WOLF HOWL HARMONY、歌割やダンスで魅せる新たな王道 今だから語れるデビュー前の苦悩も

 LDH史上最大規模のオーディション『iCON Z ~Dreams For Children〜』から誕生したWOLF HOWL HARMONYが、2月14日に2ndシングル『Frozen Butterfly』をリリースした。表題曲「Frozen Butterfly」は冷たくスリリングなサウンドに、“心の中に凍らせたままの夢や本当の自分が、愛に出逢って自由に羽ばたいていく姿”を描いたという、ドラマティックなダンスチューン。土曜ナイトドラマ『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)の主題歌としても話題で、ドラマの勢いと共にWOLF HOWL HARMONYをお茶の間に浸透させている。またカップリングには、昨年末にインタビュー(※1)をお届けした先行配信曲「Sugar Honey」と、ライブでLOVERED(ファンネーム)と盛り上がる光景が浮かぶ「YOU&I」を収録。収録曲の制作秘話や、4人が『Frozen Butterfly』に重ねた“過去の自分”について語ってもらった。(斉藤碧)

「歌詞全部が自分たちを表していると言えるくらい共感できる」(SUZUKI)

――表題曲「Frozen Butterfly」(Lyric: YVES&ADAMS/Music: T.Kura・Chaki Zulu・JAY’ED)はドラマ主題歌としても話題ですが、初めからタイアップを見据えて作り始めたのでしょうか。

HIROTO

HIROTO:いえ、初めはタイアップを意識していなかったですね。僕らの今後の方向性をプロデューサーのみなさんと話し合った時に、「次はアップテンポの楽曲を出そう」っていう話になって。WOLF HOWL HARMONY初のアップチューンとして生まれたのが、「Frozen Butterfly」でした。(急に不安そうな表情になって)……だよね?

RYOJI:合ってるけど、GHEEちゃん、もう少し詳しく説明して(笑)。

GHEE:(笑)。今回も前作の「Sweet Rain」と同じく、T.Kuraさん、Chaki Zuluさん、DJ DARUMAさんが楽曲プロデュースをしてくださっているので、みなさんが僕らのために用意してくださったデモがすでに数曲あって。僕らは「次はこの中のどれかでいこうと思ってます」という3~4曲を聴かせていただいたんです。それが全曲めちゃくちゃカッコよくて! 中でも「たぶん、この曲だろうな」って思っていたのが、まだ名前もついていなかった「Frozen Butterfly」のビートだったので、「このビートに決定しました」って言われた時は嬉しかったです。

――歌詞はドラマタイアップが決まってからついたんですか?

GHEE:そうですね。でも、不倫や離婚を描いたドラマのストーリーに寄り添う部分もありながら、僕らがオーディション中に抱えていた苦悩や葛藤、メンバーと出会って一緒に夢に向かって羽ばたいていく姿など、実体験を織り交ぜた歌詞になっています。

SUZUKI:個人的には、歌詞全部が自分たちのことを表していると言っても過言ではないくらい、全パートに共感できる曲だなって思うんですけど、特にRYOJIが歌っている1番のAメロに共感しましたね。

RYOJI:〈顔のないプレッシャーに/うんざりしてた〉から〈いっそ何も感じないように〉まで?

SUZUKI:そう。僕とRYOJIはDEEP SQUADとしてすでにメジャーデビューをしていて、第二章からオーディションに参加した立場だったので、批判されることも多かったし、自分の中でもプレッシャーや不安を感じることが多々あって。最初は正直、しんどいなって思いながら取り組んでいたんですよ。で、こんなにしんどいんだったら、心を凍らせてしまおうと。夢を見ることや、楽しいとか嬉しいという感情さえも封印して、必死に歌やダンスに取り組んでいた時期が自分にもあったんです。だから、このフレーズがすごく刺さりました。

――SUZUKIさんが心を凍らせていた頃、RYOJIさんは?

