藤原さくら、アルバム『wood mood』で紡いだ幸福の一夜 NHKホールで迎えた充実のツアーファイナル

藤原さくら、NHKホールワンマンレポ

 最新アルバム『wood mood』を携えて、4月14日、Zepp Fukuoka公演からスタートした『Sakura Fujiwara Tour 2024 “wood mood”』。全国の5都市を巡ったこのツアーが5月19日、東京・NHKホールでファイナルを迎えた。彼女にとって過去最大規模の会場での開催となったこの公演のチケットはソールドアウト。たくさんの観客が耳を傾けるなか、歌とバンド演奏が豊かに躍動したライブの模様をレポートする。

 アルバム『wood mood』でもオープニングを飾っていた「Intro」が流れるなか、幻想的なライティングで彩られたステージに松井泉(Per)、渡辺翔太(Key)、Meg(Cho)、井上銘(Gt)、マーティ・ホロベック(Ba)、石若駿(Dr)、そして藤原さくらが登場。バンドメンバーが呼吸を合わせて響かせるサウンドに包まれながら「my dear boy」「巡」「コンクール」「Give me a break」「BITTER RAIN」……各々の曲に刻まれた想い、物語を浮かび上がらせる歌声が、序盤から冴え渡っていた。時にはハンドマイクで自由に動いたりもしながら歌っていた彼女を見つめていると、さまざまな世界に連れて行かれるかのような感覚となる。ソロアーティスト“藤原さくら”のライブではあるが、彼女がフロントマンの魅力的なバンドとなっているのを感じた。

 「みなさま、お元気だったでしょうか? 来てくださってありがとうございます。回を重ねるごとにどんどんよくなって、ツアーが終わるのが信じられないです」「去年の夏に私の姉が出産して姪っ子が生まれたんですけど、新しい生命が誕生するって、なんてすごいことなんだろうと感じました。新しい生命が生まれた奇跡にこの曲を送りたいと思います」――MCののちに届けられた「sunshine」。ガットギターを弾きながら藤原が歌い始め、あとから他の楽器パートも合流。構築されたバンドアンサンブルが、とても温かかった。続いて「Close your eyes」「good night」も歌い、一旦舞台裏に戻った彼女。そしてスタートしたバンドメンバーによるセッションプレイは、切れ味が抜群だった。演奏していたのは、ギターの井上が過去にリリースした「Taiji Song」。メンバー各々のプレイの熱量によって多彩なフレーズがドラマチックに躍動する様に引き込まれずにはいられなかった。

 衣装を着替えてステージに戻ってきた藤原は「daybreak」を歌い終えると、先ほどのバンドセッションを大絶賛しつつ、メンバーたちを紹介。そして、アルバム『wood mood』を石若にプロデュースしてもらうことになった経緯を語った。「石若さんは、原田知世さんのトリビュートアルバム(『ToMoYo covers~原田知世オフィシャル・カバー・アルバム』)に『早春物語』のカバーで参加させていただいた時にプロデュースしていただきました」「『早春物語』の制作も楽しくて、『1枚、EPを作りませんか?』というところから始まったんですけど、気づいたらアルバムになって(笑)」――実りの多かった制作期間について語る表情が明るかった。

 アルバムの制作エピソードのあとは、祖父が亡くなった時の想いについて触れた。「身近な人が亡くなったのは初めて。一緒にいる時間を後悔しないように過ごしたい。まばたきをするのも惜しむくらい相手のことを見て過ごしたいと思いました。ライブもみなさんと一緒に過ごすわけじゃないですか? 一つひとつを味わって生きていきたいです」――このMCを経て届けられた「まばたき」は、ガットギターを弾きながら響かせる歌声が穏やかだった。続いて原田知世の曲のカバー「早春物語」、瑞々しいメロディが広がる「Waver」も届けられて、至福のサウンドで満たされ続けたNHKホール。観客の軽快な手拍子を誘いつつ、バンドメンバー各々のソロプレイでも盛り上げた「spell on me」。そして「Thanks again」の爽やかな調べと共に本編は締め括られた。

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