ロッド・スチュワート、15年ぶりの来日公演 サプライズ演出に満ちたハイライト続きの一夜

ロッド・スチュワート、15年ぶり来日レポ

 ロッド・スチュワートの来日公演『Live in Concert, One Last Time』が3月20日、東京・有明アリーナで開催された。

 定時を数分過ぎたところでドラムスとパーカッションが鳴り響き開演を告げ、総勢11人のバンドメンバーと共にロッド・スチュワートが登場した途端、特別な輝きを放つ魔法の空間が生まれる。

 嬌声ともどよめきとも言える声が響き渡る15年ぶりの来日。一公演だけという希少感から、80年代の来日公演のチケット争奪戦の記憶が生々しく蘇った人も多いに違いない。そんなさまざまな期待や声援にロッド流に応えた素晴らしいライブショーだった。

 軽くステップを踏みながら、このところのオープニングナンバーである、『Camouflage』(1984年)からのノリの良い「Infatuation」でスタート。続く、Facesの「Ooh La La」はびっくりのプレゼント。いまや伝説とも言いたいFacesの来日公演(1974年)に行ったぞ、というベテランファンなら、これ一曲で涙腺が崩壊したはず。最後にフィドルでリールミュージック風なアレンジが膨らんでいくなか、数年前から挑み苦戦中だというFacesのリユニオンアルバムを何とか、と強く思ってしまう。

 この懐かしいナンバーで一気に会場がロッドの掌中に収められ、さらにボニー・タイラーの名曲「It's A Heartache」でロック度を上げたかと思うと、次の「Forever Young」では、会場全体がロッドの若さを祝福するかのような声援を送るなか、フィドルに太鼓の女性メンバーでアイリッシュミュージックテイストを振りまき、コーラスの女性陣(Holly Brewer、Joanne Harper、Rebecca Kotte)もアイリッシュダンスを交えて盛り上げる。随所にスコティッシュである自身のルーツにつながるアレンジを入れ込みながら、これまで歩んできたロック的な体験や仲間への思いを表してくれるのが今回のライブの特徴で、「聴きたい曲、好きな曲は全部聴かせるぜ」と宣言したかのようにどれもこれもファンにはおなじみのナンバーが続くのは本当に最高の気分だ。

 次にCreedence Clearwater Revival(CCR)の「Have You Ever Seen the Rain」をタイトに歌ったかと思えば、続く「Baby Jane」ではド派手の極地をいくアンサンブルや、長年のパートナー、サックスのJimmy Robertsのヘヴィなソロを従え歌いきった。その後は60年代にキャット・スティーヴンスが作りP・P・アーノルドがヒットさせた「The First Cut Is the Deepest」をアコースティックセットにハープも交えじっくり聴かせる。

 そんな、一曲ごとに工夫が凝らされ、どれもハイライトと言いたいステージの中盤を盛り上げたのがリヴァプールに伝わるトラッドを巧みにアレンジした「Maggie May」。ロッドのソロでのファーストヒットでもあり、オーディエンスとのコール&レスポンス、ケルト的なテイストを振りまくグルーヴが前面に出てくるのも楽しい。次の『Foolish Behaviour』(1980年)からの「Passion」はここ十年、ほとんど取り上げられたことのない曲で、これもプレゼントの一つだったのか。そして個人的に今回一番泣けたのが、次の「I'd Rather Go Blind」だった。『Never a Dull Moment』(1972年)収録の名ソウルバラードで、これを60年代にカバーし、2022年に亡くなってしまったクリスティン・マクヴィー(元Fleetwood Mac、Chicken Shack)に捧げようと彼女のポートレートをスクリーンに映してからの歌唱はじつに染みた。

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