RYOJI

RYOJI:僕も雄飛(THE JET BOY BANGERZ/DEEP SQUADの宇原雄飛)も、SUZUKIと同じ状況に置かれていて、たくさん悩みを抱えていました。「DEEP AQUADはどうなるの?」っていう不安の声をいただくこともありましたし、今でこそ大勢の方が応援してくださっていますが、当時は様々な意見をいただくこともありました。ただ、僕の場合は心を凍らせるというよりも、その言葉を心に留めておいて、結果で黙らせてやるっていう気持ちが強かったですね(笑)。

HIROTO:カッコいい(笑)。

RYOJI:当時の自分にはその方法しかなかったから。不安を感じている方にも、納得してもらえる結果を出そうと思っていました。そのためにも、たとえメンバーが心を閉ざしても、自分は絶対みんなの手を離さないぞと、そう思って接していましたね。きっと、3人も同じように思ってくれていたから、ここまで手を取りながらやってこれたんだと思います。

――GHEEさんとHIROTOさんは「Frozen Butterfly」の歌詞にどんな自分を重ねましたか?

GHEE:僕もRYOJIくんと同じ感覚で、オーディション中やデビュー当時は「プレッシャーをはねのけて、とにかく前に進むぞ!」という気持ちが強くて。どちらかというと、オーディションに参加する前の下積み時代に「Frozen Butterfly」のような心境を味わいました。僕は地元・静岡でやっていたトラックのドライバーの仕事を辞めて、歌手を目指して上京してきたんですが、当時はコロナ禍に入ったばかりで、本当に1人で歌と向き合っていたんです。その上、都内のライブハウスで歌っていたら「お前なんか無理だよ、歌手になれないよ」って面と向かって言ってくる人が結構いて。

――そんな失礼な人、いるんですか。

GHEE

GHEE:東京でアーティストデビューを目指している人は、当時の僕も含めて牙剝き出しの人が多いので、ライバル意識バチバチでぶつかってくるんです(苦笑)。もちろん、優しい人や応援してくれる人もたくさんいたんですけど、地元の人たちの中にも、20歳を過ぎて一から歌手を目指す自分のことを、「良い年してマジかよ」って白い目で見てくる人がいました。でも一番辛かったのは、出演したライブハウスの人に「才能がない」って言われたことですね。そう言われた時はボロボロ泣きましたし、今となっては本当に良くなかったなって反省しているんですけど、ムカつきすぎて自分の家の壁を殴って、小指の骨が折れました。

RYOJI・SUZUKI・HIROTO:え!?

RYOJI:そのエピソード、初めて聞いた……。

GHEE:恥ずかしいんだけど、人生で唯一骨折したのがそれ(笑)。その日以来、良くも悪くも「絶対アイツを見返してやる!」っていうのをモチベーションにして、ライブハウスに立っていました。

――GHEEさんは“顔のあるプレッシャー”と闘っていたんですね。

GHEE:そういうことです(笑)。

HIROTO:僕はもともと自分の意見を他人に伝えるのが苦手だったんですが、WOLFとして活動していくうちに、メンバーと話す時もそれ以外の場面でも、自分の考えを自分の言葉で伝えられるようになってきて。その変化が「Frozen Butterfly」の歌詞と重なるなって思いました。あと、このグループのメンバーが発表された当初、SNSで「WOLFは泥船だ」って言われていまして……(笑)。以前の自分はそういう〈顔のないプレッシャー〉をすごく気にするタイプだったので、心無い一言に引きずられていた時期もありましたね。

SUZUKI:HIROTOは高音が強みなのに、その高音が上手く出ない時期ね。あれは傍で見ていて辛かった。

HIROTO:しかも、自分たちの最初の曲であり、ファンネームにもなっている「LOVE RED」の一番大事なサビで声が裏返るっていう(苦笑)。最初は2回のうち1回だけ裏返っていたんですけど、それがクセになって全部裏返るようになっちゃって……。苦しい状態が半年以上続いていました。初めは他人の言葉がきっかけでしたけど、いつの間にか自分で自分にプレッシャーをかけていたんだと思います。

「“RYOJIはWOLFの1A担当でしょ”と言ってもらえて、可能性が広がった」(RYOJI)

――ではここからは、歌割やレコーディングのお話を。これまでの楽曲では、歌い出しはAメロ職人のSUZUKIさんが担当するというイメージが定着していましたが、どういう経緯でAメロをRYOJIさんが歌うことになったのでしょうか。

SUZUKI

SUZUKI:実はこの曲も、プリプロの時は僕がAメロを歌ってたんですよ。でも、ここは絶対RYOJIのほうが似合うって思ったので、「歌ってみなよ」って勧めました。

GHEE:スーくん、すごい言ってたもんね。「絶対RYOJIくんのほうがいい!」って。

HIROTO:言ってた!

