渡辺淳之介「実質的な経営業務に興味がなくなった」 BiSH解散、ロンドン渡航と海外展開――WACKの現在地
BiSHの解散、所属グループの変遷続くも「めっちゃ前向き」な理由
――WACKはロンドン公演をしているし、くだらない1日も『SXSW』に出ますが、WACKの海外進出についてはどう考えていますか?
渡辺:解散というチートも使いましたけど、BiSHで東京ドームまで行っているし、『紅白歌合戦』にも出たし、日本でどんなことをしたらどうなるかみたいな検証はできたので、もう海外に行く以外に面白いことがないかなと思ったんです。でも、僕だけですね。メンバーも誰も英語の勉強はしてこないし、だからって僕も強制するつもりはまったくないし。だけど、やったほうが得だし、僕の興味も頑張る奴に向くし。最近、「ASPばっかり力入れてんじゃん!」ってよく言われるけど、僕はずっと「えこひいきする」って言ってきたし、餌をくれない人に優しくしないじゃないですか。やっぱり何かやってほしかったら、俺に見える努力が必要ですよね。平等なんてあるわけないんだから。
――ASPと言えば、武道館組のExWHYZとASPは、渡辺さんのなかで努力しているという評価になるんですか?
渡辺:旧態依然とした何かのなかから飛び抜けるんじゃなくて、何かきっかけがあれば違う方向へ飛び抜ける可能性があるなと思った2組ではあるんですよ。だから可能性の話であって、成功するか成功しないかは別にいいんです。
――2023年5月には、男性アイドルグループ・BOYSGROUPの解散もありましたね。デビュー直後に。
渡辺:すいません、記事にしてもらって「頑張るぞ!」みたいに言ってたのに、早々に解散するっていう(笑)。
――今後は男性アイドルグループは……?
渡辺:もうないっすね。
――BOYSGROUPのために大阪支社まで作ったのに。
渡辺:頑張ろうと思ったんですけど、難しかったですね。
――2023年6月には、BiSHの解散もありました。
渡辺:大手の事務所でも、あそこまで持っていける人ってなかなかいないですよね。なかなかのウルトラCをしたなと思うんですけど、次の次の日がBiTE A SHOCKのお披露目で、BiSHの解散の次の日からはそのことしか考えてなかったですね。
――BiSHのメンバーが他の事務所に移籍したのはどう思いましたか?
渡辺:いや、もう夢があるじゃないですか。こんなクソインディー事務所から、ナベプロ、ホリプロ、スターダストですよ(モモコグミカンパニー=ワタナベエンターテインメントへ移籍/ハシヤスメ・アツコ=ホリプロへ移籍/セントチヒロ・チッチ=スターダストプロモーションへ移籍)。
――既存の大手事務所に行かれて、悔しい気持ちはないんですか?
渡辺:全然ないです。自分の人生なんだから好きに生きてほしい。自分の夢を叶えてほしいですから。持ちつ持たれつじゃないと意味がないと思うし、それはうちの他のアイドルも同じですね。
――BiSHのメンバーが残ってくれたらWACKの売り上げになっていたわけじゃないですか。
渡辺:どうかな、でもそれは彼女たちの稼ぎじゃないですか。BiSHまでは頑張ってくれて、それ以降稼げなくなるとすれば僕の力量不足じゃないっすか。その子たちのおかげで会社がもってるって思いたくない。それも気を遣う話じゃないですか。BiSHやBiSっていう括りは僕のものだけど、それ以外にはあんまり執着がない。そういう意味では冷たいのかもしれないですね。
――でも、この部屋(WACKの会議室)にも渡辺さんとBiSHの写真が飾ってあるじゃないですか。
渡辺:(写真を見て)誰も残ってないじゃん!
――「誰も」ってことはないですよ! アイナさんはWACKにいるし、アユニ・Dさんの株式会社浪漫惑星には渡辺さんが出資してるし、リンリン改めMISATO ANDOさんは業務委託だし。
渡辺:辞めた子たちも、もちろんイヤな辞め方はまったくしてないですし、そこだけがしっかりできていれば何も問題ないですね。初期BiSで言ったら、ファーストサマーウイカのおかげで、キャバ嬢とかに自慢もできるし(笑)。BiSHのメンバーでもそういう感じになってほしいですよね。
――2023年12月には、豆柴の大群と都内某所の合併も発表されました。
渡辺: 残ってくれてるメンバーの子たちが続けるにはもう合併しかないと思ったし、そうなることで辞めた子もいるしね。それも含めて、WACKはただの“箱”のわけですよ。何かを表現したい奴がきっかけを掴む箱であって、自分のやりたいことをやりたいんだったら、それは独立したほうがいいんですよ。社員もそうだし、たとえばWACK社員が全員いなくなるとするじゃない? そうしたら潰れればいいんですよ。
――あはは! いいんですか。
渡辺:WACKと一緒に歩む人生じゃないんだったらすぐ辞めたほうがいいし、自分が作った会社だから自分の理論で話をするし。昔は「ちゃんと頑張ってほしいな」「俺が何とかしなきゃな」と思っていたんですけど、よく考えたら他人の人生を変えようなんて、できるはずないじゃないですか。
――そこは2年ぐらいで渡辺さんの考え方が大きく変わりましたね。
渡辺:そうですね。だから、めっちゃ前向きですよ。今のほうが水面下で動いてるプロジェクトが意外とあって、先のことをちゃんと考えられるようになったことによって回り出しているものがあるんですよ。ロンドンにいて、布団に入った時なんかに、ふと「あれ、俺なんでロンドンにいるんだろう?」と思うんです。たとえばですけど、僕はもちろん日本にいたほうが偉そうにできるわけです(笑)。BiSHたちのおかげでたくさん協力してくれる人もいるし、持ち上げてくれる人もいるし、きっと新しい何かも誰かとしやすいかもしれない。でも、そこには向いてないし、もっと新しいことをしたくなってマインドが変わったことがいちばんデカいかな。
――第3期BiSのアルバム『NEVER MiND』(今年2月リリース)を聴いたら、渡辺さんが作詞した「NO CHOiCE」がめちゃくちゃポジティブで驚いたんですよ。
渡辺:あはははは! ポジティブですよ(笑)。今回のBiSのアルバムは、久しぶりにめちゃめちゃ意見を出して、プロデューサーを引っ張っていきましたね。
――今年2月には、くだらない1日のWACK加入も発表されましたが、今後はバンドを増やしていきたいんですか?
渡辺:ロックバンドはずっと探していて、実は数年前から下北沢や新宿のライブハウスに夜な夜な出没して、いろんなバンド観ていたんですけど、ただただくだらない1日が衝撃だった。衝撃的ならやりたいし、そうじゃなかったら別にやりたくない。プロデュースしたくないんですよ。「こういう歌、作ろうよ」とか言いたくない。昔からずっと言っているみたいに、僕は(忌野)清志郎を発掘したいんですよね。アイドルとは全然違うと思いますね。
――出資しているALL INc.(LiVSが所属)、浪漫惑星に意見を言うことはないんですか?
渡辺:しないです。投資の観点で言うと、僕はエンジェルなので(笑)。基本的に口出ししないし、傾きそうになった時にお金を入れるぐらい。自分も口を出されたらイヤだし。潰れないような助けはしたいんですけど、潰れたら潰れたでいい。真っ赤っ赤だとしても、お金を捨てたつもりで渡しているので。