櫻坂46、充実した活動を実らせる“通過点” グループ史上最大動員数を達成した東京ドーム公演

 だからなのか、先に挙げた「ドーム公演ならではのスペシャルな楽曲」として3月のツアーには含まれていなかった「Nobody's fault」「流れ弾」といった初期のシングル曲、センター 守屋麗奈が華麗なソロダンスで唯一無二の世界観を構築する「桜月」、MV同様に森田ひかるが信号機セットの上から登場する「Dead end」などが新たに追加。ツアー本編のテーマに寄り添いながら、ドームクラスのステージならではの演出を加えることで多様性を見せる。しかも、唐突に追加されるのではなく、しっかりと前後のストーリー性を重視したSEや演出、ダンストラックを交えた結果、その没入感が遮断されることは全くなかった。無駄な要素が皆無なツアー本編に新たな要素が加わることで、その軸が薄れる可能性すらあったはずだが、そうならなかったのは細かいところにまで意識が行き届いた演出と、有無を言わせぬメンバーの圧倒的なパフォーマンス力あってこそ。グループを取り巻く環境がどれだけ充実しているかが窺える。

 メンバー一人ひとりの輝きぶりも、この2日間は特筆すべきものがあった。櫻坂46改名後、先頭に立ってグループを引っ張り続けた森田や山﨑天、藤吉夏鈴、田村保乃や守屋といったセンター経験者の活躍ぶりはもちろんのこと、さまざまな場面で自信たっぷりの表情とダンスで各々アピールする選抜メンバー、5月開催の『8th Single BACKS LIVE!!』でも堂々とした姿を見せた武元唯衣をはじめとするBACKSメンバーと、誰もが主役と思えるほどのオーラを放ちながら、この特別な舞台を心の底から楽しんでいる。中でも、1年7カ月前は客席から先輩たちの姿を眺めていた三期生は、初ドームという事実に一切臆することなく、スター級の存在感で観る者を惹きつけた。村山美羽の表情やダンスの表現力が際立つ「何度 LOVE SONGの歌詞を読み返しただろう」、Buddiesのペンライト含め東京ドームの明かりがすべて消え、センター 山下瞳月を中心に無音の中、緊張感みなぎるパフォーマンスで異様な空間を作り上げた「静寂の暴力」は、本公演を語る上で欠かせないトピックだ。昨年11月の『3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』での「静寂の暴力」も櫻坂46のライブ史において忘れられないパフォーマンスのひとつだったが、5万5000人を前にこの強烈なステージを展開した今回も後世に語り継ぐべきものだと断言したい。

 そんな三期生は、ユニット曲でも大活躍。「恋は向いてない」には中嶋優月と村井優、「真夏に何が起きるのかしら」には小島凪紗と向井純葉、「心の影絵」には谷口愛季と山下がそれぞれ参加し、藤吉、山﨑、森田といった先輩たちと肩を並べて、各曲のカラーに合わせた表現で個々の魅力を提示してみせた。今やグループにとって大きな武器と言える三期生を、こういう形でアピールする演出も東京ドームという特別な場所でのライブだからこそ。単に集大成のライブで終わることなく、未来へ向けた新たな可能性も散りばめながら進行していく構成も、現在の充実度あってこそと言えるだろう。

 3月のツアーでオープニングを飾った「マンホールの蓋の上」から始まるライブ終盤戦は、ラストナンバーまで息つく暇を全く与えてくれない。選抜メンバーとBACKSメンバーに分かれて交互にパフォーマンスする新たな演出が組み込まれた「BAN」、披露する機会を重ねるたびにダンスや見せ方の精度が上昇する「承認欲求」「Start over!」でクライマックスを迎えたかと思えば、本編最後には6月26日リリースの9thシングル曲「自業自得」をライブ初披露。MV同様に赤や青の塗料が飛び散った白い衣装を着用したメンバーは、三期生の山下を中心に一糸乱れぬダンスを見せつける。初めてシングル表題曲でセンターを務める山下からは不安な要素は一切感じられず、MVで見せる以上の強い気迫と存在感で彼女ならではの独特の空気を作り上げていく。楽曲終盤では不敵な笑みを浮かべる場面もあり、そうした一挙手一投足を前にしてグループの未来がさらに明るいものになるであろうことは予想に難しくなかったはずだ。

 アンコールでは3月のツアーでも話題となった「Anthem time」と「ドローン旋回中」のマッシュアップバージョンで再び会場の熱気が高まり、客電がついた明るい状態でメンバーとBuddiesの絆を確かめ合う「Buddies」などが披露。メンバーがトロッコに乗ってアリーナを1周するなど、ドーム公演ならではの演出も用意され、ストーリー性の強さを感じさせたライブ本編とは異なる見せ方でグループの魅力を伝えてくれた。

 グループ史上最大の動員数を記録した今回の東京ドーム公演は、オリジナリティを確立した櫻坂46にとって最初の集大成であると同時に、さらに大きな飛躍を遂げるための通過点とも受け取ることができた。最終日のMCでは、山﨑が「まだまだ上があると思って私たちは活動しているので、Buddiesの皆さんもその大きな大きな愛で私たちのことを応援してほしいですし、もっといろんな素敵な景色をこれからも見にいけたらと思います」、キャプテンの松田里奈も「出会ってくださったからには、絶対に皆さんのことを幸せにしますので、これからも櫻坂46についてきてくださったら嬉しいなと思います」と語っている。初めて三期生をセンターに据えた9枚目シングル『自業自得』や、8月から9月にかけて行われる『9th Single BACKS LIVE!!』と三期生単独ライブ、今年も11月にZOZOマリンスタジアムでの開催が決まった『4th YEAR ANNIVERSARY LIVE』といった充実した活動の先に、今度はどんな未来が待っているのか。我々が予想もできないような結果とともに、これからもワクワクさせ続けてほしい。

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