クボタカイ、『返事はいらない』リリースツアーレポート 最終公演で届けた19の“手紙”
クボタカイにとって、音楽は“手紙”だという。誰かに手紙を書くような気持ちで制作したという13曲が詰まった2ndアルバム『返事はいらない』。アルバムを携えてのツアー『クボタカイ 2nd Album Release Tour 2023「返事はいらない」』が、11月17日東京・渋谷WWWにてファイナルを迎えた。
定刻になり、暗転した会場にまずバンドメンバーが登場。厚みのあるバンドサウンドが高揚感を誘い、赤・青・緑の鮮やかなライトがステージを彩るなか、「いけるか東京ー!」と叫びながらクボタがステージへ現れた。1曲目は「MIDNIGHT DANCING」。アルバムのリリースツアーということで、最初はアルバムの曲からスタートするかと思っていたため、この選曲は意外だったが、「今宵は何もかも忘れて楽しもう」というメッセージなのかもしれない。〈MIDNIGHT DANCING/ゆれる まわるふれる 息を止める。〉という歌詞のように、演奏に身を委ねて体を揺らすオーディエンスの姿があふれていた。
ここからは、『返事はいらない』の収録曲が中心に届けられていく。スタンドマイクで「タイムリミット」を披露したあとは、ハンドマイクに切り替えて「ひらめき」を歌唱。クボタはステージを左右に行き来しながら、「東京! 東京!」とフロアを煽っていく。夏の終わりの切なさを歌った「バニラ」では、優しい歌声とバンドの穏やかなサウンドが会場を包み込んだ。
MCでは「リリースツアーへようこそ! 楽しんでますか?」とフロアへ呼びかけ、反応を見て「ちょっと緊張してるな?」と笑いかける。そんなオーディエンスの緊張を解きほぐすように、「せっかくだからお集まりの皆さんに即興の手紙を」と、「拝啓」でフリースタイルラップを披露。〈笑顔と拍手がありがたいのさ〉〈即興は面白い〉と、この瞬間に彼が感じたことが音楽と言葉を通じてリアルタイムに届けられていった。
その後も「エックスフレンド」「カップル」「Sunset City」とアルバム収録曲を惜しみなく披露。しっとりしたピアノの前奏で始まった「せいかつ」では、クボタはアコースティックギターを抱え、一つひとつの歌詞を語りかけるように歌声を届けた。この時ばかりは派手な照明演出もなし。それが日常の一場面を切り取った歌詞と絶妙にリンクしているように思える。そんな素朴な雰囲気から一転、青白いライトが幻想的に彩った「隣」では、終盤にかけてバンドサウンドも重厚感を増していってドラマチックだった。