SARMが語る、アーティストとしての目覚め 「Ai ga shitaino」に込めた祈りのようなメッセージ

「AI ga shitaino」リリックビデオと幼少期の“夢”のつながり

──お話を聞いていて、寺山修司さんが主宰していた劇団・天井桟敷とか、監督を務めた映画の世界観がお好きじゃないかなと思って。

SARM:へえ! ちょっと調べてもいいですか。……わ! 好きですね!

──特に、『田園に死す』とか『書を捨てよ、町へ出よう』がお好きなんじゃないかと思うんです。

SARM:観ます! 映画で言うと最近は『スター・ウォーズ』にハマっているんですよ。

──あ、Xでも「早く帰ってスターウォーズ観るのだ」と呟いていましたね。

SARM:もう毎日ずっと観てます。さっきメイク中にも観てました。

──それは観直しているんですか?

SARM:めっちゃ観直してます。これも自分の身に起きた不思議な体験と重なるところがあるというか、自分に似てるなと思って。変な話なんですけど、自分もジェダイだなって。もっと言うと、勝手にアナキン・スカイウォーカーだなと思ったんですよ。「AI ga shitaino」のジャケ写もそんな感じで。リリックビデオで船に乗っているんですけど「あ、ジェダイになれた」と思って(笑)。

──じゃあ、ジャケットもSARMさんがアイデアを出して?

SARM:これは、たまたまなんですよ。私が『スター・ウォーズ』にハマっていることをアートディレクターの人には話していなかったんですけど、「AIで生成したらこんなのができたよ」と送ってくれたんですね。それが宇宙船の中からSARMが宇宙を見ている、という写真で。最初はこれをジャケ写にする予定じゃなかったんですけど、あまりにも良すぎたんですよね。もうひとついいですか?

──もちろん!

SARM:これも後から気づいたんですけど、AIでリリックビデオも生成している時に、初めにアートディレクターの方に言っていたイメージがあったんですよ。「わかった! その感じで生成するね」と言って動画を作っていったら、当初のイメージと全然違う流れになって、終わり方も違ったんですよ。「AIで生成したら勝手にこんな感じになったよ。でもこれってSARMが前に言っていた夢の話と一緒じゃない?」と言われて。自分の見た夢と終わり方が全く一緒だったんですよ。

──その夢というのは?

SARM:幼少期に見ていた夢なんですけど──自分が人間なのかロボットなのか分からないんですけど、ずっと三角座りをさせられていたんです。首を横に振ったら殺されるから、何が起こっているのか分からなくて、目だけギョロギョロさせるしか方法がなかったんですよ。そうしたら立つように言われて、俯きながらロケットの中に詰め込まれるんです。そこには私と同じような生命体が、5、6人いて。そのまま飛び立つんですけど、機体がチープな素材だったので、ガタガタって大きく揺れるんです。「どうなるんだろう」と思いながら、ギュウギュウの中でうずくまっていて。周りの人も同じ感じなんですよ。機体がどこかへ進んでいくうちに、周りがブワーって燃え始めて。「あ、燃えてる……このまま死ぬんだ」と思っていたら、機体の中が氷点下ぐらいになって、ガタガタと身体が震え始めたんです。「あぁ、死ぬんだ。死にたくない、生きたい……!」と思ったまま気絶して。そうしたら小窓がパカって開いて、光が入ってきて目が覚めた。

──うんうん。

SARM:でも5、6人乗っていたはずなのに、自分以外が消えていたんですよ。それで機体から出てみたら、大草原と大空が広がっていてすごく感動したんです。うずくまってる時は草原とかもないし、つるつるした素材のゴツゴツした灰色の場所で、太陽も近くて横から光が入ってきてるみたいな、ドス赤い変な気持ち悪い雲の色だったんです。青空とか見たことなかったのでめっちゃ感動して。そこが地球という星だった、という感動的な夢だったんです。その話をアートディレクターの人に話していて。

──リリックビデオはどうだったんですか?

