B’z、スタレビらの楽曲提供や吹石一恵の歌唱曲まで 『ときめきメモリアル』音楽面でも一時代を築いた功績

 そして、『ときめきメモリアル』は、今でこそ当たり前となっている「二次元アイドル」「バーチャルアイドル」の礎を築いてきた作品の一つであることも、言及しておかなければなるまい。

 1996年12月、シリーズ初代の『ときめきメモリアル』から、絶対的なヒロインの藤崎詩織(cv. 金月真美)がシングル『教えてMr.Sky』で歌手デビューを実現したのである。当時はまだ、二次元のキャラクターが現実世界で楽曲をリリースし、歌手として活動するという概念は一般的ではなかったはずだ。だが、コナミは藤崎詩織のことを“バーチャルアイドル”として売り出し、デビューシングルは発売から1カ月で10万枚を売り上げたという。また、1997年2月にリリースされた1stアルバム『My Sweet Valentine』は約20万枚を売り上げ、オリコンチャート9位にランクイン。1999年12月までにシングルを5枚、アルバムを3枚、ベストアルバムを1枚リリースし、一世を風靡した。

 こうした記録を実現できた背景には、楽曲制作に豪華な布陣が敷かれたことも影響していると思われる。例えば、デビューシングルの1曲目に収録された「教えてMr.Sky」では、数々の歌謡曲・J-POPの制作に携わった森雪之丞が作詞を担当し、作曲をチューリップの財津和夫が務めた。また、2曲目に収録された「風と一緒に行こう」は、松田聖子「天使のウィンク」や杏里「オリビアを聴きながら」などを手がけたシンガーソングライターの尾崎亜美が作詞作曲を担当。2ndシングル以降の作品でも、小比類巻かほる、サンプラザ中野、来生えつこ、来生たかお、大江千里など、人気と実力の確かなアーティストたちが楽曲制作に参加し、藤崎詩織の飛躍に一役買った形となった。

 このように、音楽にも多大な力を注いできたことがうかがえる『ときめきメモリアル』シリーズ。5月18日と19日には、立川ステージガーデンでライブイベント『ときめきメモリアル 30th ANNIVERSARY LIVE エモーショナル presented by TOKYO MX』が開催され、改めて、音楽の部分でも同シリーズを愛しているファンが多いことを実感する。

 『ときめきメモリアル』シリーズ30周年を機にその歴史を振り返ってみると、同作は一つのゲーム作品として優れているだけでなく、ゲームが音楽アーティストと相乗効果を生み出しながら発展をし続けてきたこと、二次元キャラクターが現実世界で歌手として活躍する道を切り拓いてきたこと、その功績の偉大さに思いを馳せずにはいられないのである。

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