Eve、ドラマ『院内警察』&澤野弘之と生み出した鮮やかなケミストリー 主題歌「pray」での新たなチャレンジ
Eveの2024年第一弾となる配信シングルが1月13日にリリースされた。タイトルは「pray」。フジテレビ系金9ドラマ『院内警察』の主題歌として書き下ろされた楽曲である。Eveにとってはこれが初のテレビドラマ主題歌。原作:酒井義、漫画:林いちによるコミックを桐谷健太主演でドラマ化した本作は1月12日の放送開始からすでに話題となっているが、ドラマのシリアスな空気をさらに引き締めるように鳴り響くこの曲はすでにその物語を盛り上げる重要な要素となっている。
ドラマの主題歌という点だけでなく、楽曲そのものの成り立ちとしてもこの「pray」はEveにとってとても新鮮なものとなった。近年、とくにメジャーデビュー以降はシンガーソングライターとして自分自身で作詞作曲を行なってきた彼だが、この曲では『進撃の巨人』や『機動戦士ガンダム』シリーズなど数々のアニメやドラマ、映画などに楽曲を提供してきた作曲家・音楽プロデューサーの澤野弘之が楽曲提供。Eveは作詞と歌唱に専念し、澤野の生み出した豊かな音像のなかで美しいボーカルを響かせている。ドラマとEveという組み合わせに澤野という才能が加わって、三者で鮮やかなケミストリーを生み出していく、これはEveにとってまったく新しいチャレンジなのだ。
とはいえ、Eveの出自を振り返るならば、そもそもが歌い手としてキャリアをスタートさせたというのはファンであれば誰もが知っているとおり。いわば誰かの作ったメロディをいかに自分のものにして歌うか、というのが彼にとっての出発点であったわけで、そういう意味ではある種の「原点回帰」といってもいいのかもしれない。しかし、澤野という第一人者とのコラボレーションであること、そして何より歌詞をEve自身が手がけることによって、この曲はシンガーソングライターとしての彼とも、歌い手としての彼とも違う、いわば「第三のEve」と出会えるものになったといっていい。何せ、自身の書いた曲ではないのに、というよりもだからこそ、この「pray」はじつに「Eve」を感じさせるものになっているからだ。Eveが誰かの世界に乗り込んで歌うというのではなく、これまで時間をかけて築き上げてきたEveの世界に澤野やドラマを巻き込んでさらに広げてみせるような、静かな情熱とパワーを、楽曲全体から強く感じるのだ。
静かなピアノのループから始まる「pray」は、まさにそのタイトルどおり「祈り」のような厳かなムードのEveの声によって一気にドラマティックに展開していく。〈この街から見る夜は深く/月は陰り 風が鳴いている〉と書き起こされていく歌詞が主人公の孤独を浮かび上がらせ、〈どれだけ伝えたい言葉がある〉というサビがその奥にある激しい感情を掘り起こしていく。『院内警察』は桐谷演じる「院内刑事」の武良井治と瀬戸康史演じる天才外科医・榊原俊介の対立関係が軸に展開される物語だが、この歌詞はまるで2人それぞれの視点から世界を見るように書かれ、その上で、2人の奥底にある共通項を炙り出すようだ。〈正義も悪も 真実も嘘も/意味を成さない気がしてしまう〉という吐露はまさにドラマの主題そのもので、Eveはきっとドラマの物語に深く共鳴しながら、この歌詞を書き綴っていったのだろう。
もしかしたらそんな、ある種の客観的視点ゆえなのかもしれない。この曲の研ぎ澄まされた言葉選びは極めてシンプルで、かつ一語一語がリスナーの心に深く刺さるものになっている。これまでもEveの歌詞表現の鋭敏さはずっと評価されてきたが、この曲ではストイックなサウンドと相まって、その鋭さがますます際立っているのだ。そう、この曲は何よりもEveの歌う言葉が真ん中にある。澤野の作る音は壮大ではあるものの徹頭徹尾ミニマルで、必要以上の装飾を削ぎ落としたような印象を受ける。こういうサウンドだったからこそこの鋭利な言葉が生まれてきたのか、あるいはEveの歌詞がこのアレンジを呼んだのか、そのあたりの順番は定かではないが、結果的に、抑制的なサウンドとEveの歌の相乗効果が、この曲にずっしりとした重みを与えている。その意味でも、自身で作曲をしたか、あるいは楽曲提供を受けたかという違いにかかわらず、この曲を支配しているのはEveのメッセージであり、視線なのだ。
そこが、いわゆる「歌い手」として誰かの曲を歌うのとはまったく違う、この曲でEveが立っている境地である。もちろん歌詞はEveのものだという事実も大きいのだが、その歌詞に宿る、ドラマの物語に向けられた視点も含めて、「pray」のEveはより大きな視野でものごとを見渡し、それらすべてを包み込むようにしてEveの音楽を作り上げている。Eveの名を一躍知らしめた『呪術廻戦』での「廻廻奇譚」を筆頭に、これまで数々のアニメや映画、CMとのコラボレーションを行なってきたEveだが、それとはまたフェーズの違うコラボレーションが、今回は実現しているのではないかという気さえするのだ。
そういえば以前、Eveがアニメ『チェンソーマン』のエンディングに「ファイトソング」を書き下ろした際にあるメディアでインタビューする機会があったのだが、その際彼は「対面に作品がないとイメージできないものや生まれなかったものは絶対にある」と力強く断言していた。それはまさにそのとおりで、ここまでのEveの歩みを振り返ると、さまざまな作品との出会いを通して彼はEveの表現を拡張してきたといえる。それこそ最近でいえば「アルフォート」のCMソングとして書き下ろした「花嵐」もそんな1曲だと思う。この「pray」もまさにコラボレーションがなければ生まれなかった楽曲であるのは間違いないのだが、そこに澤野という新たなファクターが加わったことで、Eveの中でのイメージはさらに大きく膨れ上がったのだろう。
そして同時に、それをすべて呑み込んで作品として産み落とせるほど、Eveの世界は強靭なものになっていた。2023年はアリーナ規模でのライブを次々と繰り広げ、まさにアーティストとしてのスケールを一段上げる年となったわけだが、そんな1年を通して培った手応えや実感というものもあったのかもしれない。そんな今だからこそ、Eveはこの曲を間違いなく自分自身のものにすることができた。この曲の、どちらかといえば淡々としたメロディの中に潜む生命力は、今のEveがもつエネルギーそのものだという気がする。
■リリース情報
Digital Single『pray』
リリース日:2024年1月13日(土)
配信リンク:https://tf.lnk.to/pray
「pray」特設サイト:eveofficial-pray.com
■関連リンク
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