SARM:当初の予定になかったんですけど、最後に地球がバーンって出てきて、SARMがふわ〜って消えるんですね。「SARMの夢と一緒じゃん」と言っていたのは、私の夢では「死にたくない、生きたい」という人間の感情を持っていたからこそ、合格して地球に辿り着いたんです。だけど自分の今持っている感覚が、もしかしたら別の星に近い感覚だったとしたら……と考えたら、「消えた5、6人の人達は消滅したんじゃなくて、別の場所に行ったんだ」と思えたんです。それがリリックビデオの中で、別の場所に行った自分と重なったんですよね。

SARM- AI ga shitaino (Lyric Video)

──視点が変わっていたと。

SARM:はい、消えたと思ったのは別の星に行った人達と同じ状況だったっていう。それを映像で観せられた時に、怖くなっちゃったんです。

──これ、早くリリックビデオが観たくなりますよ。

SARM::ぜひ観てください!

──ちなみに今後の予定は?

SARM:11月13、14日に恵比寿BLUE NOTE PLACEでライブをやります。およそ1400年続いている雅楽という音楽があるんですけど、それを伝承している和琴奏者の高谷秀司さんという方を、琴とギターでお迎えして、いつもサポートしてくれている皆さんと演奏します。自分の先祖も伝統芸能に取り組んでいる人だったので、日本の精神性に重きをおいたステージにしたいと思っています。

──SARMさんといえば、ブルースというか洋のイメージを持っている方も多いでしょうから。ルーツにある和を取り入れたライブが観られるのは楽しみですね。

SARM:しかも高谷さんは和の人なんですけど、ブルースのギターリストでもあるんです。そこも自分と似てるんですよね。だから今回ご一緒させていただけることが嬉しいですし、楽しみです。

 そしてもうひとつ、音楽以外の活動の話で言うと先日、『One Young World Summit』(※世界190カ国以上から18歳から30歳を中心とした2000人を超える人々が参加する地球規模の国際プラットフォーム)に行かせてもらったんですけど、今までは自分が経験してきたことは誰にも伝えず自分の中だけで終わっていたんです。だけどアイルランドに住んでいる若者達が、戦争で体験したことや自分の悲劇を伝えて、次の世代の子ども達がちゃんと生きていけるための支援活動をしている、ということを知って、自分はできることから目を背けていたなって。以前から「小中学校で道徳の授業をしてくれないか」という話をもらっていたんですけど、自分にできることが分からなかったんですよ。でも『OYW』に行って「自分の経験を活かして、誰かを助けられるようなことをしなきゃ」と思って、帰宅後すぐに「道徳の授業に参加させてほしい」とお願いしました。そういう社会貢献の活動もしていきたいですね。自分が学んできたことを交えながら、音楽と自分を愛せるように、子ども達に伝えていきたい。まずは日本からやってみて、私が持っているモノは他の国でも大事になっていくかもしれないから、直接足を運んでいろいろ伝えていけたらなと思っています。

■リリース情報
SARM「AI ga shitaino」
11月01日(水)リリース
Listen:https://sarm.lnk.to/AI_ga_shitaino
【Lyric Video】
Art Direction / Director: Masaru Ishiura (TGB design.) 
【MUSIC】
Music:JiN/SARM
Lyrics:SARM 
Arrangement:JiN
Mix&Mastered by Ryosuke Kataoka
Produced by JiN

■ライブ情報
日程:2023年11月13日(月)&11月14日(火)
会場:BLUE NOTE PLACE
〒150-0013 東京都渋谷区恵比寿4丁20-4
時間:11月13日(月)
19:00~19:30 1st Stage
20:15~20:45 2nd Stage
11月14日(火)
19:00~19:30 1st Stage
20:15~20:45 2nd Stage
予約:https://www.bluenoteplace.jp/live/sarm-231113/

■関連リンク
Official site:https://www.sarm.jp
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