日食なつこ、画面越しにも伝わる熱気 今後のライブがさらに楽しみになった『談話室』を振り返る

日食なつこ『談話室』を振り返る

 日食なつこが4月19日に行ったスタジオライブ配信『談話室』終了と同時に開設された「日食なつこ楽曲総選挙2024」では、常時投票結果(票数と順位)が公開されており、リスナーからのメッセージが随時更新されている。こうしたアンケート形式の企画において、結果が発表されることはあっても途中経過が全て公開されるというのは珍しい。本当に意表を突くことにかけては随一というか、このランキングを眺めて楽しんでいるのは日食なつこ自身だろう。今年リリースされることが決定したベストアルバム、『日食なつこ 15th Anniversary BEST -Fly-by2024-』と連動した企画であり、サイトを覗くだけでも楽しいので是非ご覧になってほしい(私が一番好きな「ハッカシロップ」は16位だ。〈4月28日早朝時点〉)。なお、「ランキング内の楽曲はベストアルバムに収録される可能性がございます!」とのことだが、なんとなく得票数の多いものではなく、1、2票しか入らない楽曲からも選ばれそうな天邪鬼っぷりを予感してしまうのは私だけだろうか?

 ともあれ活動15周年イヤーを飾るプロジェクト、「宇宙友泳」のすべての企画が発表された。ひとつ目が『エリア未来』と題した未発表曲のみで構成されるツアーで、ふたつ目は3月に開かれた自身初の展覧会『エリア過去』(発表ではこちらがふたつ目だったが、「エリア未来」に先んじて行われている)。3つ目が日食なつこの原点たる盛岡クラブチェンジにて行う3daysライブの『エリア不変』である。そしてこの度発表されたのが、第4弾企画のベストアルバムの発表と、第5弾企画の自身最大規模のライブツアー『エリア現在』である。おそらく『エリア現在』は『エリア未来』と対を成すようなオールタイムベスト的なセットリストになるはずで、果たして「宇宙友泳」は日食なつこの過去から未来までを貫きながら、最終的に今へと辿り着くような贅沢な企画になっているのである。

日食なつことバンドメンバー

 スタジオライブ配信『談話室』は沼能友樹(Gt)、仲俣和宏(Ba)、komaki(Dr)を迎えた4人編成で行われた。これは2023年3月に始まった『蒐集大行脚』ツアーと同じ布陣であり、来るべきふたつのツアー、『エリア未来』と『エリア現在』もこの4人で回ることがアナウンスされている。いわば『蒐集大行脚』こそがこの未来の始まりだったのであり、さらに言えば次なる10年への起点にもなるのかもしれない。日食なつこがこの4人の音に自信を深めているのは明白で、『談話室』の中で「そろそろこのチームに名前をつけようと思っている」と言っていたことからも、ただのサポートメンバーではない有機的なバンドとしての実感が強くなっているのだと思う。

日食なつことバンドメンバー

 セットリストは真ん中に未発表曲を挟みつつ、前後に「うつろぶね」「音楽のすゝめ」「√-1」「ログマロープ」を並べた5曲である。まさしく日食なつこらしい格闘の楽曲たちと言ったところだろう。仲俣和宏のベースには身体をどっさり預けたくなるような安定感があり、そこにドライヴ感満載のkomakiのドラムが重なることで曲はどこまでも力強く転がっていく。「うつろぶね」は原曲よりもグルーヴィで、日食なつこはそこに叩きつけるような発声で言葉を乗せていく。

 「音楽のすゝめ」は厚みのあるアンサンブルがよく似合う曲で、心なしか鍵盤の音色があたたかいところも魅力的だと思う。何よりもこの曲で歌っていることは、日食なつこが音楽を続ける理由であり、同時にリスナーが彼女の音楽に惹かれる理由でもあるのだろう。〈馬鹿な僕らでいようぜ〉〈お前に幸あれ〉という言葉が、懐の深いサウンドに乗ることでグッと胸に迫ってくる。

日食なつこ

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