RYOJI:で、そうなると他のパートの歌割も変更しないといけなくなるので、プリプロの段階で大幅に歌割が変わって。本REC(レコーディング)でさらに微調整を加えて、ようやく今の歌割になりましたね。

――それぞれ、どんなことにこだわってレコーディングしましたか?

RYOJI:「Frozen Butterfly」は2000年代のようなグルーヴィな曲だと感じたので、歌い出しを聴いただけで自然と身体が動くように、グルーヴをかなり意識して歌いましたね。それと、歌い出しで惹きつけたいという気持ちもあったので、1Aは少しブレッシーに。初めて聴く人でも「なんか懐かしい」と感じるような世界観を作れたらと思っていました。

――曲調も異彩を放っていますが、歌割や世界観の広げ方に関しても「Sugar Honey」までの楽曲で1つ確立された“WOLF HOWL HARMONYの王道”に、また新たな柱が加わったなと感じました。

RYOJI:自分ではまだ客観視できていないんですけど、「Frozen Butterfly」を聴いてくださったKEISEIさん(DEEP SQUAD)にも「RYOJIはWOLFの1A担当でしょ」って言ってもらえたので、こういう歌割もアリかも……? みたいな感じはありますね(笑)。曲調も歌割も、いろんな可能性が広がった1曲だなと思います。

――そんなAメロに続くのが、HIROTOさんとSUZUKIさんが歌い繋ぐBメロです。歌ってみていかがですか?

HIROTO:僕は1番だと〈Baby, Set me free, Set you free〉、2番だと〈Tell me, What you feel, What you need〉、3番だと〈Scrap & Build Scrap & Build〉というBメロの入りを担当しているんですけど、曲全体を見た時に、自分はみんなの歌を繋いだり、曲の流れを作る役目だなって思いましたね。だからこそ、聴いている人を飽きさせないように、ここで曲の空気をガラッと変えたくて。〈Baby〉の一言だけでも、アクセントや息の残し方、ニュアンスを細かく研究してレコーディングに臨みました。1番2番3番の表現も意識的に変えています。

――具体的にはどのように変えたんですか?

HIROTO:どのように……?(キョトン顔)

RYOJI:頑張れ(笑)。

HIROTO:(熟考してから、パッと表情が明るくなり)わかりました! 例えば1番の〈Baby〉と2番の〈Tell me〉だったら、〈Baby〉は笑顔で呼びかけるイメージなんですが、〈Tell me〉は少し強めに訴えかけるようなイメージで歌い分けました。感情の入れ具合の違いなので、言葉だけでは伝わりにくいと思うんですけど、MVを観ていただけると、なんとなく伝わるんじゃないかなと思います。

SUZUKI:僕はBメロの後半を歌っているんですが、RYOJIも言ったように、この曲はオールドスクールならではのグルーヴ感が肝なので、それが絶対になくならないようにしたいなと思っていましたね。なおかつ、Bメロはサビに向かって盛り上げていくパートなんですが、かといってBメロでトゥーマッチな歌い方をしてしまうと、サビでグッとキャッチできないので、そのバランスにこだわりました。4人でユニゾンしているサビの後に続く〈君は美しい〉も、この曲に込められたメッセージ性をしっかり表現できるように、感情を込めて歌わせていただいています。

――〈君は美しい〉は夢を追う人へのエールのように聴こえましたが、SUZUKIさんはどう解釈していますか?

SUZUKI:僕も「頑張ってる君は美しい」とか「歪な姿でも飛び立とうとしているあなたは美しい」と語りかける気持ちで歌いました。自分自身に言い聞かせる部分もありますね。ただ、中には恋人への言葉として聴こえる人もいるだろうし、ドラマと重ねて解釈する人もいるだろうし、そこは自由に受け取っていただけたらと思います。

――ユニゾンはどういう方向性で歌うか、事前に決めてからレコーディングしたんですか?

SUZUKI:決めてないですね。ユニゾンと言いつつ、誰も合わせにいってないです。

GHEE:“あえて”ね(笑)!

SUZUKI:そう、あえて(笑)。だから一人ひとりの音声を聴くと、声質も歌い方のニュアンスもバラバラで、ものすごく個性が際立っているんです。それなのに、4人の声を重ねると不思議と馴染むので、WOLFは本当に奇跡のバランスで成り立っているグループなんだなと実感しました。

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