MIYAVI、活動20周年で打ち出す新たなロックスター像 アジア圏ツアーで強めた平和への願い

MIYAVI、新たなロックスター像

海外ツアーで見つめ直した自分がやるべきこと

MIYAVI

ーーその2公演を終えてからヨーロッパや中国などをまわるツアーも開催。この地区でのツアーは2019年以来だったそうですね。

MIYAVI:今回のツアーもちょうど中国に入る直前にガザの問題があり、その前にはテルアビブでの音楽フェスティバルが襲撃された。そういう出来事が日々起こっていることに対して、自分はどう発信すればいいか、どういうことが言えるのか。いざステージに立ったらそのことだけを引きずったまま演奏はできない。目の前にはチケットを買ってMIYAVIのショーを純粋に楽しみに来ている人たちがいて、そこで僕は完全なロックスターとして存在している。でも、その中で自分に言えるメッセージがある。そのバランスの狭間で日々を過ごしていました。

 北京公演の日(10月18日)も「一帯一路」(中国の習近平国家主席が提唱した巨大経済圏構想)の国際フォーラムが行われていて、ライブ会場が天安門広場から近くだったんです。その国際フォーラムにはロシアのプーチン大統領をはじめ、各国の要人が参加されていたので、当然街中厳戒態勢で規制も強く、僕たち以外のイベントは全部キャンセルになったと聞きました。僕もタトゥーを全部隠さなくちゃいけなかったり、正直いろいろと制限はありました。でも、僕は別にタトゥーを見せに行っているわけでもなければ、他の国の体制を変えに行っているわけでもない。音楽を通じて平和や国境を超えてひとつになることの素晴らしさを歌いに来ている。そこをまっとうするのみ。ステージに上がっているときはプロとして、目の前の人たちに完全なエンターテインメントを届けること、そして伝えるべきメッセージを伝えることが大事なんです。

 ちょっと話が逸れましたけど、とにかくヨーロッパと中国、アジアに行って、結構過密でしたが、ガツっとやってきました。どの街にもずっとMIYAVIを応援し続けてくれる人たちがいて、改めてありがたいなと思ったし、同時にもっと頑張らなきゃなと。ドイツのボーフムという街でライブをしたんですが、僕と全く同じタトゥーをしている男の子がいたんです。これまでも僕のサインや、楽曲の歌詞をタトゥーにしている子はいたけど、さすがに僕と全く同じタトゥーが全身に入っている子は初めて。「えーっ、マジか!?」と(笑)。さすがに驚いてしまって。このタトゥーの意味合いは僕の人生のものではあるんだけど、でも、それも含めて入れたんだったら後悔なく生きていってほしいし、入れたことを誇りに思ってほしい。賛否両論あると思うけど、僕はアーティストとしてうれしかったから、逆に彼のためにも頑張らなくちゃと感じさせられました。

ーーなるほど。当初想定していたものよりも、タイミング的にもいろんな意味を持つ海外ツアーになりましたね。

MIYAVI:そうですね。正直、もっとこのセットでやりたいなという気持ちはあります。日本は結局2本だけだったので。実は、当初は全国をまわりたいと言っていたんです。でもぶっちゃけ会場を押さえるのがすごく大変で。コロナ禍明けでみんなライブを頑張ってるでしょ。実際、週末限定でやろうかというアイデアもあったんだけど、これは無理だとなって、結果大阪と東京だけになったんです。なので、もっとまわりたいですね。誰か会場押さえて(笑)。

ーー話題は変わりますが、MIYAVIさんは音楽のみならず俳優業やモデル業など、常に新しい表現に挑戦しています。それこそ、最近はメタバースプロジェクトも立ち上げましたが、MIYAVIさんの中では新しい道を切り拓いていくうえでモチベーションになっているものとは?

MIYAVI:自分がまずワクワクできるかどうか、が大きいですよね。メタバースにしても、新しいことをいち早く始めることで、僕がちょうどいい実験台にもなるでしょうし(笑)。海外ツアーをやり始めたのも含め……もっと前にはギターウルフさんとか、さらに前にはYMO(イエロー・マジック・オーケストラ)もやっていたけど、僕らの世代でいうと結構早い方になると思うので、いろんな試行錯誤もしてきました。それと同じくらいいろんな景色を見せて来られたのかなと。中には割に合わない部分もあるんですけど、やっぱり自分がワクワクできるかどうか、そしてそれをファンのみんなと共有できるかどうか、という基準でやっているので、そういった意味では毎回大変ですけど、そこでの発見もたくさんあります。それが自分の糧となって、パフォーマーやアーティストとしての強みに結びついているのかなと思います。

ーーでは、そんなMIYAVIさんにとってターニングポイントというと、どのタイミングでしょう?

