藤井風『LOVE ALL SERVE ALL』に見る、“言葉の人”としての姿 ソングライティングのセンスが根をはった一作に

 藤井風の2ndアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』(以下、『LASA』)がリリースされた。本稿の執筆段階でもすでに12万枚強(※オリコンデイリーアルバムランキング2022年3月22日~23日付を参照)を売り上げ、堂々たる結果を残しつつある。前作『HELP EVER HURT NEVER』(以下、『HEHN』)のリリース以後はもっぱら配信でのリリースを重ねており、昨年末の『第72回NHK紅白歌合戦』で歌唱した「きらり」「燃えよ」はどちらも配信オンリーだった。そんな「きらり」が冒頭をかざり、ほかにも「へでもねーよ」「燃えよ」「青春病」「旅路」等々の既発曲(アルバムエディット含む)を折り込みながらまとめられた、期待を裏切らない出来の一作だ。

 『LASA』からの先行シングルとして3月20日にリリースされた「まつり」ではGファンク的な香りをアクセントに用いながら、祭ばやしのようなグルーヴをタイトな16ビートのなかにじわっと紛れ込ませるウィットが光る。藤井風(およびサウンド面から藤井を支えるYaffle)の折衷感覚を象徴する一曲だ。ただ正直に言うとこの曲や「damn」などに聴かれるエレキギターの響きはちょっといなたすぎるというか、もう一息でクドくなるような感じで、そのあたりは個人的にすんなり飲み込みづらい。もっとも、サウンドや和声、節回しなどところどころに顔を出すAORやヨット・ロック的なエグみが、シルキーで甘やかな藤井のボーカルと組み合わさることで絶妙な魅力を放っているのも事実なのだが。

藤井 風 - "まつり" Official Video

 まわりくどい話になってしまったが、少しバランスを変えればクドさやいなたさ、あるいは渋さと裏腹の地味さに陥りそうなところ、気鋭のアーティストが放つポップアルバムとしての華も備えたアルバムに仕上がっているのが良い。「まつり」もややギミック的にも感じられる篠笛を単にノベルティな遊びにしてしまわないような抑制があるところに美点がある。「燃えよ」も、ビートのパターンからするともっとシャッフルさせてベースを強調し、2ステップや4x4のUKガラージ調にまとめて“今っぽさ”に振れそうなところで、それをあえて抑えているかのような印象がある。いつ古びるか知れないトレンドに回収されそうな要素とは距離をとっているような。こういった、「~しすぎない」という微妙な塩梅で仕上げられたのが『LASA』なのだろう。

藤井 風 - "燃えよ" Official Video

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