろいなと。人といるのはもちろん好きですよ。今ツアーとかやってて、そのチームで一緒に打ち上げしてると「バカしかいねえな、楽しいな」ってなりますけど、そこから山奥にひとり帰っても全然大丈夫。でも、さっきおっしゃってた、「肉食った、おいしい」とか「パチスロ行って今日は遊びたい」みたいなのがまったくないのもよくないんだろうなって正直思ってて。そういう、何かを欲するってところに今後結びつく何かがあればいいなって、いうことをノブさんとお話しして感じました。人への意識が今後の課題ですかね(笑)。

ノブ:(笑)。課題は別に、今まで通りでいいと思う。最高だから。

■リリース情報
『日食なつこ 15th Anniversary BEST -Fly-by2024-』
発売日:2024年9月18日(水)

<初回限定盤>
価格:7700円(税込)
【仕様】
・CD2枚組
・本型BOX仕様
・「エリア過去」展示物レプリカカード6点
・「エリア未来」ツアーフォトカード5点
・「エリア不変」盛岡のすゝめZINE1点
・ベストアルバムツアー「エリア現在」CD特別封入先行シリアルコード

<通常盤>
価格:4400円(税込)
【仕様】
・CD2枚組
・ベストアルバムツアー「エリア現在」CD特別封入先行シリアルコード

ベストアルバム特設サイト

■日食なつこ 関連リンク
日食なつこ 15th Anniversary -宇宙友泳- 特設サイト
デジタル配信:https://orcd.co/nisshoku
公式HP
X(旧Twitter)
Instagram

■千鳥ノブ 関連リンク
公式HP
X(旧Twitter)
Instagram

■取材協力
RISTORO神南
https://www.udagawacafe.com/ristoro/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる