Mrs. GREEN APPLE、スピッツ、井上陽水……Kitriが語る、ピアノ連弾で再構築した時を超える名曲の魅力

Kitri、往年ポップスの再構築

 クラシックをルーツとしながら、古今東西さまざまな音楽に影響された唯一無二の世界観を作り出す、MonaとHinaの姉妹ユニットKitriが、昭和、平成、そして令和と時代を超えて愛され続ける名曲をカバーした全15曲入りのアルバム『Re:cover 2in1』をリリースした。

Kitri カバーベスト「Re:cover 2in1」ダイジェスト映像

 今作は、配信限定アルバム『Re:cover』より4曲、2ndアルバム『Kitrist Ⅱ』より1曲、そして新たに録音した10曲を合わせた全15曲からなるベスト盤。アルバムタイトルはRe:とCoverを掛けた造語だが、大沢誉志幸の「そして僕は途方に暮れる」やMrs. GREEN APPLEの「僕のこと」、新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」 といった楽曲たちを、ピアノを基軸としたアレンジで「再構築」。コロナ禍で疲弊した私たちの心を「回復」してくれるような、美しくも力強い作品に仕上がっている。

 Kitriの2人がまだ生まれてもいなかった頃のヒット曲から、今年リリースされたヒット曲まで、どのような思いでカバーしたのだろうか。1曲ずつ解説してもらった。(黒田隆憲)

Mrs. GREEN APPLE「僕のこと」に受けた衝撃

ーー今回、カバーする曲はどのようにセレクトしていきましたか?

Mona:今作には、様々な世代の名曲たちをギュッと詰め込みたいと思いました。私たちKitriチームで、いつもカバー曲の候補リストを共有しているんです。私たちが知らない曲も、「この曲はどうですか?」みたいな感じでスタッフさんが教えてくださる時もあるし、私たち自身も「こんな曲やってみたい」という意見を出すこともあって。そうやって候補の中から厳選された15曲が並んでいます。

ーーでは、早速1曲ずつお聞かせください。大沢誉志幸「そして僕は途方に暮れる」は、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう1984年のヒットソングです。

Mona:この曲は、リアルタイム世代のスタッフさんから教えてもらいました。ちょうど、この曲をエンディングテーマに起用した同名映画が今年公開されたのもあって再評価されていましたけど、そういう意味でもこのタイミングでカバーするのがいいかなと。歌詞を読んで、これをKitriが歌ったらどんな世界観になるのか自分たちでも興味があったんです。すでに完成された名曲なので、それをピアノ中心のアレンジに落とし込む時に苦労しました。

ーー銀杏BOYZの「BABY BABY」は意外なセレクトでした。

Mona:この曲は、私が中学生か高校生の給食の時間に流れていたんです(笑)。これをチョイスする放送委員の生徒に感心したのを思い出して、ぜひカバーしたいと提案しました。私たちには絶対できないシンプルでかっこいいロック曲を、私たちの得意なピアノでバラードにしたらどうなるかなと。

Hina:Kitriバージョンは、コーラスがたくさん重なったアレンジにしています。私はどこのパートを歌うのか聴かされないまま、Monaから「じゃあ、この旋律を歌ってみて」と言われたとおりに歌うというやり方を初めてしました(笑)。全てのハモリが入った完成形が出来たタイミングで初めて聴かせてもらい、「こんなふうに仕上がったんだ!」と驚きましたね。その作業がすごく楽しかったです。

ーー「そして僕は途方に暮れる」もそうでしたが、コーラスのリハモナイズがKitriらしさにつながっていますよね。

Mona:そこが楽しくもあり、難しくもあるところです。原曲の持つ響き、メロディや歌詞の聴こえ方を尊重しつつ「こういう解釈もあるんじゃないかな?」みたいなアプローチを、リハモナイズや歌い方、声質などでできたらいいなといつも思っています。

ーーMrs. GREEN APPLEの「僕のこと」は、人生讃歌をテーマにした壮大で力強いロックバラードです。

Hina:この曲は個人的にすごく気に入っていて。どうしてもやりたいということを、Monaやスタッフさんたちに伝えました。

Mona:構成もすごく惹きつけられる曲ですね。普通ならAメロ、Bメロ、サビ、そこから2番へ進みそうなところで、また新たな展開が登場したり、サビも1番と2番ではまた違う旋律になっていたり。その自由さに衝撃を受けました。しかも、誰もが聴いて刺さる歌詞やメロディがついていて、「すごいなあ」と楽曲を味わいながらアレンジしていきました。

Hina:最初はこの曲、構成が長くて複雑なので難しそうに感じたのですが、途中で拍子を変えてみるなど私たちらしさをちゃんと出せたかなと思います。これは私の勝手なイメージですが、原曲は「青春、真っ只中!」という感じで、Kitriバージョンはその青春の日々を振り返るようなアレンジになったんじゃないかなと。

ーー菅田将暉さんの「虹」は、『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌に起用された2022年の楽曲です。

Mona:私たちは毎月、ファンクラブのサイトで「ミニ音楽会」みたいなライブ配信を1時間やっているんです。そこでいつも新しいカバーをやっているのですが、この「虹」を披露したときに「ぜひ音源化してほしい」というご要望をたくさんいただきました。歌詞も、私には絶対に思いつかない世界観というか、ストレートに愛を伝えるところが気に入っていますね。

Hina:この曲は私もボーカルで参加していて。会話のような、語りかけているような歌詞だなと思ったので、私も誰かに囁きかけるような、そんな気持ちでレコーディングしました。

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