B'z 松本孝弘や影山ヒロノブらに影響 ジョージ紫&Chris、日本HR/HMシーン黎明期を生きた紫の現在

紫、HR/HM黎明期を生きたバンドの現在

疾風の如く駆け抜けていったからみんなの記憶に残った(Chris)

Chris
Chris

ーー今年8月にリリースされたニューアルバム『TIMELESS』にも「Starship Rock ’n’ Rollers」や「Double Dealing Woman」といった過去の楽曲の新録バージョンが収録されていますが、どこか新曲を聴く感覚で楽しめましたし。

Chris:そういう意図もあって再録しました。特に「Starship Rock ’n’ Rollers」は、16年前に僕が紫に加入したときに「この曲をやりたい」と僕から言ったんです。これは絶対にJJのキーに合っていると思ったし。

ーーその『TIMELESS』ですが、今年初頭に公開されたドキュメンタリー映画『紫 MURASAKI 伝説のロック・スピリッツ』の中でも制作過程が紹介されたファストチューン「Raise Your Voice」からスタートする攻めた内容で、僕も延々とリピートしています。

Chris:これはよく言っているんですけど、僕とほかのメンバーは30歳近く離れていて。自分が30年後にあの曲をやるのは嫌ですものね(笑)。

ジョージ:ドラムとかギターのことを考えたら、もうちょっとテンポを落としたほうがいいんでしょうけど、僕もスピード感があるほうが好きだし、テンポを下げたら面白くなくなりますからね。

Chris:全然テンポを上げてもいいんだけど、苦労するのはほかのメンバーですから(笑)。

ーーあのガツンと攻める「Raise Your Voice」が1曲目にあるから、そのあとにディープな方向へいくらでも広げていけますものね。

Chris:「Raise Your Voice」のギターリフはハードロックやヘヴィメタル的には王道感が強くてキャッチーじゃないですか。そこを1曲目で提示できたから、あとは変拍子を含むプログレッシヴな要素とか、しっとりとしたバラードとかいろんなことに挑戦できたんだと思います。

ーー僕はこのアルバムを聴き終えたとき、「これが日本のハードロック/ヘヴィメタルのスタンダードなんじゃないか」と思ったんです。それくらい、このジャンルに求める要素のすべてが詰まった1枚だと確信しています。

ジョージ:ありがとう。

Chris:世代的には僕はMetallicaとかPanteraとかを通ってきたけど、それを紫に全部落とし込むのは無理なことで。でも、そういう匂いをジョージさんたちが昔から培ってきたものの中にミックスさせることが、自分の役割だと思っています。

ジョージ:僕自身は昔のハードロックだけにこだわっていないですし、彼が今挙げたようなバンドのほかにもDream TheaterやTransatlanticみたいなプログレッシヴなバンド、Greta Van FleetやHalestormのような若い世代のバンドも聴きますからね。

ーーまた、激しさを伴うハードなサウンドが軸だからこそ、アルバムでは「Younger Days」や「Tears of Joy」のようなバラードタイプの曲がより映えるんですよね。

Chris:このメンバーになってから制作したアルバムには、毎回必ずそういうバラードを入れているんですけど、僕自身がこういうタイプの楽曲が好きなんです。だから、制作しているときの気持ちの入れ方がほかの楽曲とはちょっと違って、よりエモーショナルさを注ぎ込むことができているのかもしれません。激しい曲の場合はノリや勢い重視で進められるところも多少あるけど、バラード系だとより繊細さが求められるから、だから余計にグッとくる部分が出てしまうのかなと。

ーーこのバラード2曲って、僕らが聴いてきた海外のロックというよりは日本人の琴線に触れるメロディやサウンド感なのかな、という印象も受けました。

ジョージ:僕もそう感じています。

Chris:もちろん意図的にそうしたわけではないので、知らず知らずのうちにお互いそういう要素を自然と出せるようになった結果でしょうね。でも、紫の曲作りに関して言うと、僕は曲構成のパターンは意識しているかも。特にこういうバラードの場合だと、曲の導入とサビをつなぐためにブリッジ(Bメロ)を入れてしまうことが多いので、そのへんは日本の歌謡曲やポップスからの影響は少なからずあると思います。

