藤井 風『tiny desk concerts JAPAN』がとにかく圧巻だった 6名のメンバーと全うした日本版初ゲストとしての役割

 3月16日に放送された新番組『tiny desk concerts JAPAN』(NHK総合)が、とにかく圧巻だった。初回となった今回の放送には、先日「満ちてゆく」をリリースしたばかりの藤井 風が登場し、同曲を含む計6曲を披露。番組は終始なごやかな雰囲気で進み、この日だけの特別なアレンジで視聴者を楽しませた。演奏の合間に語りかけたかと思えば、次の瞬間には一気に視聴者を引きつける極上のアンサンブルへなだれ込む。総じて出演者全員が純粋に音楽を楽しんでいる様子が伝わるパフォーマンスで、それぞれが通じ合っている雰囲気が、音からも映像からも感じ取れる至極の30分間だった。

 
 
 
 
 
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 今年5月にニューヨークとロサンゼルスを巡るアメリカツアー『Fujii Kaze and the piano U.S. Tour』を開催することが決定し、さらに8月には日産スタジアムにてコンサートが行われることも発表された藤井 風。海外からの注目が集まっている現在のタイミングで放送された同番組は、今年の藤井のさらなる飛躍を抱かせるものだった。と同時に、昨今国外からもJ-POP人気が高まりつつあるなかで、現在のシーンのサウンド面を支える精鋭たちが集まった重要な放送だったようにも思う。

 そもそも『tiny desk concerts』とは、アメリカのNPR(公共ラジオ放送)が2008年から始めた世界的に人気の動画シリーズで、NPRのオフィスでさまざまなミュージシャンがセッションする映像を発信。これまでにテイラー・スウィフトやジャスティン・ビーバー、アデル、BTSといった名だたるアーティストが登場し、日本人ではCorneliusやCHAI、上原ひろみなどが出演したことがある。

 この企画の魅力は、何と言っても普段のライブとは一味違ったアットホームな雰囲気で行われる演奏だろう。音源とは違った特別なアレンジで、オフィスという日常空間の延長線上にある場ならではのリラックスしたムードのなかで繰り広げられるパフォーマンスが人気を集めている。

 今回の放送は、その日本版として発足する企画の第1弾。渋谷のNHKオフィスに藤井 風と6名のミュージシャンが参加し、貴重なライブパフォーマンスを披露した。注目すべきは参加したバンドメンバーだ。キーボードには藤井の多くの作品のサウンドプロデュースを手がけるYaffle、コーラスにはシンガーソングライターのYo-Seaとにしな、ギターにはDURAN、ベースには藤井の楽曲に参加したことのある勝矢匠、ドラムには工藤誠也、といった実力派の若手ミュージシャンが集結。こうした気鋭の面々による高いスキルやテクニックが発揮されていた。

 たとえば、にしなとYo-Seaの柔らかいバックコーラスは、ソウルフルな藤井の歌唱と抜群の相性を見せていた。特に「ガーデン」の終盤における、互いに魂がふれあうようなボーカルの見事な掛け合いには圧倒された。Yo-Seaは藤井について過去のインタビューで「日本語で、その人にしか出せない言葉で、リアルな感情を伝えているという点にすごく感銘を受けましたし、個人的にも藤井風さんの音楽に“救われた”という感覚があって。『自分もこういう音楽を作りたい』と思うようになりました」と発言していたことがある(※1)。藤井もメンバー紹介の際に、このコーラス2人に対して「spiritual brother/spiritual sister(心の友)」とひとこと添えていたため、同じミュージシャンとして共鳴するものがあるようだ。

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