ももいろクローバーZ、女性グループ前人未到の国立競技場ライブ成功の裏にあったもの 10年節目に考える
国立競技場ライブ当日、体調不良の百田夏菜子を支えた有安杏果
書籍『BRODY』2020年10月号(白夜書房)では、『ももクロ春の一大事 2014』について「ちょっと他人事っていうか」(玉井詩織)、「事の重大さをじわじわ今になってわかる」(佐々木彩夏)と実感があまりなかったと語っている。それに、百田夏菜子の「怖いもの知らず感」という発言が、当時のももクロがいかなる状態だったかをあらわしている。
しかし、勢いだけでやっていけるものでもない。前述したようにレベルアップのためにさまざまな課題と向き合ってアーティスト性の強化に励みながら、一方で、メンバーの絆も固くなっていくなどチーム力も上がっていった。
書籍『Quick Japan vol.116』(2014年/太田出版)でも語られているが、実は百田は最悪の体調で『ももクロ春の一大事 2014』に臨んだのだという。初日は体力温存のためにリハーサルには参加せず、ほぼぶっつけのような状態で本番の舞台へ立つことに。さらに翌日も他のメンバーに遅れる形で会場入りし、リハーサルへ参加。そんな百田にずっと寄り添っていたのが、当時メンバーだった有安杏果だ。有安は「大丈夫だからね」と百田の背中に手を当てて励ましながら、彼女を支えていたのだという。
そういったエピソードを見聞きすると、『ももクロ春の一大事 2014』の成功はももいろクローバーZのチーム力の賜物であるように思える。
最後に、筆者個人の記憶をここに記したい。筆者は初期からももいろクローバーZの活動を追い、ライブなどにも何度か足を運んでいた。ただ、彼女たちが路上での活動からスタートし、2012年の『NHK紅白歌合戦』初出場や2014年の国立競技場でのライブ実現などどんどん夢を掴んでいく姿を見て、「これ以上のことはこの先もうないんじゃないか」とこちら側が達成感のようなものを得たのだ。むしろ、この絶頂期でグループとしてキャリアを終わらせることも、もしかしたらグループの在り方として美しいのではないかとさえ考えたりもした(自分で思い返しても「何様やねん」なんですが)。
だが、ももいろクローバーZは国立競技場という大舞台を踏んでも燃え尽きることは一切なかった。あれから10年以上が経ってもなお精力的に活動を行い、さらに国立競技場の聖火台から百田が口にした「みんなに笑顔を届けるという部分で、天下を取りたい」(通称「“笑顔の天下”宣言」)という言葉の温度感は、今も失われずに熱を放っている。それだけではなく、現在はメンバー個々が自分の人生も大切にしながら走り続けている。アイドルグループとしてこんなに素敵なことは、ほかにないのではないだろうか。
国立競技場でのライブはももいろクローバーZにとってエポックメイキングではある。一方で、終わることがない物語の大きな通過点のひとつでもあるのだ。
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