MIYAVI:いやあ、毎日がターニングポイントですよ。もちろん一番大きいのはソロデビューして歌い始めたことですけど、ワールドツアーを始めたことも、独立したことも、家庭を持ったこともそうですし、あとはハリウッドの映画に出演したこともそう。UNHCRの親善大使になったこと、アメリカに移住したこともそうですし……まあ、いつもバタバタしてますよね(笑)。本当はここまでバタバタしなくていいんですけどね。アルバムを作って、ツアーをして打ち上げをして、ちょっと休んだらまたアルバムを作って、その安定したサイクルで本当はいいはずなんですけど、僕には無理なんでしょうね。

 でも、今年はあまりほかの仕事をしていないというか、音楽面でMIYAVIとしてのロックスター像というものをレベルアップさせる段階にきています。夏はブラジルとかシンガポールに行って、ちょっとバテたりもしていたんだけど(笑)。今回ヨーロッパやアジア圏をまわって「まだやれるな」と確信できましたし。日程はなかなかでしたけど、1カ月ダラダラやるより2週間ごとに詰め込んでバババっとやった方がメリハリが付いて、僕はそっちの方が好きですね。詰め込んででも短くした方が、ギアをグングン上げていけるから。

 この前の上海から香港までの行程も、結構詰まってたけどどんどん加速していけた。10月21日に上海でライブをやって、朝4~5時に移動で広州に入って、その日のライブが終わったら現地のクルーと打ち上げをして、次の朝には台湾に入って。そのまま台湾クルーとミーティング、交流を深めて翌日に台湾でライブをして、終わったら翌朝3時起きで香港に移動してライブ、みたいな。5日間で4公演という(笑)。飛行機移動はなかなか大変ですよね。それでも、毎回最高のパフォーマンスができる自信はあります。そういう意味では少しは強くなったのかなと。

ーーそうこうしているうちに、11月21日からはTHE LAST ROCKSTARSとしてのライブがありますね。刺激という点においても、そこでの活動や各メンバーからいろいろ得られていると思いますが、今のMIYAVIさんにとってのTHE LAST ROCKSTARSの存在とは?

MIYAVI:メンバーはみんな、僕にとってもすごく大事なお兄ちゃんたちであり大先輩でもあり、そういった意味ではこの日本……いや、日本だけじゃなくて世界中で独自の道を切り拓いてきた人たち。まさかこうやってバンドを組むとは思っていなかった。年齢も離れているし世代も違うけど、同じ志のもと活動している。そこが僕たちの集まった理由でもあるのかな。僕はソロデビューする前は、もともとDué le quartzというバンドをやっていて、そのときのメンバーもみんな年上だったんです。だからなのか、個人的にはあのときの感じがよみがえってきて、「バンドっていいな」と心の底から思えるというか。さすがに、この4人でコンビニの前にたむろして、ジュースを飲むとかそんなことはないけど(笑)。ステージで喋ってると、それに近いような感覚はあるというか。ああだこうだとワイワイやっている、その楽しさは正直感じます。僕はずっとソロでやってきて、自分がすべてハンドリングしてきました。このバンドだと委ねられる部分も頼れる部分もあるから、そういった意味でもその余白を純粋に楽しんでいます。

ーー最後の質問になりますが、ここから先のMIYAVIさんの展開について。今思い描いている未来予想図はどういったものでしょう?

MIYAVI:本当は今年、アルバムを出してツアーもしようかと思っていたんですけど、ちょっと“溜めた”んですね。僕はこの“溜める”ということを今までやったことがなかったので、ある種不安な気持ちもあります。コロナ禍でもガンガン進んできたわけですからね。でも、インプットがあってアウトプットがあるように、そこの余白を作ることも大事かなと。例えるなら、僕はいつも基本分割睡眠ですが、筋肉を完全に回復させるためにはしっかり睡眠をとることも重要。当たり前のことですが、そういったオンオフのダイナミックさを大きくしてる。そういった意味では次の作品は確実にレベルアップした音とパフォーマンスをファンのみんなに届けられるんじゃないかと思っています。というのも、大阪と東京でライブをして、そのあとにヨーロッパ、中国、アジアをまわりましたが、どのライブも雰囲気がよかった。言葉ではうまく言い表せられないんだけど、どれもただ熱かったとかじゃなくて、すごく未来を感じられるライブだった。過去の曲を演ってるんだけど、同時に未来を見ることができたライブだったと思うし、ここで得たことも含めて音に集中して、新しいロックスター像というものを確立したいなと思っていて。まだまだ試行錯誤している部分もあるんですけど、すでに出口は見えているから、今年中にそこをレベルアップさせたものを自分が掴んで、ファンのみんなに形として届けられるように頑張ります。

■放送情報
MIYAVI 20th ANNIVERSARY WOWOW SPECIAL

●MIYAVI Interview & Document
11月29日(水)午後9:00 [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※放送終了後~アーカイブ配信あり

●MIYAVI “20th & Beyond” Japan Tour 2023
12月13日(水)午後9:00 [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※リピート放送
※放送終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
収録日:2023年9月18日
収録場所:東京 LINE CUBE SHIBUYA

●MIYAVI Music Video Collection
12月14日(木)午前0:15(12月13日(水)24:15~)[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※リピート放送

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●THE LAST ROCKSTARS Live Debut 2023 Tokyo - New York - Los Angeles
11月29日(水)午後10:00 [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※リピート放送
※放送終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
収録日:2023年1月27日
収録場所:東京 有明アリーナ

■関連リンク
番組サイト:https://www.wowow.co.jp/music/miyavi/

■WOWOWオンデマンドについて
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詳細:https://wod.wowow.co.jp/

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