「誰でも愛が欲しいし居場所が欲しい」 chilldspot 比喩根が「愛哀」で掬い上げた同世代のリアル

チルズ比喩根が歌う同世代のリアル

ファンのメッセージから得られる“繋がっている”感覚

chilldspot比喩根インタビュー写真(撮影=垂水佳菜)

──他の楽曲についても聞かせてください。「遠吠え」はどのように作った曲ですか?

比喩根:「まどろみ」「キラーワード」「愛哀」が仕上がり、EPとしての作品を意識した時に、時期も考えて冬の楽曲はどうだろう? と。まず私が歌詞、コード、メロディをデモで作って、玲山とアレンジを2人で詰めていきました。「キラーワード」のアレンジも彼が入っているのですが、そこから1年も経たないうちにこんなに成長しているんだなと驚きましたね。

──歌詞の中でオオカミを比喩に使おうと思ったのは、どんな経緯があったのでしょう。

比喩根:まず、オオカミって「冬」っぽいじゃないですか(笑)。あと、NewJeansさんの「Ditto」という曲で、メンバーの一人が歌い出しのところにまるで赤ちゃんオオカミの遠吠えみたいなスキャットを入れていて。一人で寂しそうに歌っているのがずっと頭の片隅に残っていたので、そこからイメージを膨らませて歌詞を書き上げていきました。

──意外にもNewJeansの「Ditto」がインスパイア元だったのですね。では、最後に収録された「シーン」は?

比喩根:「遠吠え」を入れることも決まり、EPのラストをどう締めるかとなった時に、ストックから引っ張り出したのがこの曲でした。今から2年くらい前、アレンジャーのイーサンとジャスティンと私の3人で「何か曲を作ろう」とスタジオに入ったんです。その時にジャスティンが、「俺、夜に一人で散歩していて吉野家やコンビニを見かけるとめっちゃ安心するんだよね」と話し始めて。そこで立ち読みしたり、牛丼を食べたりしている人を見ると「一人じゃないんだ」と思うって。それを聞いて、「それめっちゃいいテーマじゃん。曲にしようよ」と言って生まれた曲です。

chilldspot比喩根インタビュー写真(撮影=垂水佳菜)

──〈どこかでなぜか分からない/繋がり 感じて/それだけで安心する夜〉とありますね。比喩根さんは何に対して「繋がり」を感じますか?

比喩根:聴いてくれている人と私は、知り合いじゃないしある意味では他人ですけど、歌詞やサウンドなどを通じてつながりを感じることってあるなと。コンビニや牛丼屋でたまたま居合わせた人も、きっと同じような感じなのかもしれないですね。今のこの瞬間を同じ場所で共有していることに、なぜだかホッとさせられるというか。ただそこにいるだけ、ただ好きなものが似ているだけでも、今日1日を生きるエネルギーくらいにはなってくれる。それがこの歌詞でいう「繋がり」なのかなと。

 ファンの方からは、たとえばインスタのDMとかで同じような気持ちを持ってくれている人からメッセージをいただくことがあるんですよね。会社で嫌なことがあったり、何かの病気で入院されていたり、そんな時に私の言葉で救われたって。私自身も、自分を救いたいと思って書いた曲だし、それを同じように感じてくれている人が、この世の中にたくさんいるんだなと思えるのはとても幸せなこと。「繋がっている」と感じられる瞬間でもありますね。

──なるほど。

比喩根:ただ、おそらく私はこの先chilldspotとして成功を収めたとしても、あるいは結婚して家族ができたとしても、ずっとどこかしら空洞を抱えているというか。自分の中にある孤独が埋まることはないと思っているんです。〈わたしが縋るのは私〉という歌詞もそうだったんですけど、縋るものが自分ではなく他者だと、その他者が壊れてしまう気がするんです。その、壊れない程度のギリギリのところで、お互いの寂しさを埋め合いたいと思うから、恋人や友達、人と人の関係が続けられるんじゃないかなって。

──比喩根さんのお話を聞いていると、いつも「人生何周目?」って思うんですよね(笑)。自分自身を思い切り俯瞰した視点を持たなければ、思いつかないようなことを時々おっしゃるので。

比喩根:いやいや、そんな恐縮です(笑)。人生、バリバリ一周目ですよ。

2024年は歌い方へのチャレンジも

chilldspot比喩根インタビュー写真(撮影=垂水佳菜)

──ところで2023年はどんな年でしたか?

比喩根:とにかくライブが多かったですね。ツアーがメインで1週間に2回くらいのペースでお客さんの前に立っていました。その前年は、少し大きめの会場で回数を抑えて回っていたのですが、2023年は初めて行く場所も含めてたくさん回った。目の前にいるお客さんの反応を直に確認しながら演奏したり歌ったりできたのはすごく有意義でした。「ライブが楽しいってこういうことなんだな」と心から実感できたし。逆にフェスでは、ものすごく大きなステージに立たせてもらったこともいい経験になって。どちらの楽しみや大切さを知ることができた1年だったと思います。

──ちなみに2023年、比喩根さんにインスピレーションを与えた作品は?

比喩根:やっぱり漫画が多いんですよね。最近だと『リボーンの棋士』がすごく良かったです。将棋漫画ですが、ふと見つけてからすごくハマってしまいました。プロ棋士として周りから期待されていた天才棋士の主人公が、年齢制限の掟により未来を断たれるのですが、そこから改めてプロ棋士を目指す成長物語なんです。自分自身はまだ大きな挫折を味わったことがないのですが、それを必死で乗り越えようとする主人公の姿には心揺さぶられますね。

──では、2024年の抱負を聞かせてください。

比喩根:すぐに2月からツアーが始まるのですが、今回は2022年の時のように大きめの会場を回るので、前回のツアーで感じた親近感を忘れずに、どれだけ自分たちの楽曲の世界観をより大きなステージで再現できるかに挑戦していきたいです。

 それと、個人的なチャレンジとしてはもっといろんな歌い方をしてみたいですね。聴く音楽のジャンルやスタイルも増えていく中で、たとえば思いっきりシャウトしてみるとか。前にスタッフさんから「思いっきり太い声でシャウトとかやっても面白いんじゃない?」と言われて「確かに!」と思ったんです。今年はシャウトから始まるゴリゴリのファンクミュージックとか、めちゃくちゃ激しいロックとか、スタイルを限定させずに挑戦してみたいですね。

トップス ¥24,200TAX IN (kotohayokozawa/ON TOKYO SHOWROOM)
シューズ¥33,000TAX IN (CAMPER/CAMPER JAPAN)
チョーカー¥29,150TAX IN (Hugo Kreit/THE FOUR-EYED)
その他スタイリスト私物

chilldspot、EP『まだらもよう』
『まだらもよう』

■リリース情報
『まだらもよう』
配信:https://lnk.to/madaramoyou

<収録楽曲>
M1.遠吠え
M2.まどろみ
M3.キラーワード (映画「隣人X –疑惑の彼女-」主題歌)
M4.愛哀
M5.シーン

■ツアー情報
『chilldspot 3rd one man tour “模様”』
チケット:整理番号付・全自由:4,500円(税込) ※ドリンク代別

ツアースケジュール
2024年2月2日(金)福岡BEAT STATION 18:30 / 19:00
2024年2月10日(土)名古屋ボトムライン 17:00 / 18:00
2024年2月11日(日)大阪BIGCAT  16:00 / 17:00
2024年2月17日(土)仙台 darwin  17:30 / 18:00
2024年2月21日(水)Zepp DiverCity  18:00 / 19:00

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