EXILE THE SECOND、LDH最年長グループとしての開拓精神 アリーナツアーを見逃せない理由
EXILE THE SECONDが6年ぶりのアリーナツアー『EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2024 “THE FAR EAST COWBOYZ”』を3月7日より開催する。昨年行われた5年ぶりの全国ツアー『EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2023 ~Twilight Cinema~』では、メンバー5人が各地のホールを舞台に、“出会いと別れ”をテーマにした様々な情景を表現。情熱的でときに繊細なパフォーマンスが光る、見応え抜群のツアーとなった。『THE FAR EAST COWBOYZ』ではアリーナという大きな会場で、さらに深みとスケールを増したエンタテインメントを堪能できるに違いない。本稿では、そんなEXILE THE SECONDのライブの見どころを紐解いていく。(編集部)
EXILE THE SECONDを語るためのマナー
EXILE THE SECONDをはっきり意識するようになったのは、某局の番組収録を見学したことがきっかけである。収録後、楽屋フロアのエントランスに座っていると、ガラス扉が開く。颯爽と入ってきたのが、番組にゲスト出演したボーカルのEXILE SHOKICHI。正確には彼が入ってきた瞬間、僕は扉に対して背を向けていたので、すぐには気づかなかった。でも「その人では?」と脊髄反射的に反応してしまったのは、開閉に合わせて漂ってきた香水のため。
香りひとつでその存在を気づかせてしまうSHOKICHIの威風堂々たる佇まいに息を呑んだ。そうだ、この香りが想起させる楽曲がある。イントロのコーラス。フィンガースナップが刻むビート。バックトラックの合間を縫ってつんざく美声。ここまで約1分。ためにためて再び歌い出す〈Love〉の号令的な響き。Blackstreetの名ナンバー「Love’s In Need」のマジカルな一声を楽しみにするときめきと通じるものがある。夢の香りからマチュアな音楽へ……。妄想を中断して目を開けると、目の前にはSHOKICHIが談笑する姿が。
局の担当者に呼ばれてやっと我に返った僕は、この気が遠くなるような光景を思い返すほどに、SHOKICHIが愛好するあらゆるブラックミュージックの音像を鮮やかに浮かべる。あの日、彼が身にまとっていた黒いジャケットの色がビジュアル的にも裏書きしてくれる。偶然か必然か、ブラックミュージックの息吹に導かれながら、こうしてEXILE THE SECONDを聴くための前段階は、完璧にお膳立てされた。同時に彼らについて語るための、ある種のマナー(語り方)を身につけたようにも思うのだ。
今やLDH最年長グループとして熟達のケレン味を集約
「ここから新たなスタートを切るっていうのは、きっと僕らだけじゃなくて、後輩たちにとってもいろんな道標となるような提示をしていけるんじゃないか」
そう語るのは、2016年に加入したEXILE AKIRAだ。2023年に5年ぶりに開催された全国ツアー『EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2023 〜Twilight Cinema〜』京都公演。その舞台裏として、LDH独自の動画視聴サービス「CL」で配信されたもの。このコメントが単なる意気込み以上なのは、今やオリジナルメンバーが唯一残るLDH最年長グループメンバーとしての重みがあるからだ。その上で若い世代への配慮と代弁にもなっている。
シネマティックなコンセプトの全編、タイトルトラックである「Twilight Cinema」のパフォーマンスがきらめくのなんの。タキシード姿のメンバー5人が、熟達したアクトで聴衆を魅了したのは言うまでもない。クールで折り目正しいタキシードの裏地には、汗たぎる情熱を感じもする。冷静と情熱の間で彼らのパフォーマンスは高度な演舞にまで到達する。パフォーマーのアクロバティックな振り付けは、演武と形容してもいい。
ここでAKIRAが、香港映画界の巨匠 アンドリュー・ラウ監督作『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』(2010年)に出演したことが、まさか確信犯的に効いてくるとは。ドニー・イェン主演の同作は、ブルース・リーへのオマージュが込められたカンフー映画。ドニー自らアクション監督も兼任した。カンフー映画の撮影ではスタントマンたちが、まるでダンスグループのような動きで連帯する。凄みのある表情のインサートを印象づけるAKIRAがドニー相手に、アクロバティックなアクションを繰り出す様は、EXILE THE SECONDのパフォーマンスをカンフー映画的な熱量でも読み解いてくれる。
見た目はクール。その実ホット。そんな裏地をタキシードに縫いつける職人技は、Jr.EXILE世代にはまだまだ真似できない、ベテランのケレン味ではないか。Mr.セクシー、R&Bシンガー ジョーへのリスペクトを公言するSHOKICHIがあれだけの色気を香りひとつで発散できるのもこれで頷ける。大人の魅力を秘めた最強のグループメンバー5人全員は、アダルトな風を吹かせつつ、だだ漏れにすることがない。ちゃんと控えめなのも唯一無二のダンディな証拠。リーダー 橘ケンチが2023年に上梓した初の小説『パーマネント・ブルー』は、洗練と成熟の言語化に成功しているし、父がアフリカ系アメリカ人のボーカル EXILE NESMITHの鋼のフローとグルーヴ感は、オリジナルでもカバーでも鉄壁。あるいはパフォーマー EXILE TETSUYAは、横須賀生まれのストリート感とコーヒー文化を茶道の域にまで高める千利休ばりのアプローチでグループの精神性を底上げ。この個人の才能をぎゅっとひとつに集約すれば、そりゃ怖いものなんてないわけだ。