Sexy Zoneが最上級の愛をもって“Sexy Zone”を守り抜く 改名前最後のドームツアーを観て

 「最上級の愛をこの名前に込めてくれ」ーー初めてのドームツアーのセミファイナル公演、アンコールを終えたあと、その言葉に続いて響いた5万5004人による「We are Sexy Zone!」という叫びは、アイドルであること、佐藤勝利であること、中島健人であること、菊池風磨であること、松島聡であること、Sexy ZoneがSexy Zoneであること、そしてSexy Zoneについていくと決めたこと――そこにいた全員のすべてを肯定し、この先も続く道を走り続けるための糧にさえなるものだった。12月25日、東京ドーム。実に2時間50分。彼らは何度も何度も感謝を伝え、何度も何度も“Sexy Zone”という名前を叫び、そしてステージを後にした。

 18時定刻、会場をオレンジ色の照明が染めていく。ライブは、『SEXY ZONE LIVE TOUR 2023 ChapterⅡ in DOME』の旅へと誘うための映像からスタート。夜の東京の街をイメージしたステージセットの意味が鮮明になっていく。映像が終わると、センターステージに現れたメンバー。Sexy Zoneという名を背負った最後のツアー、そのスターターを任されたのは、最新シングル「人生遊戯」だった。菊池が「Ladies and Gentlemen, Boys and Girls, Welcome to Sexy Zone!」と叫び、その勢いのままラップパートへと繋ぐ。ラストのサビで舞う金色の吹雪。盛り上がりはすでにクライマックスのようでもあった。

 「Sexy東京ドーム!」という中島の開幕宣言を経て、メンバーはクレーンに乗り込み「Try This One More Time」へ。中島が「今日は後悔のない時間を過ごさせます、よろしく」とメッセージを伝え、それに続いて「“Sexy Zone”って叫べるの、これが最後なんだぞ!」と叫んで煽る菊池。松島が「僕もみんなに会いたかったよ〜」と甘く語りかけたかと思えば、一転して佐藤が「盛り上がれるか!」と再びアジテートする。そのパワーを持ったまま、「麒麟の子」を後方ステージでパフォーマンス。4人が背中を合わせてそれぞれが四方を向くフォーメーションには、今の彼らの信頼関係が表れているようだった。そこから「Freak your body」(この日の松島の曲中アドリブは「抱いてやるから声出せよ」)、「BUMP」、「RIGHT NEXT TO YOU」へとなだれ込んでいく。

 キャバクラを舞台にした幕間映像を挟み、ボーイ衣装に身を包んで届けられた「君にHITOMEBORE」の曲中、ステージに出現したシャンパンタワーにシャンパンを注いでいくメンバーたち。佐藤、中島、菊池がクールな表情でタワーを完成させる一方、松島だけは満面の笑みである。こういうアンバランスな感じも、すごくSexy Zoneらしい。そして、コールver.の「スキすぎて」で繰り広げられるイッキ飲みリレー(グラスの中身は水)。エンターテインメントとしてのポテンシャルが披露されたブロックだった。

 黒のノースリーブTシャツに、同じく黒のダメージパンツを合わせ、金色のアクセサリーを身につけた菊池がステージに戻ってきた。アルバム『ChapterⅡ』収録の自身のソロ曲「My World」で、会場をバウンスさせる。菊池のステージを終えると暗転、メインステージに現れたのは玉座に腰を下ろした中島だった。そこへ菊池が歩み寄り、グラスとグラスを「チンッ」と合わせて乾杯。「ROSSO」へとバトンタッチした。ダークでアダルトなステージのなか、中島の目が妖しげに光る。メロディと歌詞の意味を超えた部分を明確にしているのは、彼の目が果たす役割が大きいと思う。音楽だけではない。演技やたった一枚の写真、話す時であっても、その意味を正しく導いていく力が中島の目にはある。ひとりで「ROSSO」を歌い踊り上げたステージを観て、あらためて思った。

 「THE FINEST」、「EXTACY LUV」、「LET'S MUSIC」、「再会の合図」、「ぎゅっと」まで、動くセンターステージで、乗り込んだトロッコで、大歓声を浴びながら、5曲をノンストップで歌い繋ぎ、この日初めてのMCタイムへ。クリスマスということで、ミニコスプレをする流れとなる。じゃんけんでアイテムを選ぶ順番を決め、菊池はサンタ帽モチーフのカチューシャ、松島はトナカイのかぶりもの、佐藤は緑色の帽子のついたカチューシャ、中島はブラックサンタ帽にツリーを模したメガネをセレクト。記念撮影やクリスマストークを挟むと、「精密採点Ai」を使用したカラオケコーナーへと突入した。このコーナーは、「せめて夢の中でだけは君を抱きしめて眠りたい」を課題曲として、ツアーの各公演での点数を上回り、最高得点を更新することを目指すというもの。音程バーへの命中を狙いながら、ビブラートなど個々の技術も駆使して歌い上げる4人。「結構(点数が)いったんじゃない?」「いった!」「技術点高いよ!」「初めて“フォール”ついたんじゃない?」と、曲を歌い終えた途端に感想と実感を口にする。しかし点数は91点と記録更新には届かず。「音程は大体取れています」という評価コメントに対し、表現力のポイントが低いことに嘆くも、昨夜の公演よりも点数がいいこと、初めてフォールを繰り出せたことはポジティブに受け止める。切り替えの速さも、12年間で培ったひとつの能力だ。

 アルバム『ChapterⅡ』にも収録されている「Cream」は、iriによる提供曲。作詞はiri、作曲はiriとYaffle、編曲はYaffleが手がけた。冒頭のメロウなサウンドに乗せて歌われるのは、“日々”における変化への刹那。マイクを通して歌い放たれる〈これからこれなら/飛び出せるかな〉〈愛おしくてやるせないけど/待ったなしの日々を越え/あたらしい君の声を聞かせて〉という歌詞が、どこか今のSexy Zoneを巡るものに重なっていく。今歌うからこそ、新しい角度と深度で感じられる本質がそこにはあった。

 ポップな音楽に乗せてメインステージに登場したのはパンダ、うさぎ、ゾウ、サルなど9匹の動物の着ぐるみたち。キュートに踊るなか、ライオンの着ぐるみのなかから佐藤が現れ、「雨に唄えば」のイントロへと繋がれていく。佐藤自身が作詞を手がけたこの曲。少し不器用な面もある佐藤が綴る歌詞は、しかしどこまでも素直だ。ファンタジーなサウンド感で展開される「雨に唄えば」だが、ただひとつ〈僕は無敵ここでは〉という言葉が、グループにおいて佐藤の実感そのもののように強く響く。そこから松島のソロ曲「Turbulence」へ。ペンライトも消えた暗闇のなか、スモークの焚かれた後方ステージで目まぐるしく展開されるパフォーマンス。スクリーンはモノクロの映像に変わり、つい先ほどまでおどける姿を連発していた松島のどこかセンチメンタルで繊細な部分が浮き彫りになっていく。ふたりのソロステージに攻撃的なものは一切なく、一つひとつの言葉が、一つひとつの動きが、正直なまま、等身大として伝わってくる。

関連記事