藤井 風『tiny desk concerts JAPAN』がとにかく圧巻だった 6名のメンバーと全うした日本版初ゲストとしての役割

 Yaffleとの相性のよさは言うまでもない。とりわけメンバー紹介から「damn」へと流れていく際に見せていた、藤井の歌唱とYaffleのメロウなエレピの伴奏の絡み合いは、この放送で最も視聴者をリラックスさせた瞬間だったように思う。そこでの工藤誠也のドラムも目を引いた。山口県出身でアメリカ・テキサス州の大学に留学経験のある工藤は、緻密かつ安定感のあるグルーヴでバンドを支えていた。また、「きらり」のイントロでブルージーなラインをなぞっていたDURANのギターも見逃せない。感情表現豊かなプレイで楽曲に味付けし、なかでも「満ちてゆく」における中盤の重要なフレーズで天井を見上げながら弾いていたのが印象深い。ベースの勝矢匠は常に安定したプレイで全体を下支えしつつ、「死ぬのがいいわ」におけるバンド全体が絡み合う展開のなかで大きな存在感を発揮していた。どの瞬間も楽曲の持っている本来の魅力はそのままに、この企画特有のムードをまとった脱力感のある優しいテイストが加えられていたと感じる。

 そういう意味では、今回の放送は企画の魅力を最大限引き出したと言えるのではないか。純粋に音楽を楽しめる最高の音楽番組が始まったと、同番組の今後にも期待が膨らむ。きちんと整えられた録音物の魅力はもちろんだが、その場で生まれるセッションのよさも音楽の魅力の一つ。藤井は即興演奏のスキルも高いため、この企画の初ゲストとしての役割を全うしたと思うし、あらためてその実力を見せつけるいい機会になったはず。制作面でも今後の活動にいい影響があるかもしれない。直近の新曲「満ちてゆく」は今までと変わらないメンバーで制作されていたため、逆にこの番組でさまざまなミュージシャンと手を取り合う側面を垣間見ることができた。

 そして、こうした国際的なコンテンツで、日本の若手アーティスト/ミュージシャンのフックアップ的役割も果たされたと言える。そうした広い視野に立てば、日本の音楽シーンとしても重要な意味を持つ放送だった。

※1:https://spincoaster.com/interview-yo-sea

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