紫

ーー1stアルバム『MURASAKI』をオマージュしたアートワークも含め、『TIMELESS』というアルバムタイトルがぴったりな1枚になりましたね。

Chris:今作に関しては楽曲制作が先に始まって、あとからタイトルやジャケットについて考えたんです。でも、楽曲のテーマ含め意図せずこういうタイトルやジャケットにつながっていったので、奇跡的ではありますよね。

ーー「Double Dealing Woman」にCharさんとBOWWOWの山本恭司さんがゲスト参加したのも、1977年の『NEW WAVE CONCERT』での共演の再現でもありますし。

Chris:そういうタイミングが今年、全部噛み合ったんですよね。もともと「Double Dealing Woman」の再録も、このアルバムを買ってくれた人へのボーナストラックみたいな意味合いだったんですけど、気づけばこれも『TIMELESS』というタイトルにつながりましたし。このタイトルはジョージさんの発案なんですが、見た瞬間に「これだ!」と思いましたから。

ジョージ:短くてわかりやすいですし、バンドのスタンスにもぴったりだと思ったんです。

ーーそれにしても、コロナ禍を抜けた2023年はパズルのピースがすべて噛み合ったかのような1年になりましたね。

Chris:逆に、今年じゃなければダメだったのかもしれないですよね。ほかのメンバーに合わせて「ちょっとずつペースを上げていこうか」という感覚だったら、年齢的な問題もあってできなかったかもしれないですし。でも、2022年にドキュメンタリー映画を制作したときに、その流れに乗ろうと決めたときに周りも一緒に動いてくれたことで、すべてのタイミングが噛み合ったんです。

ーーその2023年を締めくくるライブが、12月に沖縄と東京で開催されます。17日の恵比寿The Garden Hall公演には、山本恭司さんもゲスト出演することが決定しています。

Chris:「Double Dealing Woman」でのコラボがあって、この夏には日比谷野音でも共演し、来年のスウェーデンでの『Time To Rock Festival』にはBOWWOWさんも出演される。そういう縁もあるので、今回の東京でも一緒にできたらいいなと打診したら、スケジュールが偶然空いていたんです。これもタイミングと縁ですよね。

ーーどんなライブになりそうですか?

Chris:『TIMELESS』というライブタイトルにもあるように、新作からの楽曲ももちろん演奏するんですけど、紫という長い歴史の中で僕が入ってからの16年の楽曲と、1970年代当時の楽曲を今回は完全に分けたいなと思っていて。そこをベースにライブの構成を考えています。

ジョージ:恭司さんとはもちろん「Double Dealing Woman」を一緒に演奏しますが、もしかしたらそれ以外にもDeep Purpleのカバーとかやるかもしれませんし。最終的には当日を楽しみにしておいてほしいです。

Chris:この取材期間が終わって沖縄に戻ったらリハーサルが始まるので、僕らも今から楽しみです。

ーーその後も、来年夏にはスウェーデンでの『Time To Rock Festival』出演も控えていますし。ドキュメンタリー映画公開以降の流れは、この50数年の紫の歴史の中でもかなり特別なものになりましたね。

Chris:1970年代を疾風の如く駆け抜けていったからみんなの記憶に残ったわけで、それがなかったらスウェーデンでのフェス出演も実現していなかったでしょうし。

ジョージ:解散していなかったらヨーロッパツアーできたかもしれないのに、と何度も残念に思ったこともありましたけど、解散していなかったらこの未来はなかったわけですからね。そう思うと、すべて間違いではなかったんだと今になって感じています。

■ライブ情報
『紫 MURASAKI CONCERT TOUR:TIMELESS — 混迷の時代を超えろ』【東京公演】
日程:2023年12月17日(日)
時間:開場 16:00 開演 17:00
会場:恵比寿The Garden Hall
出演:紫 -MURASAKI-
料金:プレミアムシート 15,000円( 税込 プレミアム専用ラウンジ 2ドリンク・1タパス付き)
   指定席 9,000円(税込・ドリンク代別)
券売:チケットぴあ
問合:ホットスタッフ・プロモーション 050-5211-6077(平日12:00〜18:00)
客席内での飲食物持ち込みは禁止となっております。ご飲食はロビーにてお願いいたします。
途中インターバル(休憩)あり

公式サイト:https://www.red-hot.ne.jp/sp/murasaki/

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